踊らされて、獣医。@獣医さん1年生①

入社初日の朝はなんだか目覚めがいい。いや目覚めが良いというか、昨夜からソワソワして眠れなかった。つい1ヶ月ちょっと前までは国家試験の勉強で毎日大学に通っていたわけだが、今日からは毎日この道を通って、職場に通うことになる。
とりあえず入社試験はクリアして、入社式を迎えたわけだが、改めて病院の大きさに圧倒される。動物病院なんてものは大きくても、せいぜい2階建くらいで都市部だと駐車場も5台くらいだろう。
だが、病院は6階建。駐車場は20台くらい停められそうだ。
「ここでやっていけるのか?」
「やばそうだったら、すぐに辞めてしまおう。」
犬飼にはただそういう思いしか浮かばなかった。

世の中の動物病院で、入社式なんてものをやっているところが他にあるのだろうか?
恐る恐る病院の職員通用口に手をかけて、中に入る。動物病院への就職は通常、実習と呼ばれる職場見学が必須であり、この建物に入るのも学生時代に入社試験という名の実習で来て以来だ。学生の目線からみる光景と獣医師免許保持者となってからみる光景では、何か違って見えた。そんな気がした。

入社式は最上階の大会議室で行われた。ちなみに普通の街の動物病院に就職した犬飼の同級生の岡田に後に聞いてみると、初出勤の日は朝のカンファレンスで2分くらい自己紹介したのみだったとのことだ。
入社式では、社長、院長、人事部長、診療本部長、学術部長なのど色んな肩書きの偉いであろうおじさんたちの挨拶が続き、なんか有難いお言葉を言っていた。
最後に事務方から事務手続きの説明があり、入社式は終わりとなった。明日からはとうとう現場に出ることになる。

現場初日から、強烈な洗礼を受けることをこのときはまだ知らない。

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