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[18]スコールを浴びに出かける

朝を迎え
  蝉の歓喜 
  湧き上がる
     命のスコール浴びに出かける


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朝が苦手だった。

顔を洗わねばならない。
歯を磨かねばならない。
キチンと身なりを整えねばならない。

遅れてはいけない。
忘れ物をしてはいけない。
期限を守らなければいけない。
目標を達成しなければいけない。
ミスをしてはいけない。
迷惑をかけてはいけない。

大人らしく、社会人らしく、
振る舞わなければいけない。


東の空が明るくなる。
ひんやりと清浄な空気の天蓋は開かれ、
寝静まっていた世界が、
少しずつあたためられ動きだす。

ちらほらと鳥の鳴き声が響きはじめる。

日射しが強くなるにつれて、
徐々に蝉の鳴き声が湧き上がりあたりを包む。
まるで見えない霧のように、
どんどん濃くなって
濃密な生命力が世界に充満し、
やがて飽和してスコールのように降りしきる。

彼らが声なのか、
声が彼らなのか、
わからなくなるような存在感だ。

眩しい夏の朝を迎えることがきた喜びを、
ひたすらに歌い上げる彼らの声。
以前はそれを、息苦しいと感じていた。
今はもう、息苦しいとは思わない。

私は運動靴を履きドアを開ける。
外は蝉たちの合唱がどしゃ降りだ。
彼らの命の歓喜の声を全身に浴び、
駅に向かう人々と反対の方向に歩き出す。

私は朝が好きになっていた。

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