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2019年川崎フロンターレ戦力まとめ

目次
バランスの取れた全体
補強最優先の右SB
ひそかに求めた高さ
完全移籍の即戦力たち
競争が激化したポジション
変わらない激戦区と孤高の中村

はじめに
 恒例の新年挨拶回りを終え、宮崎県綾町キャンプをスタートした川崎フロンターレ。気づいたらゼロックススーパーカップまで一ヶ月を切り、開幕戦がホーム多摩川クラシコに決まるなど、2019シーズンが始まろうとしている。
 3連覇を目指してオフシーズンの動きは活発だったが、最後の最後で板倉の欧州移籍というビックニュースが入ってきたことで他を忘れてしまった。新体制発表会が来週に迫っていることもあり、ここらで今季の戦力を整理してみたい(昨季途中加入のカイオは便宜上新加入としてまとめている)。

バランスの取れた全体
 年齢とポジションという切り口から整理したのが以下の図表(今季の合意選手はこちら)。2018年の黒枠はチームを離れた選手(退団orレンタル)、2019年のは新加入選手を表している。わかっていたことだが中村が突出している。(図表はhttps://www.youtube.com/watch?v=n6ikqAgO6YUを参考にした)。

 ポジションごとの人数はほとんど変わらず、綺麗に2チーム作れる陣容になった。年齢もここにレンタル4選手(三好、タビナス、ポープ、赤崎)を考えれば、高齢化が進んでいるとは言えない。それでは細かく見ていく。

補強最優先の右SB
 終わってみれば2位と12点差をつけての圧勝だったことから、主力の慰留が最大の補強といえる。2連覇の主力を見るとネットが守田に入れ替わった以外は変わっていないことからも優先すべきは現戦力の維持。

 そうなるとまず考えるべきはエウシーニョの移籍でと空いた右SB。類い稀な攻撃センスで「そこにエウソン」と呼ばれたり、高いテクニックでビルドアップの逃げ場になっていた(奈良を助けた)りと、唯一無二の存在だった。そのため代わりを探すというのは難しく、川崎の右SBの役割やイメージそのものを刷新していく必要がある。
 右SB事情はエウシーニョに加え、武岡田坂の退団も大きく影響。昨年のゼロックスでは怪我のエウシーニョに代わって起用されたのは田坂で(今思えば守田との後半途中交代がターニングポイントだった)、武岡も出場5試合は右SBでの起用だった。すなわち右SBのバックアッパーも同時に退団し、候補が0人という珍しい状況が生まれた。
 こうして最重要補強ポイントとなった右SBにはマギーニョと馬渡の2人を獲得した。それぞれの能力に関してはプレーを見てからにするが、どちらも完全移籍であることからはクラブの期待値の高さが見える。さらに26、27歳と若手ではない選手であり、即戦力として考えているだろう。
 スタメンの中で唯一断絶した右SB。昨季からの継続性がなくなってしまったために、フィットまでに時間がかかることが予想される。新加入の2人にとっては絶好のチャンスだが、場合によっては登里や守田のスクランブル起用もありえる。

ひそかに求めた高さ
 少し脱線するが、新戦力を見てなんとなく「身長が高い」と感じた。それもそのはず、GK陣を除けば舞行蹴の185cm、スタメンだと谷口の183cmが最高身長で、新加入のフィールドプレイヤー7人のうち4人が186cm以上の高さを持っているのだ。

 もちろん身長だけが強みではなく、身長を基準に選んだとは言うつもりはない。しかしACLでの敗因の一つに空中戦を考え、高さの面を少なからず意識したスカウティングに見える。実際ACLに限らず、地上戦で崩せずに困った時の代替案(セットプレーなど)の弱さは露呈していた。彼らの高さを活かすためにはキッカーも重要で、中村だけでなく下田の出番も増えそう。

完全移籍の即戦力たち
 即戦力選手が多い印象を受けるが、その理由が助っ人外国人の総入れ替えだ。昨季開幕時の3人がチームを去り、新たに4人が加入、そのうち3人が完全移籍での獲得になっている。完全移籍となると移籍金が発生しリスクが大きい。たとえばネット、エドゥアルド、エウシーニョはレンタルからの完全移籍だった。それを押してまで踏み切ったということは、相当な期待値の現れといえよう。
 日本人に目を向けても山村(29)と馬渡(27)は中堅の域で、手塩にかけて育てるなんてわけもなく、さっさと活躍してくれという選手。藤嶋はポープのレンタル期間の穴埋めの形か。未来への投資という意味では高卒ルーキーの原田のみ。すでに同期の宮代はいたし、2020年に三苫と旗手の加入が決まっていることからも若手はすでに十分との判断だろう。
 外国人の入れ替えはあったものの、そのほかは放出せずに新たに主力級を迎え入れたためスタメン争いは激化するだろう。三好でさえレンタルに出されてしまう環境で、若手が試合に絡むのは相当難しい。去年の守田は実力に加えてタイミングが良かった。

競争が激化したポジション

 スタメンは右SBにどちらかがフィットすれば(最悪登里)、戦力ダウンにはならないだろう。その他のポジションは出場機会のなかった選手が退団し、代わりに即戦力選手が来たので競争が予想される。今年もリーグ戦だけでなく、ACLやカップ戦を見据えて2チーム分の戦力を整えているが、それぞれ駆け足で見ていく。
 まずGKだが、レンタルで不在のポープの穴をレンタルの藤嶋で補った。藤嶋は昨季途中から正守護神の座を吉満に奪われている影響なのかはわからないが、J1のチームを体験する良い機会になる。大津高校同期ということで、車屋の新たな一面を見せてくれるときっとすぐファンが増えるぞ。そのほかはG大きな変化はなく、新井VSソンリョンのスタメン争いと、安藤がそこに食い込めるかどうか。
 CBはエドゥアルドに代わって加入したジェジエウは未知数だが、谷口と奈良が同様に活躍してくれれば一番心配いらない。ただ谷口がいつまで鉄人でいられるかどうかと、試合終盤の山村CB起用があるのか、上手くハマるのかが気になる。
 その山村がどこで起用されるかはわからないが、ここではボランチに位置付けた。ボランチは人数は十分で、2つの枠に対して候補は6人。守田と大島が頭一個抜けており、新戦力のカイオと山村がどこまで食い込めるか。昨季終わりにチャンスを掴んだ田中にとっては厳しい一年になりそう。下田はプレースキッカーとして存在をアピールできるか。おそらくリーグ戦の出場は難しく、逆にACLは出番ありそうで、短期決戦のセットプレー(高さを押し出す場面が多かったり)で結果を出せると食い込みそう。カイオはまだ見たことない。身長に目がいっちゃうけど、川崎のボランチは身長だけじゃやっていけない。とはいえネットが大きくて助かったシーンも何度かあったので武器であることは間違いない。
 最大の補強であるレアンドロ・ダミアンによって競争が1番熾烈になったのがFW陣。これによってエース小林と昨季27試合出場の知念、そしてLD9の3人のFWを抱えることに。3トップでたくさんFWいた時代を思い出す。しかし昨季同様なら1トップであるため、熾烈なポジション争いが繰り広げられることになる。キャプテンの小林も決して安泰ではなく、サイドハーフに主戦場を移す可能性も高い。もちろんLD9も鬼木監督の求める守備水準を満たせなければ出れない。

変わらない激戦区と孤高の中村
 一方で補強がなかったポジションもあり、左SBは車屋と登里で安泰。左利きのSBは希少で、ここ最近の車屋人気は相当なもの。残ってくれてありがとう。しかしスタメンの座は確約されておらず、むしろ登里の方がポジショニングとか攻撃参加とか良いのではと思うので、ここのスタメン争いは見応えたっぷり。タビナスはレンタルで正解かな。
 トップ下とサイドハーフには高卒の原田が加わっただけ。一昨年の阿部と家長、去年の齋藤と続けて補強してたので今年は静か。ここは小林(後述)や登里も候補に入ってくるため、余剰戦力をいかにコントロールするかがポイント。 右は2018MVPの家長が不動、逆に左は今年も激戦で阿部と齋藤と長谷川が争う。推したいのは長谷川だが、百戦錬磨の阿部ちゃんは手ごわすぎる。右SBに改造されちゃうのも手だろう。
 トップ下の中村憲剛は相変わらず代わりになる選手はいない。オンリーワンの存在なので、もちろん同じ選手を求める意味はもないが、とはいえ攻撃のタクトを振る選手は必要で、その役割を担えるのは現状彼と家長くらい。いつまでも中村憲剛史上最高を更新してくれたらいいが、いずれくる限界に備えないわけにはいかない。家長が長くいてくれるなら問題ないが、そこも読めない。場合によってはツートップも鬼木監督の頭にはあるだろう。
 蛇足だが、山村の起用法はどうなるのかも注目。トップ下からのリード時ディフェンス起用は対戦相手としては絶望的だったのでぜひともやりたい。特にACLのような短期決戦だと逃げ切らなきゃいけない場面はあるはずで、持っておきたい切り札。とはいえ川崎のサッカーで複数のポジションをやるのは頭の切り替えが大変そう。中村も、ここでやりたいという自分の感覚と違うポジションチェンジがあると少し時間がかかる、と言ってた。当面は1試合ごとに変える程度にして慣れさせるのが良いか。でも期待大。

おわりに
 まとめてみて「ここ2、3年で取れるタイトルは全て獲る」というクラブの意思を感じた。短期的な新陳代謝はあまり考えていないように見える。スタメンの放出はなく、椅子を空けての競争はなさそう。昨年のネットの放出は守田のためだったと考えているが、逆に見ると守田がいたから放出できたわけで、若手にスタメンを脅かすような選手が現れてないことを意味している。
 ここで2、3年としたのは、中村憲剛の40歳を一つの区切りと考えたからだ。つまり中村憲剛の全盛期にクラブも乗っかろうということ。ひとりの選手がクラブの方針を定めてしまうくらいに絶大な存在になっている。長期的には向き合わなければならない問題だが、中村が稼動する限りはあやかってタイトルを回収する短期的な戦略はアリだと思う。むしろ長期的にも合理的な選択だ。川崎が「無冠の帝王だったのは無冠だったから」と考えると、まだ無冠のカップ戦もこの勢いで是が非でも獲っておきたい。
 兜の緒を締め直して、タイトルに飢えていく一年に。


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