「フェア アーユー ゴーイング(どこゆくの)?」

昔。電車内でアメリカ人を見た。通勤電車の帰り道。高崎線。

20代後半であろうか?女性だ。

(一人旅?こちらに彼氏がいるとか、親戚が住んでて、友人が、なのかなぁ?)思いながら横目で追う。(日本の治安、電車内の清潔さに感動するでしょう?あなた。お国の大都市、ニューヨークなんて、酷いもんねぇ)心の中で話し掛ける。(同じぐらいに、直ぐ電車の中で寝る日本人、物を置いて席を離れる習慣(?)に、不思議さを憶えちゃったりしてる?)等々思いながら、観察していた。

吊革につかまり、流れる車窓からの景色を見ている。特に表情はない。

と、アクシデント発生!いきなり急停車。電車が止まった。アナウンスが流れる。事故が発生したと言う。「ここで停車する。目的地まで到着できないから、必要に応じて、乗り換えるように。お客様にはご心配とご迷惑をお掛けします」旨。彼女を見る。目を真ん丸にして、驚いている。仕切りに辺りの様子を伺っている。どうにかなってしまったのは理解が出来ている、らしい。けど、どうすることも出来ない。日本語。言葉の壁だ。

(心配してるね、あの顔は。心細くもあるだろうし)チョイとばかりに、決意した。(よっしゃ!一丁、やってみますか)わたしと左程、背丈に違いがないのにも安心感を得、近づいた。来世は外交官の子供の家に生まれ変わる予定(?)のわたしには、半ば言語の予習である。兎にも角にも使ってみよう、助けたいとの思いが走る。

「ハイ フェア アーユー ゴーイング(どこゆくの)?」「コウノス」「コウノス?アッ、ハァーン(そうなの?)ディス イズ アクシデント」まずは落ち着かせる。

実にジャストなタイミングであった。「鴻巣方面にゆかれますお客様は、4番線にて、、、」アナウンス届いて来たのだ。

後は、お茶の子さいさい(?)。すんなりいった。「カム ヒヤァ(こっちにおいでん)」。ホームを降りて、4番線まで乗り換える。ホームに到着した頃、電車到着のアナウンスがあった。段々電車が近づいて来る。「ウィ ア ラッキー!」大袈裟なジェスチャーつきで喜びを表現すると、大きく彼女も頷いた。

鴻巣駅までの車中、名前を聞いたが忘れてしまった。その少し前、わたしはアメリカのディズニー・ワールドへ遊んでいた。「アイ アム ゴー エプコッッ センター イン ディズニー・ワールド」程度の会話はしたかと思う。鴻巣駅に到着。「グッバイ。ハブ ア ナイスディ イン ジャパン」ここまで出来たのだから、完璧だ。「グッバイ。サンキュー」笑顔で出口に向かう彼女の背を見送った。

                    

#一歩踏みだした先に

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