表彰台のてっぺん

 夢に見た表彰台の一番上。ここから見える景色は、やはり格別だ。今までの努力が報われた。頭の中を、これまでの様々なことが走馬燈のように駆け巡る。辛い練習を乗り越え、長く苦しいスランプとも闘った。時にコーチとの関係すら危ういものとなり、常に古傷が再発する恐怖とも向き合った。自分自身をも信じられなくなり、ひたすら辞めたいとだけ思っていた時期もあった。その全てを乗り越え、自分に打ち勝ち、ようやく手に入れた表彰台の頂点だ。不思議と涙は出てこない。溢れてくるのは、笑みばかりだ。やり遂げたという達成感に浸り、頂点を極めた喜びに浸り、今だけは自分を大いに褒めてあげたい心境だ。次はいよいよシャンパンファイト。シャンパン片手に、そのタイミングを今か今かと待っていた。

「はいっ、そこまで。」

 時間が来てしまった。競技者たるもの、精神修行も疎かにしてはならないという理由から、我が部が取り入れたメンタルトレーニングだ。表彰台の真ん中に立った時を、リアルにイメージして体感する。それを一つのモチベーションとして、新たな気持ちで競技に向き合うことを目的としたもので、週に一度行われている。

「一ヶ月後の全日本高校将棋選手権に向けて、ラストスパートだ。みんなで意識を高めていこう。」

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