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何回目かのクリスマス

わかってはいたけれど、数えてみるとあと7日で2022年が終わろうとしている。

今年は大きな出来事があって、そこを境に日々の暮らしががらりと変わり、走りながら皿回しとドリブルとシュートを決めるような毎日の連続なのだけれど、なんとかかんとか生きている。

大変すぎる、と思うような時期が人生には何回かやってくるもので、今は間違いなくそのうちの一つといえる。とはいえ、「子どもが生まれてから3週間、3カ月、3年」の大変さはいまだ人生の最大級に君臨しているので、まあ大丈夫だなとも思える。ただ、年齢を重ねると、大変さにもいくつかの種類があるんだなとわかる。あの頃は、暗闇から抜け出せないような辛さがあった。いまは、体が回復するのが遅くて足が痛い。

詳しくは書かないのだけれど、13年住んでいるニュージーランドで、ぐるりと一周して何かが戻ってきて、「ほら、もう一度やってみなよ」と過去の自分に手渡されたような気持ちでしがみついている。

「メリークリスマス!」と声を掛け合うのは、日本ではクリスマスイブなんだった、とインターネットを開いて気が付いた。こちらでは、12月の中頃ぐらいから、去り際に「メリークリスマス」と聞こえはじめ、なんなら「メリークリスマス&ハッピーニューイヤー」がセットで、それでもクリスマスは25日です。

9歳になった娘は、12月1日から、サンタのしもべであるエルフのぬいぐるみがいたずらするのを待ちわびていて、忙しい両親のせいでちっとも動かないエルフに対してシナモンの粉を振りかけるなどのまじないを真剣にしていた。

まじないが効いたのか、娘の真剣な表情が誰かの心を動かしたのかはわからないけれど、エルフは時折気が向いたように、トイレットペーパーをクリスマスツリーに巻き付けるなどをして、寝起きの娘を喜ばせていた。

サンタクロースのプレゼントというものは、25日の朝にツリーの下に置いてあるもので、したがって24日の夜はサンタクロースをお出迎えする準備をしなければいけない。そんな風習をすっかり理解した顔をして、娘はクリスマスツリー型のショートブレットを市販のアイシングシュガーのペンできれいに飾り付け、マグカップに入ったミルクと一緒に置いていた。

手足がすっかりと伸びて、Facebookがリコメンドする写真の中の娘はすっかり赤ちゃんで、本当に大きくなったんだなと思う。Google検索で見つけた情報を披露したあと、9時になったとたん「早く寝なきゃ!」とベッドに駆け込む12月24日の夜の娘は、とてもかわいくて、1000文字くらいの文章を書かせるくらいには私の心に何かを残してくれる。

きみが5歳くらいのときのこと、とてもたくさん書いていたからか、よく思い出す。思い出せそうで、あんなに小さかった手やふっくらしたほっぺの輪郭は大分忘れてしまったのだけど。

夜中まで文章を書いている人がいる家には、サンタクロースがプレゼントを置き忘れてしまう可能性があるので、そろそろパソコンを閉じなきゃならない。

嵐のような日々が過ぎて、いまの日々を笑って話す日がまた来るのでしょう。ちょうど今みたいに。また何年後かに。

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