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【映画感想文】彼女がその名を知らない鳥たち ※ネタバレ注意!

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※この記事はネタバレを含みます。
※「Filmarks」でも、空き缶の名前でレビューを書いています。似通ったレビューが見つかる場合がございますが、同一人物ですので悪しからず。

記録

鑑賞日:2023年5月4日
鑑賞方法:Hulu
評価:3.7/5.0


見事なまでに、全員クズ

めちゃくちゃ久しぶりにnote書きます。
本作はずっと前から気になっていたのですが、やっと観た映画。そんなんばっかですが。(笑)
先に評価の「3.7」というのは、ほんとに感覚的なもので、厳密になにがどうとかはないです。大絶賛ってほどではないけど、でも面白かった、みたいな。

さてさて、「共感度0%、不快度100%」とのコピーで、クズばっかり出てくる本作ですが……。
なんかほんと、清々しいほどに全員クズで、見進めるほどに不快度がわたしの中では逆に下がっていったくらいで。
主人公・十和子は、同居人の陣治を酷く罵倒したり軽蔑したりしながらも、ちゃっかり陣治の稼ぎで生活しているわけだし、既婚者との恋に溺れたかと思えば、元恋人が忘れられずにいるし……。
この既婚者と元恋人も漏れなくとんでもないクズのダメ男だし……。
陣治も陣治で、なんでこんなワガママな十和子を溺愛しちゃってんの!?と思うし、それはさておき、そんな十和子のためならなんだってできちゃうのも、ほんと狂ってる。

あと、これをめちゃくちゃ語りたかったんですけど。十和子の姉も、わたしにはおかしく見えた。
たしかにこんな奔放な十和子を甲斐甲斐しく面倒見てるというのは、一見善人だけども。どう考えても束縛激しいし、あとね、もう少し小ぎれいにしたら?くらいは言っちゃうと思うの……。それは別に蔑むってわけじゃなくて、自分の妹がほんとに可愛いんだったら、その妹がいっしょにいる男には最低限の清潔感は持ち合わせていてほしいと感じると思うんだよなあ、っていう。
あと、陣治の前で「昔の男に会ってたんじゃないか」って言っちゃうとことか。
でも多分、そういうちょっとしたズレた感覚?みたいなものの気持ち悪さも、狙って作られたんだろうな、と思わずにはいられない。

真実が明らかになった瞬間、「マジか」って声が出た

どう考えてもここが一番の見所だと思うのですが、十和子が過去に犯した過ちが明らかになった瞬間、「マジか」って思わず声が出た。
序盤から陣治の異質な感じは恐らく誰もが感じ取っていただろうし、ストーリーが進むにつれてその狂気が色濃くなっていったけれど。
だから十和子の元恋人の黒崎を殺害したのは、陣治に違いないってかなり早い段階で推理していた。
それでも、なにか別の「気持ち悪さ」が引っかかっていて。
それも巧妙に散りばめられた伏線だったわけですが、あそこまで陣治が「自分がやったこと」って言い張ってたら、最後まで気付けないって……。
見事に騙された!!って思ったし、その点はほんとに衝撃的で面白かった……。

共感しちゃいけないはずなんだけど……

最初にも「共感度0%、不快度100%」のコピーに少し触れましたが、最後は「共感度」の方について語らせていただこうかと。
まず、主人公の十和子について。断じて不倫はしたことないのですが、でもクズ男に引っかかっちゃう気持ちがわかる女性、わたしを始めとして少なくはないんじゃないかな~って思っちゃいました。(笑)
騙されてるってどこかで気付いていても、なんなら決定的な何か(本作で言えば、プレゼントされた腕時計の値段とかね…)を知ってしまっても、それでもまだ信じたい!って思っちゃう気持ちは、わからなくもないから嫌になっちゃいますね。(笑)

一方で、陣治の溺愛っぷり。これもまた、実行にまでは移さなくても、ちょっとしたキッカケでプツッといっちゃったら、行き過ぎた束縛に走ったり、あるいは相手の男に嫌がらせしちゃったりする人も、いなくはないのでは……?と、「共感」とは若干違うんだけど、「まあ、実際にあってもおかしくないな」という怖さは感じた。

というか、十和子や陣治に限らず、この物語の登場人物たちは、現実世界に存在してもおかしくないと感じてしまう。
ただ、一か所にこの狂った人間たちが集まる、ということがないから、こんな悲劇を避けられているだけで、どこかで狂気と狂気が重なってしまえば、起きてもおかしくない悲劇なんじゃないか、と。

そういう気持ち悪さを感じるのも込みで、この作品の魅力なんだと思ってしまいました。


空き缶

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