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ナイトメアはもう見ないけれど作品は読みます


実はこの記事を書くよりも随分と前に、この作品のレビューすることを決めていた。よくいえばあたためていたと言えるし、忙しさを理由にして書かなかったとご指摘を受けたらぐう(うぉん)の音も出ないですが……。
そう、実は1月下旬に出版された小説「ナイトメアはもう見ない」という作品がとても面白かったので紹介をしたいと考えていました!
やっと書ける!紹介させてくれ!

作品情報

タイトル:ナイトメアはもう見ない――夢視捜査官と顔のない男
著者:水守糸子
出版社:集英社オレンジ文庫
書籍URL:http://orangebunko.shueisha.co.jp/book/4086802325
twitter: https://twitter.com/itomaki_ito
作品の傾向:現代・推理・ミステリー

作品の概要

――わたしの悪夢はいつも、暗闇を舞う無数の火の粉と灰のにおいから始まる。
夢で他人の記憶を見る異能を持つ“夢視者”の笹川硝子は、特殊捜査官として京都府警に勤めていた。遺体に触れるとその者の死の瞬間を追体験できる能力を活かし、事件を解決に導いている。そんな中、同じ特殊捜査官で先輩でもあった川上未和が、硝子に「ナイトメアはもう見ない」という謎のメッセージを残して行方不明になってしまう。さらに未和の汚職疑惑が発覚し…? 2018年ノベル大賞佳作受賞作!

「出典:作品名/ナイトメアはもう見ない 著者/水守糸子http://orangebunko.shueisha.co.jp/book/4086802325 (2019年4月27日10時にアクセス)の概要より抜粋」

作品の感想

この世界では、他人の記憶を夢で見る力を持つものは夢視者と呼ばれており特捜査官としての採用がはじまったのが五年前のこと。
事件を解決に導く反面、世間とのギャップに苛まれる夢視者の中でも、主人公の硝子は一際メンタルの強いキャラクターだろう。
同僚(課は違うらしい)の嫌味にはガンガン噛み付いて場面が度々見られるのは、「おっ!硝子!いいぞ!やったれ!」と読み手がイラっとくるより少し手前で怒っているのが硝子らしくて愛らしい。(愛なのか?)
そんな硝子の心の拠り所は、定食やまだという行きつけの定食屋さん。マスターの山田さんは肉食の硝子から貞操を狙われているが、のらりくらりと躱す、ある意味猛獣使いか。
僕は硝子と山田さんのやり取りは、この作品の癒やしであり、見どころだと思っている。めちゃくちゃかわいくて好きなんですよね……。

この作品は、日常の事件と作品の根幹となる事件が2つの軸で進行していく。ミステリーではあるが、可能な限り複雑さは削ぎ落とされていて、非常に読みやすい作品となっている。
ミステリーとして読むなら、初心者の方に是非読んで欲しいかもです。
しかし、個人的にはただのわかりやすいミステリーとして読むには勿体ない面白さがあると思っている。
誰にでもわかる程度の複雑さを保ちつつ、トリッキーなことはしないで、情報の出し方のみで謎解きをしていくのは言うのは簡単だが、書くのは難しいのではないかと思う。
もし叶うなら、謎解きを読み手が進めるというよりも、硝子と同じ気持ちで思考して、同じ感情で事件に向き合ってほしいと思う。
おそらく「ナイトメアはもう見ない」の楽しみ方としては、これが一番面白いと思っている。

人読みすると、著者の水守糸子さんの作品(ミステリー部門)としてはかなりわかりやすい方に振った作品じゃないかなーと思った。
複雑な設定だったり、特異なものを上手く調理することが非常に得意な作家である印象が強いため、作品を読んだときは「ああ、なるほどな」と思った。
この作品は硝子が謎解きすることが重要で、爽快感を持たせたいことを考えると、舞台設定については「シンプルだな、わかりやすいな」と思われないと、面白味が半減するのでないのかな。
だからこそ、この構成だったのかと勝手に考えていた。自分の中ではかなり腑に落ちたし、やっぱり水守さんは上手いなーと思った。
この著者はほんと引き出しが多くてですね、非常に面白い作家なのです……もっと世の中に広まればよいのにとペンを取った次第です。
ゴールデンウィークのお供に是非。
うぉんちゃんイチオシの作品&作家さんです。

作品情報

タイトル:ナイトメアはもう見ない――夢視捜査官と顔のない男
著者:水守糸子
出版社:集英社オレンジ文庫
書籍URL:http://orangebunko.shueisha.co.jp/book/4086802325
twitter: https://twitter.com/itomaki_ito
作品の傾向:現代・推理・ミステリー


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