見出し画像

『夜のピクニック』を何度も読み返す②

さぁ!!みなさんお待ちかねの『夜のピクニック』語りの時間だよ〜!!

(特に誰も待ってない)

前回、なるべくネタバレ無しで印象深かったシーンを語ったのですが、ちょっと、あれ、その・・・正直言うとこれ以上ネタバレ無しで印象深いシーンを語るの、ちょっと無理!!絶対にネタバレに抵触する!!

なので、ある程度のネタバレがあります!!核心部分はネタバレしないように気を付けます!!許容できる方は記事を読んでください!!

主人公の貴子(たかこ)には、高校で知り合った美和子(みわこ)という親友がいる。高校生活最後の歩行祭の最終日は2人で歩くことになった。そこで、貴子は美和子から彼氏と別れたという話を聞かされる。貴子いわく、美和子もその彼氏だった志賀(しが)も成績優秀かつスポーツマンのパーフェクトカップルであったため、貴子は大いに驚く。そんな貴子に美和子はきっぱり告げる。

「(……)あたしたち、物凄く傲慢だと思うんだけど、お互いに、この組み合わせはお似合いだと思ってたの。(……)あたしたち、いいところがいっぱいある素敵な相手とつりあう自分を自画自賛してただけだったの。あたしたちって素敵よねって、一緒に自己満足しあってただけだったの」
「なんだか、虚しいのよね。結局、自己満足で終わって、せっかくの高校時代に、本物の恋ができなかったなんて」

恩田陸(2004)『夜のピクニック』新潮社

そんな風に自嘲する美和子に対して、貴子は言う。

「それでも恋だったんじゃないの」
「あたし、ずっと、自分の西脇融に対する感情が何なのか考えてるの。だけど、ちっとも分からない。(……)みわりんからすると、どっちも罪悪感を抱えてるように見えるんでしょ?だけど、当事者のあたしにも、たぶん西脇融にもそうは見えてない。だから、きっと、同じものなんだよ。片方から見ると憎しみで、片方から見ると罪悪感。恋愛だって似たようなもんだと思う。いいじゃん、誰が見ても素敵な人がいて、一緒にいたいと思って、二年間一緒にいられたんだから」

恩田陸(2004)『夜のピクニック』新潮社

自分の恋愛の後悔に対して真正面から向き合うのは、大人でもキツい。いくら美和子が才色兼備であったとしても、まだ高校生なのだ。『自分達は客観視できている、その上で別れた』と思いたいのが伝わってくる。それでも、美和子は言うのだ。

「あたし、さっき貴子に言われて反省したわ。あたしって、ほんとに、頭でっかちのいやらしい奴だったなあって。素直に、彼とうまくいかなくて別れたって認めようって。(……)」

恩田陸(2004)『夜のピクニック』新潮社

え、偉すぎる・・・。そりゃ、フィクションだからかもしれないけどさ。・・・それが出来なくて拗らせる大人のなんて多いことか!!

別に恋愛だけではない。『自分は客観視出来ている。充分に冷静だ。あくまで想定内の出来事である』そう自分を誤魔化す場面は、誰にでもあるのではないか。生きていれば虚勢が必要な場面があるかもしれない。それと同様に、現実に真正面から向き合わなければならない場面も必ず訪れる。

拗らせている大人の1人として子供達に伝えたいことは、大人になってから都合の悪い現実に向き合ったときに「幼子のように駄々を捏ねないようにしましょう」ということである(笑)


この記事が参加している募集

読書感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?