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[ルポ③] スト、デモ、運動潰し

本日8月31日、西武池袋本店で百貨店では約60年ぶりとなる、ストライキが行われた。

ストライキというのは、憲法で守られた労働者の権力である。労働者1人の力は弱いが、団結する事で憲法で強く守られるようになる。労働者が団結し組合となったものが「労働組合」である。

今回のストライキについて、よく知らない人は
「意味ない」「気に入らないなら辞めればいいのに」
「客に迷惑かけるな」「問題行動だ」
と言っているが、それは憲法を知らないだけだ。

日本以外の国では、当然のようにストもデモも行われている。それは国民が、不当な圧力に対する抵抗の意思を持ち、抗う権利があることを知っているから、行動に移しているのだ。

労働三権(労働基本権)とは
日本国憲法第28条では、労働者の権利として、「団結権」「団体交渉権」「団体行動権」といった3つの権利を認めています。これらをまとめて、労働三権と呼んでいます。

連合

学生運動の時代から、そうした会社や社会に対する反対行動について冷ややかな視線を浴びせることに慣れすぎた日本人は、自らが労基法違反や賃金不払い、不当解雇というブラック企業のやりたい放題の被害に遭ってもなお、抵抗せず、泣き寝入りすることに慣れすぎた。


大手ではストは60年ぶりと報道されているが、大手ではない企業でも、実は最近、ストが行われていた。

労組関係者の間では話題になっていたが、それ以外の人は知らないかもしれない。

ジャパンビバレッジ東京のストライキ

本日5月3日、JR東京駅で自動販売機の補充業務を担当しているサントリーグループの自動販売機オペレーション大手・ジャパンビバレッジ東京の従業員が、午前9時すぎをもって同社にストライキを通告し、業務を停止した。ストライキは一日中続くものとみられる。

文春オンライン

ストもデモも、普通はあまり大きく報道しないため、
日本では無いように思われている。

今回のそごう西武のストライキは、大々的に放送されているだけでも、大変珍しいケースだと思う。


デモも同じように、日本には無いと思われているが、実は巨大なデモが平成の時代にあった。

最大で20万人参加と報じられた脱原発デモがあり、私もこれに参加していた。
この時も警察の発表では1万人と言っていたが、10-20万人と報道するメディアもあり、数の開きが大きい。
国会議事堂駅に辿り着くのも、電車に乗るのも大変なくらい混んでいたので、1万人どころではなかっただろう。

だが、このデモもテレビ朝日とTBS以外では、あまり報道されなかったので、知らない人も多かった。

この後も、テレビ・新聞は、銀座や新宿、原宿、渋谷あたりで行われる100名くらいの小さいデモばかり取り上げているため、日本はデモをやらない国だ、ごくごく一部の特別な事情のある人しかしないものだと、ほとんどの国民は思っているに違いない。

※海外では、数千人から数万人規模のデモは珍しくない。

私は一時期「デモの女」と名乗るくらい、いろいろなデモに参加していたが、戦争反対スタンディングデモ(プラカードを持って立ってアピールするデモ)をしていると、通りがかる外国人達は「オー!イェーイ!」と、エールを送ってくれるが、日本人のほとんどは皆、見ないようにして通り過ぎた。
300人に1人くらいは応援してくれたが、あとはガン無視したり、馬鹿にしたりという風だった。

街中を練り歩くデモ(こうしたものは、事前に警察に届け出がしてある)も、やはり外国人からの熱いエールを受けたが、日本人のほとんどは「バカじゃないの」「意味ないし」「迷惑だ!」と批判したり、無視したりばかりだった。

まあ、そんな国民性が多数を占めるのだから、増税増税、一部の企業や、海外への税金ばら撒き、汚職、天下り、横領といった悪政が蔓延り、年金の支給開始年齢が上がっていっても、歯止めがかけられず、世の中がどんどん悪くなるのを、ひたすら「しょうがない、しょうがない」と我慢して、ストレスを溜めながら耐えるということしか出来ない。

そうしたストレスは、やがて自殺や犯罪の増加に繋がり、今後、日本は目に見えて治安が悪くなっていくだろう。


しかし人々の無関心以外にも問題はあって、日本国内では、労働運動や市民運動といった社会的な運動は、なかなか上手くいかない。

なぜかというと

①コミュニケーション障害のある人が、内部から組織と運動を破壊する

社会運動の団体には、めんどくさい人たちが混ざっていることが多い。
「闘争!闘争!」と、しきりに怒っている輩もいるし、
人格障害的に大袈裟に悲劇のヒロインになって、泣き叫んだり怒り散らす人や、"社会と時代の被害者"意識の強すぎる人などがいる。

私が労組の応援で駆けつけた先で、相手の組合員に突然怒りを向けられ怒鳴られたことがあった。挨拶しただけなのに。近くにいた幹部がフォローしてくれたので助かったが、怖かった。

「資本主義反対、今こそ共産主義へ」と極端な偏った思想を長々と語られて、洗脳されそうになったこともあった。

「面倒だから関わり合いにならないほうがいい」と判断し、私は社会運動から距離を置くことにした。

生きづらいのは本人の性格によるところが大きそうだが、そこは無視して「社会が悪い、国のせいだ」というタイプの集まりは、ルサンチマン傾向の強い人以外は、同調は無理だろう。

ルサンチマンとは

〘名〙 (ressentiment) 怨恨、遺恨、復讐感情。 特に、ニーチェの用語で、弱者の強者に対する憎悪をみたそうとする復讐心が、内攻的に鬱積した心理をいう。

コトバンクより


②団体がカルト化し、一般人を寄せ付けなくなる

団体の結束が固くなり、メンバーが固定化してくると
思考がカルト化してきて、反対意見を聞かなくなったり趣味嗜好まで、自分たちと全く同じになれと強いるようになる。彼らは「多様性を!尊重を!」などと叫ぶのだが、自分達と意見の異なる者には容赦ないのだ。

例えば、私はガンダムが好きなのだが「戦争映画ですよ、あれは!」と活動家に叱られたり、横須賀にカレーを食べに行くといえば「原子力空母を見に行くのですか?」と決めつけられたり、「椎名林檎のファンなんてやめろ、あんな歌聴くな」とか「ユニクロは悪の企業だから、着てはいけない」などと散々言われたので、そんな面倒な連中とは金輪際、関わりたくなくなった。

③スパイや工作員が投入されるケース

①②より珍しいが、運動潰しの画策がプロの手で行われることがあり、運動の大事な時期に、内輪揉めが起きて崩壊してしまうことがある。


①〜③により、やがて内ゲバが発生。
組織が解体し、運動が消滅するという流れになる。

内ゲバ(うちゲバ)とは、内部ゲバルトの略。 ゲバルト(Gewalt)はドイツ語で「威力、暴力」の意味で、同一陣営または同一党派内での暴力を使用した抗争のこと。

wikipedia


なお、団結の強い、統率の取れた高度な組織もあり、そういう団体の場合は簡単には内部分裂はせずに、長く続いている。大学関連の団体、知識人の多い組織は、その傾向が強く、官僚や政治家と結びついて、地道に活動を続けている(そういう組織の人が一時期、私の近くにいたので、よく知っている)。

もう一つ、触れておかなくてはいけないのは、会社組合と純粋な労働組合の違いについて。
会社内で組織運営されている労働組合(会社組合)は、誰でも入れる社外の合同労働組合(ユニオン)とは性質が異なる。

純粋な労働運動側の合同労組は、先に挙げたような問題を抱えやすく、会社組合は、裏で経営サイドに操られる、形だけの「御用組合」になりやすいという負の側面がある。上場企業の中には、会社の健全性アピールのためだけに、全く中身のない、名前だけの労働組合を設置しているところすらある。

日本では、⚪︎⚪︎労連という労働組合連合自体が、ほぼほぼ御用であるらしく、合同労組側からは批判の目が向けられている。

経団連の言いなりだったり、裏で経営サイドに従属していたのでは、労働組合としての体をなさない、形骸化したものになってしまう。


このように日本の国民を取り巻く社会運動は、たくさんの問題を抱えているが、諸外国との違いは、そもそも教育の違いなのかもしれない。

リベラルな運動を、一般市民とは何か違う「プロ市民による」特殊なものとかではなく、ナチュラルに、ソフトに、軽やかに、日本で展開出来ないものだろうか?

その点、LGBTQの社会運動は、理想的な形で行われていると感じる。私が勤めてきた外資系、グローバル企業では、勤務時間中に、LGBTQへの理解を深めるワークショップを積極的に開催していた。


私は今はもう、社会運動は上記に挙げてきたような理由でやらなくなってしまったので、ベテラン活動家のようなことは書けないし、noteや YouTubeや、SNSで社会運動について述べていると、それだけでアカウントを潰しに来るネトウヨやネット工作員が湧いてくるのを知っているので、これ以上は書かない。

(ネット工作といえば経産省がネット監視目的で「アサツーDK」という会社と約七千万円で契約し「Twitterで核となる人物」に不当な弾圧を加えていると囁かれていた時期があった)

実は私も、2012年頃に渋谷で最低時給で「ネット監視と書き込み」をやるバイトの求人を見つけたので、潜入しようと思っていた。
結局、しなかったけど。

一見のんきで平和な日本にも、実はこのような黒い画策が蠢いているのだ。

私はこれ以上は語らないが、最後に、私の考えと共鳴する本をお勧めする。

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不運な人を助けるための活動をしています。フィールドワークで現地を訪ね、取材して記事にします。クオリティの高い記事を提供出来るように心がけています。