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感想:暦売りの少年を読んだので紹介する

作品情報

タイトル:暦売りの少年
著者:春
作品URL:https://kakuyomu.jp/works/1177354054889935956
twitter: https://twitter.com/s0v0p
作品の傾向:童話・ファンタジー

作品の概要

あんたが、今日も頑張ろうって思えるような暦、作って持ってくるから――春

おばあちゃんが語って聞かせる、暦売りの少年と村娘の昔話。

「出典:作品名/暦売りの少年 著者/春 のhttps://kakuyomu.jp/works/1177354054889935956 より抜粋」

※ネタバレについての注意点

結末についてはなるべく触れないスタンスで記述していますが、それ以外のネタバレは多く含まれますので、お気をつけ下さい。
(ネタバレの急所は外しているつもりですが、あくまで尺度は私です)

作品の感想

年の瀬になると「暦売り」という、いわゆるカレンダーを売り歩く人が各地に訪れるようだ。
作品の舞台である、風花が舞い始めた村でも例外ではなく、「暦はいかが」と、独特な節を利かせて売り歩く暦売りの声が聞こえてくると、年の瀬を感じるそうだった。
しかし、その年にやってきた暦売りは幼さが残る少年だった。
暦売りの少年は、暦を作る人でもある「暦師」に弟子入りして、初の仕事である暦売りを任されたようで、気合十分。
誇らしげに仕事をする小さな暦売りを村の皆はとても気に入ったようで、村人に受け入れられてゆく。
そんな中、婚約して間もなく都へ招集されてしまった旦那がいる娘と出会う。
そこで、暦売りの少年が提案したのは、試作品の暦だった。

というのがこの作品の簡単なハイライトです。

感想ですが、本作品で一番刺さったのは、「暦売りの声を聞くと、今年もいよいよ終わると感じる」(要約してます)という一節だった。
いわゆる季語というか、この村の風物詩であることを表しているのですが、風花が舞い始めた村であるという状況も相まって、この情景が脳内にありありと浮かんでくる。
かなり端的に、それでいて状況が非常に分かりやすくて、短文なのに導入が非常によい作品は、一気に引き込まれるので、作品を読み終わったのも早かった。
僕はこの作品の最も秀逸なところで、物語から逃さない機構を果たしているとすら感じた。

物語に触れるとするなら、いわゆる王道の作りをしている作品という印象を受けた。
構造としても、期待を裏切らない、面白かったと言わせる作品に仕上がっていると思う。
設定としても、「暦売りの少年」っていいですよね。このワード自体がかなり風物詩的であり、歴史上でもこういった役割を持った人は、いたかもなあと思える。
リアルとファンタジーが上手くミックスされていて、取ってつけたような設定になっていないのは、とても好感が持てるし、僕は好きだ。

**

暦は、今も昔も人間の生活にとって欠かせない要素です。
カレンダーは計算方法や、国や文化によっても変わってきたとおもう。
しかし、それだけの多様性があるにも関わらず、どの文化圏でも暦は人間の重要なものの一つとして変わらずあり続けるのはなんでだろう。
というのは、理由はおそらくそこまで難しくなくて、暦を策定することで月日によって似たような現象が起こるから。
それは農業や漁業などの生きるのには欠かすことができない営みを安定的に行うことであったと思う。

まあ何というか、ざっくりまとめると人間の営みのため、ひいては安定的な生活は幸せのために、暦は作られたと考えられるわけですよ。
「暦売りの少年」は、暦を売っていたというよりは、未来の大まかな幸せになるための道標を人々に運んでいたと思うんですね。
僕は何というか、それを踏まえてこのお話を読み直すと、より胸があったかくなるお話だなあと思うわけです。

タイトル:暦売りの少年
著者:春
作品URL:https://kakuyomu.jp/works/1177354054889935956
twitter: https://twitter.com/s0v0p
作品の傾向:童話・ファンタジー

Photo by Adam Tinworth on Unsplash

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