公募の「広義のSF」の意図って?

ばんわ。
SF作家の人間六度です。

質問箱に以下のような質問が来まして、我ながら納得度の高い答えが出せたと思うのでnoteに転記しました。


まず、応募要項に書かれる際の「広義の」とは、「SF賞ではあるけれど間口は広げときたいな」という出版社側の意識の表れかと思います。
(てかそもそも、広義じゃないガチのSFだけを求めている賞ってこのご時世存在しますかね。僕はよく知らないんですけど)

とにかく上記のような出版社側の意図があり、
それをもっと詳しく書くと、以下のような序列で賞を与えるよ、ということだと僕は思っています。

1抜群に面白いSF
2一見するとSFっぽくはないが抜群に面白い小説
3それなりのSF
4SFに入らなくはないそれなりの小説

1と2は面白さの強度が圧倒的であれば逆転し得ます。
やっぱり面白いのは2と3の関係性で、
出版社として賞の意義とか同一性を守りつつも、売れる本を出したいので、面白い小説に賞をあげたいんですよね。
そういう意味でSFは、恋愛小説とかホラー小説よりだいぶ「ゴリ押しで適応できる」ジャンルだと(そうなってしまった、と言うべきかもしれない)思うので、上のような逆転が発生することがあります。

僕は、どんな物事でも突き詰めて深く考えればSFになり得ると思っているので、どんな作品を描いても完全にカテゴリーエラーになることはないと考えます。ただし、同じ程度の面白さであればSFっぽい世界観の方が優遇されます。

例外としてハヤカワSFコンテストは、エンタメとしての面白さよりSFとしての面白さを重視する気が狂った賞です。
でもこれも出版社側がそうしたいというより、選考委員がSF作家なので、そのSF作家を唸らせることができれば大賞になりやすいという力学が働くからこのようになっているのだと僕は考えています。そしてSF作家はSF作家としての矜持がありますので、そこに訴えかけられるものはやはりSFということになるのだと思います。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?