見出し画像

甘いりんごサイダーの味

やっと、夏休みが来た。
今期はうんと長かった気がする。
かつて無い状況のせいで、何もなかったのに、
なんだかたくさんのことがあったような気分で
昨日はテストが終わった解放感で、
帰るのも面倒になってベンチから立てなかった。

だけど、何もない夏休みが始まった。

今ある予定は、バイト、のみ。
最近また増え続ける感染者の状況を見て、
直近の予定は全部無くなった。
バイト先と家の往復のみの生活になりそうで、
確実に、人生で1番、期待値の低い夏休みだ。

画像1

一年前の今日、私は台湾にいた。

到着した途端マグニチュード5の地震に襲われ、
台風が接近している中、今思えば、
やり残したことだらけだけど、
台湾旅行はとてもよかった。

私にとっては初海外で、見るもの聞くものに
異文化を感じるたび、新鮮で、わくわくした。

すこし背伸びをして、中国語や英語で
話しかけると、すこし歪な日本語が返ってきて、
ちょっぴり恥ずかしい思いをしたり、
いつもどこか急いでいるように見える彼らの、
いいかげんで、勢いまかせにみえるところに
愛おしさや親しみさえも感じたりした。

私たちは女2人旅だったにも関わらず、
経費削減のため、何の躊躇もなく、
男女相部屋のゲストハウスに泊まった。
私達の部屋には、ヨーロッパ系の男性1人と
アジア系の男性2人がいて、彼らと2泊を共にした。

画像2

期待していたゲストハウスでの
異国の人との出会いも特になく、帰国前夜。
ロビーで荷物をまとめていると、すこし
怖い顔をした従業員がジッとこちらを見ていた。

彼はしばらくするとこちらにゆっくり近づき、
「日本人?」と聞いてきた。日本語で。
「はい。」というと、柔らかい顔で、
「日本のどこ?明日かえる?」と。

彼は私たちに、日本が好きで文化に興味がある、
台湾人はみんな日本が好きなこと、台湾の魅力、
英語の習得方法まで、いろんな話をしてくれた。
彼は日本のことを、たくさん知っていた。

冷蔵庫からペットボトルを取り出して、
「これは僕が小さい頃からずっと好きな飲み物、りんごサイダーだよ。」
と、それを分けてくれた。

私はすごく楽しくて、これが最終日の夜なことを
すこし悔やんだ。

彼にまた会えるだろうか。
きっと彼は私のことなど覚えていないけれど、
また台湾に行ったときは、
あのゲストハウスに泊まるだろう。

来年の夏休みは、羽を伸ばせれるかな。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?