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とろける愛のようなものを3つ【書きかけのような日記】

週末、カフェでおひるごはんを食べていると、まぶたが勝手におりてきた。

ミルクの泡に粗さが残るフラットホワイトは苦みが際立つ。なのに、私の頭をぼやかす眠気は一向に去ろうとしない。コーンチップスを、真っ白なサワークリームの塊につける。湯気がたつチリビーンズものせる。みょーんとのびるチーズと一緒に口に運ぶけれど、あからさまに安っぽいプラスチックを食べてるみたい。

あきらめて目をつぶると、唇に固いモノがふれる。反射的にかみ砕くと、隣の娘がニコニコとコーンチップスを私に差し出しているところだった。

パリン、ぱりん。軽快な音と一緒に、娘が反対側をかじる。近づくふたりの顔。丸いひとつのコーンチップスを二人でかじりながら、あれ、これって恋をしている人たちがやるゲームだなと思いついた瞬間に、眠気が飛んでいった。

娘の頬にえくぼができて、目がくしゃっと細くなる。たぶんその顔は、私に似ている。

眠る前にベッドで「カントリーロード」を口ずさんでいたら、小さな手で口をふさがれた。ぴたっと歌うのをやめてあげる。満足そうにこちらを見る娘。体温の高い手のひらが離れたら、にわかにまた歌い出す。再びふさがれる口。

繰り返されるたびに、娘の全身からもれる喜びが止まらなくなって、笑いながらひっくり返った。

もうすぐ7年も一緒にいるので、どうしたら君の笑顔が増幅するか、なかなか知っているのです。

「これはなんの歌?」

Siriに話しかける後ろ姿が、楽しそうに歌い出す。その背中は、自作の歌をiPadのなかにいる女の人が知っていると疑わない。でこぼこの音程が、意味も飛んでしまう歌詞が、誰かを喜ばせる歌であると信じて疑わない。

娘の頬にえくぼが浮かぶとき、空気になにかとけているとしたら、愛だと思う。一瞬で消えて、私を満たす。

無償の愛なんて未だに知らないけれど、小さな手が渡してくれる目に見えないものは、なくならずにちゃんと降り積もっていく。


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