やっと分かった「ていきけん」


小学校の2年生。
学校の授業。国語の教科書に載っていた話に、不思議な感覚を抱いた。
「きつねの子の拾ったていきけん」
きつねの子供の3きょうだいが、主人公である。
お兄ちゃんと、お姉ちゃんと、坊や。揃ってお使いに行った帰り道、道ばたで、坊やが定期券を拾うのだ。
(ていきけん?ていきけんって、何なんだ?)
「セルロイドの入れ物に入って」教科書にある。
(セルロイド?セルロイドって、何だろう?)
下部に描かれている挿絵は、藤城清治さん。影絵で有名な方である。
令和6年・御年100歳。「人生100歳」時代の先駆者となられ、ご多忙な日々だ。

幾度となく、思った。
(先生に、聞いてみようかな?ていきけんって何ですか、って)
セルロイドについても聞きたい。しかし、忙しそうだ。
仕方なく、途中まで一緒に帰るBFくん達に聞いてみたが、こぞって皆々
「知らない」と言う。
彼らは全て自営業者の子供であったから、知らずにいたのだ。父親が家にいて仕事をする。=定期券を必要としない。
(だったら)
普通の勤め人、ウチの父。お父さんにと思っだが、うやむやとなった。

問題解決。
目出度くわたしが「ていきけん」。
「セルロイドの入れ物に入った」定期券を拾わずに我が手にしたのは、高校入学と同時だ。電車通学となった為である。
(おおっ!)
これが「ていきけん」か。あの頃が甦る。
「セルロイドの入れ物」は、「定期券ケース」。「セルロイド」ほほぅ。左側についているコレか。へぇ~っ。
初めこそ興奮。何度も出したり入れたりして楽しんだが、すぐ飽きた。
面倒臭い。
程なくしてそのまんま。「裸体のマヤ」ならぬ「裸体の定期」での使用だ。

水沢アキだったであろうか?
子供の時に父親に怒られた腹いせに、父親の定期券を自宅にあった庭の池に放り投げた強者は。
ものすごい行動力。庭の池がある自宅なんて、と思ってしまう。
さぞかし、社会的地位のある父親だったのであろう。経営者だったのかも知れない。
その後の父親の行動が、知りたいものですな。
もし、わたしが父親だとしたら?出勤前に一喝したいが、時間がなかろう。
「たまにはいいか」と、タクシー出勤の巻き。


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