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80代のセンパイと暮らす。(32)

センパイは、無類の柿好きである。

我が家には柿の木がある。しかし、古木で弱っており、栄養不足なのか、今年は実がかなり落ちてしまった。3年前は300個くらいとれたのに、20個くらいに激減した。殆どの実が2階の窓と同じくらいの高さになっており、今年は鳥が嬉々として食べるのを見ているしかないなぁと諦めていた。

残り15個くらいになった時、センパイは新聞配達のお兄さんたちに、高枝切りバサミを持ってこさせ、取って貰った。「え?なんで新聞配達の人がそんなことするの?」
「なんか、いろいろやってくれるのよ、1人500円で」
「そんなこと、何かに書いてあったの?」
「おじさんがやるって言ってたのよ」

センパイは、新聞配達の集金のおじさんと仲が良い。今年になって、宅配が減ったせいか、近くの販売店がなくなり、少し遠くの店と統合された。なので、そんなに古い付き合いではないはずだが、おじさんは、わざわざ美術館のチケットが手に入ったら届けに来てくれる。センパイがいつも集金のたびに、何のチケットがあるのか、しつこく色々聞くからだ。もはや月末のちょっとした儀式になっている。そして、柿好きなセンパイは、実の収穫もギュウギュウ頼んだに違いない。私もイイ歳のおばちゃんだが、このやりとりはできない、、、まぁ歳じゃなくて、キャラクターの問題の気もするけど。

先日、人手不足で集金作業が負担なので、来年から銀行振り込みにして欲しいとのチラシがポストに入っていた。センパイとおじさんの丁々発止なやりとりも、あと2回で見納めなのか。何でもないことかもしれないが、なんだか淋しい。

長い間取らないでいたので、完熟した柿は頗る美味しかった。センパイとおじさん、ありがとう。

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