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ドイツで読んで、モナコで泣いた

息子が夏休みの宿題をしている。
読書感想文の様で、
私も隣に座って書いてみることにした。


私が25歳、人生の底を這っていた時
オランダの叔母が背中を押してくれた。
そこから私の『死に場所探し』のヨーロッパバックパッカーひとり旅が始まるのだが、
その時、ドイツで一冊の本を買った。

英語では、業火に焼かれて生きる、
そんなタイトルだった。

私は机上で英語を学んでいなかったので
読むのは時間が掛かった。
寝台列車での時間潰しにと
インパクトのある表紙で選んだ。


話は、中東シスヨルダンの小さな村から始まる。
学校にも通わず、鞭で打たれながら奴隷のように働く17歳の少女スアドが主人公だ。
恋愛は死に値する行為と知りながら、恋する気持ちは止められない。
婚姻前の性交渉、そのせいで17歳のスアドは
義理の兄に火刑にされてしまう。

私はこの話をフィクションだと思っていたのだが
事実だと知って驚愕した。
しかも遠い遠い昔の話でも無い。


これは、今もなお虐待と死の危険にさらされている女性たちの、衝撃の記録だと言う事実を知った。


婚前交渉は家族の恥とされ
17歳で初めて恋をし、子どもを身籠ったスアドは
名誉を汚したとされ、たった17歳と言う若さで
死をもって罰されたのだ。

私がたまたま手にしたのは、重度の火傷を負いながらも、地獄を奇跡的に生き延びた著者が書いた本であった。

なんて酷い世界だと思った。
人を好きになり恋をする気持ちは誰もが持っている。
憧れの気持ち
淡い気持ち、そんな事が恥とされ
死をもって償うべきことかと。


私は自分が17歳の頃を思い返した。
女子校で、
彼氏がどうの
合コンがどうの、口を開けば恋愛話しが多かったと思う。
私はガサガサしてバサバサしていたから
友達の横で笑いながら
面倒くせーなーと聞いていたけれど
世界の裏側では、そんな話でさえtabooな国があったんだ。

卒業式の時に、大きくなったお腹を隠す様にして
卒業して行った友人もいる。

思い返す中で、私はそれ以上読めなくなった。
あまりにも世界が遠すぎる。


バックパックの中で閉ざされた本を
再び開いたのはイタリアに入ってからだ。

ローマで私はちょっとだけ不貞堕落だった。
それは過去記事の『死に場所探し』に書いているので、ここでは省く。

私は恋愛感情すら無い人と夜を過ごしながら
スアドの事を思い出した。

その国には、その国の規律があって
宗教観も絡んでいて
何が悪いとか簡単には言えない事は
カナダやアメリカで散々見聞きしてきた。
日本だって
長男長女は意味なくしっかりしなさい!と言われなかったか。
男は男らしく
女は女らしくとか言われなかったか。

よく考えたら"らしさ"ってなんだ。
秘めた恋愛感情は良いが
性交渉はダメで
しかも相手は自分が選ぶ人でなく
人身売買の様な取引の上にある婚姻関係。
自分の気持ちは生まれて死ぬまで
殺したままで生きるのか。

一気にいろんな事が溢れてきて
私はローマを離れる列車の中で
再びスアドの本を開いた。

Veneziaに着いた時、
それはそれはすごい光景が広がっていた。
世界中のいろんな国々から人が集まっていて
右を見ればインドから
左を見ればメキシコから
前からはアジアのツアーが来ている。
見る人見る人、手を繋ぎ、腕を絡ませ
幸せそうな笑顔で歩いている。

スアドの本が
事実である事を微塵にも疑ってはいない。
ただ見えない世界、私の知らない世界が
この地球上にある事が
いまいちピンと来てなかった。

重度の火傷を負いながらも奇跡的に救出され、
20回以上の手術を受けたと書かれていて
スアドは相当酷い傷を負ってるに違いない。
仮面で覆われた顔が物語っている。

罰するのが家族からだなんて酷い。
家族って1番の味方ではないのか。
理解者でなく
ただ女性として生まれてきただけで
家族からも
社会からも
こんな酷い扱いを受けるのかと
悔しくて堪らなかった。

私は父子家庭で育ち、決して万人が思い描く家族像では無い環境で育ったかも知れないが、
愛や思いやりは間違いなく溢れていた。
家族の形が、こんなにも違う事に
私は正直気持ちが追い付かなかった。


Vaticanに着いた時
私は海外渡航者用のツアーに申し込んだ。
Vatican内のガイドも、その周辺のガイドも
魅力的だったのだ。
ツアーと言っても、集合場所に集まって、
ガイド数人が英語で説明してくれるものだったが
わたしはたまたま中東からの夫婦のいるグループに入った。

自由行動の時、その夫婦を何気に目で追ってしまう。
私はつい話しかけてしまった
『日本は昔、男尊女卑と言う言葉があり考え方がありましたが、そちらの国はどうですか?』と。

すると男性は『あるかも知れない』と言い、土産物屋に入って行ってしまった。
あまりに唐突過ぎたと反省していると女性が近づいてきて
『大きな声では言えないけれど、家庭内でも男性が上よ。入り口も男女別だし、食事も別。
私達が肌や髪を出さないのは、他の男性に既婚者だと知らせるためでもあり、狙われないためでもあるの。旦那の家族と住んでいて、義父や義兄に狙われる女性もいるから』と小声で話してくれた。


スアドの世界がまだある、と思った。

読み終えたのはモナコだった。
スアドは、現在ヨーロッパで夫と子供たちとともに新たな人生を歩んでいると書かれており、身元が分からないよう詳細は無かった。

私はただただスアドが新しい人生を送っている事が嬉しかったが、モヤモヤとした気持ちは晴れなかった。

今、この瞬間も自分の知らない国で
誰かがスアドの様な悲惨な日を送ってはいないだろうかと。

私は日本に生まれ育ち、
女であると言う事で蔑まれた事はない。
確かに痴漢にはあった事がある。
12歳の私の心を酷く傷つけたのは確かだ。
しかし私の日常生活はスアドとは違い
穏やかで笑いが溢れていた。

この本は、私に世界の暗い影の部分を教えてくれた。
そこから眼を背けてはならない。
そこからの叫びを無視してはならない。
そう教えてくれた。

このヨーロッパのどこかにスアドが生きていると
思うと不思議だった。
死に場所を探している私と
生きていく場所を見つけたスアド。

読み終わって
何故か私はもの凄い力を貰った気がした。
女性である事、
その逞しさや貪欲なまでに幸せに生きる力が
その時の私には必要だったのかも知れない。
人との出会いも本との出会いも必然だなと
感じた一冊。


今回の記事は、
『読書感想文』企画に乗ってみました。

いろんな方が書いた読書感想文✨
本好きなら堪らないです( ´ ▽ ` )

しかも投票出来ます♪
なんかワクワク度が増す⤴️

思い切り、久しぶりに読書感想文を書いてみましたけど、楽しかったです( ´ ▽ ` ) 沢山読みますが、第三者にどう思ったか、とか説明する事って余り無い事で…。

変な緊張と、汗かきました!



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THE_NEW_COOL_NOTER読書感想文

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