テキストコンテンツの最適解④


  1. オーディオビジュアルであること。

  2. 縦スクロールであること。

  3. 短いセンテンスであること。

  4. 壮大なセンテンスであること。

 僕がこれからのテキストコンテンツに必要だと思った4つの条件のうち、今回は「壮大なセンテンスであること」について述べたい。しかし、既に述べた3つと比べ、壮大なセンテンスであることとは抽象的過ぎる表現なので、まずはその意味について僕なりに書いてみたい。

 文章を読んだ時、僕たちはそのテキストにある情報をもとに映像や音声を脳内で展開する。しかし、どれくらいの情報量が展開されるかはその文章の性質によって異なる。例えば、俳句や短歌といったものは、そもそもの文字数は少なくとも、そのテキストから多様な解釈が生まれる。すなわち、元となる情報量は少なくとも、情報密度は大きいため、僕らがそのテキストを読解した時、脳内に本来のテキストよりも多くの情報が広がるわけだ。一方で、学術論文はどうだろう。俳句や短歌と比べると、そもそもの文字数が多い。そのため、脳内でテキストを読解した後の情報量もそれらと比べて大きくなりがちではあるが、情報密度はどうだろう?学術論文はその性質上、誰が読んでも解釈に齟齬が生じないような書き方が良いとされている。そのため、俳句や短歌と異なり解釈の多様性が生まれるような書き方をすることはできない。すなわち、限られた字数でできる限りの情報量を伝えようとする俳句や短歌と比べると、学術論文は情報密度が少ないと考えられる。

 そして、今の時代に適したテキストコンテンツを考えるうえで、コンテンツの情報密度は大きな役割を担っていると考えられる。なぜなら、テキストコンテンツに限らず、現代の人々はコンテンツに情報密度を求めている傾向があるためである。例えば、テレビを観ながらSNSを観たり、アニメや映画を倍速で見る行為は、現代のコンテンンツ市場においてはごく自然な行為である。そして、それらの行為は、本質的には一定時間に摂取する情報量を増やすこと、すなわち情報密度を高める行為であると解釈できる。では、なぜ人々は情報密度を高めるのか?それは、退屈だからである。アニメや映画はある種の総合芸術であり、映像・音声・テキストといったあらゆるメディアが凝縮されている。そう考えると、アニメや映画はテキストコンテンツよりも一見情報密度が高いように見える。しかし、アニメや映画はテキストコンテンツと異なり、時間の加速ができない。アニメや映画で展開される時間の流れ方は、特殊な演出を除いて、現実時間と対応しており、そのスピードを操作することはできない。もちろん、倍速視聴はそのスピードを操作する行為にあたるが、それとてシーンごとに時間を操作する繊細さは持たない。一方で、小説をはじめとしたテキストコンテンツはその時間の流れを、読者の意思に合わせて自由に操作できる。そのため、読者にとって情報過多になる場面や、逆に情報が少なすぎる場面も、時間を加速することで自由に最適な情報密度に調整することができるのだ。これはテキストコンテンツが持つ最大の強みの一つであると言える。読者は常に自分が処理できるギリギリの情報密度を求めている、なぜなら、少な過ぎても多過ぎても、読者は作品に没入することができないからだ。そして、テキストコンテンツは時間を操作することができる子によってその没入感を提供することができる。その一方で、あまりにも情報密度の少ない文章だと、時間を加速しても文字を追う視覚の動きが対応できず、読者に退屈を与えてしまう。だからこそ、読者が作品に没入することができる程度の情報密度があるテキストが今の時代には必要なのではないだろうか。

 しかし、情報密度の大きいセンテンス=壮大なセンテンスであるとは限らない。なぜなら、単に情報密度が大きいだけでは、読者は想像力を掻き立てられず、センテンスの壮大さを実感できないためである。そこには、テキストコンテンツそのものが持つ純粋な面白さが必要とされる。つまり、・テキストコンテンツそのものが面白い。・情報密度の多いコンテンツ。の二つの要素を満たすことで、初めて「壮大なセンテンス」と言えるのではないだろうか。

 以上で4つの条件についての全ての説明を終えた。正直、論理的に矛盾する記述も多くあったと思う。特に、これからのテキストコンテンツにおいては、「音声コンテンツとして存続するもの」と「テキストを基軸として存続するもの」があり、その二つを分けて論じなかったのが今回の文章にて矛盾を生じさせてしまった理由だろう。とはいえ、これからのテキストコンテンツは、紙からデジタルに向けて、大幅なフォーマットの改変が始まっているのは紛れもない事実であろう。そして、テキストコンテンツそのものがなくなるわけではなく、時代に適応できなかったテキストコンテンツがなくなると言うのはほぼ間違いのない事実ではないだろうか。

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