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明日、会社を辞める。

私は明日、会社を辞める。
正確には、「辞める」ということを伝える。


約半年前、4月1日に新卒で入社した。私はまだ1年目の新入社員だ。
入社式を終え、配属された部署で、その日からいきなり窓口に立つことになった。何一つわからないのに、来る人に次々と声をかけられるのが辛かった。電話もすごく苦手だ。相手の話を聞きながらメモを取り、必要な対応をする。──自分がこんなにもマルチタスクができないということを初めて思い知った。一度、電話中に先方を怒らせてしまい、対応を上司に引き継いでもらってしまったことがある。それ以降、電話はトラウマになった。数字にも弱くて、お金を触るとき、間違いがないかいつも怖かった。

環境はそんなに悪くはなかったと思う。同じ部署に同期はいなかったけれど、優しい先輩方ばかりだった。いじめられたわけでも、何かされたわけでもない。だからこそ、原因は全て自分だ。覚えが悪くて要領が悪くて気が利かなくて心が弱い、私が全て悪い。

4月は、何もかも初めてだし、あと1か月もして仕事に慣れればきっと、もう少し楽になるだろうと思って耐えた。
5月、しかし気持ちは全く変わらなかった。毎日泣きながら出勤した。なんで泣いているのかは、自分でもわからなかったけれど。
6月、食欲がなくなった。とにかく毎日漠然と辛くて、毎日死にたいと思った。
7月、ずっと体調が悪かった。一度上司に辞めたい旨を話したけれど、「まだ早いのでは?」「今から転職してもまた同じ思いをする」という言葉に、「もう少し頑張ります」としか返せなかった。
8月。自分がもううつになっていることは自覚してはいたけれど、自分で言ったからには「もう少し頑張らなければ」いけないと思った。だけど、もう少しっていつまで?社会人はみんなこんな、毎日死にたいと思いながら仕事に行っているのだろうか。──もう、何が正しいのかわからなかった。


「もう明日から行かなくていいよ」

また訳もわからず涙を流している私に、母はそう言った。
「そこはあなたの居場所じゃなかったんだよ。」
「ご飯も食べられない、そんなに泣いてばかりいるのもおかしいから。」
「もう心が限界で溢れちゃったんだから、今はお休みが必要なの。」

この日、私は会社を辞めることを決めた。

私のことを気にかけてくれた先輩、大変さを分かち合ってくれた先輩、よく声をかけてくれた先輩、話を聞いてくれた上司。職場の全員に罪悪感でいっぱいだ。
大学まで行かせてくれた両親にも、本当に申し訳ないと思う。


こんなことになってしまって、
これ以上頑張れなくて
本当にごめんなさい。



朝が来る。
いつもの時間に目が覚めた。
でも、いつもと同じじゃない。

これからのことはわからない。何も考えられない。
でも、今は、こうすることが最善で、きっと他に方法はないんだと思う。


今日、私は、新卒で入った会社を辞める。
今この瞬間を、最後の涙にするために。

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