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そして洗脳

 966文字

 透明なグラスに入った透明の水ヘ黒い絵の具が、たった一滴、ぴちょんと落ちて広がっていく、数分後透明なグラスの水はあとかたもなくなる。

 23分間の奇跡、1983年 11月20日、第7刷発行、この本が出版された時、洗脳が世の中を駆け回る事を誰が予想しただろうか。

 1995年3月20日サリン事件が起きる。
 そして2022年7月8日安倍元首相銃撃、旧統一教会が報道されている。
 
 児童書の形式の文章はとても読みやすく、30分程で読み終わる。
 低学年の子供達は、担任の先生が何も話さず、手を握りしめている事を不思議がる。
 子供達も緊張して怖い思いをしながら無言で何かを待っている。
 何が来るのだろう ? 私もドキドキしてしまった。
 そしてドアを開けて入って来た新しい担任の先生は、美しい良い香りのする若い先生だった。
 たった23分間の朝の授業は、自国の国旗を切り刻みポケットの中に。
 先生の歌う知らない国の歌にうっとりと、意味を知らされとても良い先生なんだわ、と子供達は目を輝かせる。
 子供達は帰宅
「忠誠を誓うと10セント貰えるのよ、だから忠誠したら10セント頂戴」
 と親におねだりをする。

 23分が終わり綺麗な敵国の先生は胸を熱くする。
 
 この土地の、全ての子供達、全ての男や女達が、同じ信念を持って、同じような手順のもとに、教育されて行くだろう事を思い胸を熱くする。
 その手順はグループ、年齢によっても、要求の度合いによっても違うけれど。

 最後の文面をそのまま書き移した、洗脳されて行く子供達、洗脳されて行く破れた国の人々、笑顔が見え隠れする。
 読み終わった、本を手から離せなかった、暫く放心していた事を思い出す。
 この本は幾度の引っ越しでも見失わずに、必ず目の届く所にあった。
 意識した訳ではなかった、数十年の時を経て表紙は茶色になりカラーでの顔出し等出来なくなってしまっている。
 色んな者に洗脳されて行く心の恐ろしさを、改めて考えさせられた。
 この本は大人の本だと思う。
 すべての人類は、なにかしらに洗脳されて生きている、濁った水を透明にするには沢山の時間と助けが必要となってしまう。
 全ての生ある者・物は優しさを求めて彷徨い、いとも簡単に邪悪な優しさの網に、洗脳という網に絡め取られてしまう。
 優しさを武器にしたいものです。
 
 
 
 

 

 

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