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俺たちのBANG!!!感想

俺たちのBANG!!!

長らく「タイトル未定」だった少年忍者の舞台、もうすぐ松竹座の公演も終わるころだし各種メディアであらすじ含めた詳細なレポも載っているので、ネタバレ気にせず思うところを書きつづりたいと思います。

”観劇前のお気持ち”

 お気持ち、なんていうと今やネガティブなイメージですが笑。
 観る前は「滝沢歌舞伎」のあとでもあり、これから毎年続けられるような演目にするんだろうなと思っていました。
 物語性よりもパフォーマンスを重視した、見世物が多いもの。
 少年忍者のパフォーマンス力を活かすのであればそれもまた最適解だと思っていたし、ジャニーズ特有の誰かが死ぬような展開のお涙ちょうだい的な青春賛歌お芝居よりはいいかなと思っていたのですが、開けてびっくり玉手箱でした。

”少年忍者解散!?”

 ご存じ?の通り、俺たちのBANG(以下俺バン)は少年忍者を題材にした舞台でした。ジャニ伝のように、彼らのヒストリーをなぞる舞台になる可能性はあるかなと思ってましたが、まさか「解散」をテーマにしてくるとは…

 思い起こせば2023年のスプパラ日程発表の時、東京公演に少年忍者の名前がなくて、これまでもジャニオタの中で何度も(根も葉もない噂として)少年忍者解体説は挙がっていたし、やっぱり例を見ない21人の大所帯グループではあるので、いつかそうなってしまうかもという不安な気持ちが自分にもあって、これはもう本当に少年忍者は終わってしまうんだ…と思ってスプパラに臨んだあの日のことを鮮明に思い出させられました。

 2022年のサマステ(当選したにも関わらず公演中止となった期間だったため入れませんでしたが)から少年忍者の輝きは明らかに変わりました。
少クラでのパフォーマンスも常に全力、誰かに言われてやらされてるパフォーマンスではなくなって、「これが自分たちだ、これが少年忍者だ」と言わんばかりの熱量が毎回TVの画面越しに伝わってきて、何度泣いたかわからないくらいでした。
 けれどもそんな彼らの熱意が、頑張りが、大人たちには認められなくて、全部無になってしまうのかと…
 でもそれは自分のような一人のオタクにどうこうできるものじゃないから、静かにさわがず受け入れて最後の公演を観に行こう、2022年のサマステが見られなかった分、少年忍者のパフォーマンスを目に焼き付けに行こう。そう思って初日夜の公演に向かい、その途中で昼公演での「タイトル未定」舞台の発表を知って、新幹線の中だというのに涙があふれるのを止められませんでした。松竹座の前にいる時からずっともう「報われてよかった」「認めてもらえた」「次があるんだ」「これからも少年忍者はあるんだ」とずっと嬉し泣きで、公演中も最初から最後まで泣きっぱなしで終わったことを覚えています。

 そんな少年忍者解散の噂を正面切ってメインテーマにされたら、それはもうあの時の気持ちを全部思い出して泣くに決まってますし、自分たち(他のひとがどう思ってたかは知る由もないですが)オタクの気持ちを少年忍者本人たちが理解してくれていた事がうれしくて、またさらに涙が…
 実際、奇跡的に一般申込含めて複数回観ることができていますが、毎公演泣いてしまっています笑。

 この解散説、Dance SQUARE vol.56でも言及されていましたが、実際に少年忍者の中の一部でもあった事のようで…
 ジャニーズJr.である以上、その存在は不安定なもので、いつどうなるかなんて誰にもわからなくて、本人たちの気持ちたるや、オタクの不安なんてレベルじゃないとおもいます。
 名立たるデビュー組の先輩方の退所、Jr.定年制のスタート、そしてJr.グループまるごとの退所。
 そんな状況の中で必死に生き残りをかけて毎日さらなる高みを目指して努力して、けれどもそんなことは微塵も見せずにステージの上では笑顔で、人生を、生命を削った本気の輝きを見せてくれる彼らそのものの物語。それが「俺たちのBANG!!!」です。

”虚構と現実”

 ”虚構と現実”、これは個人的に演劇に求める重要な要素のひとつですが、「俺バン」はそれを見事に表現してくれています。
 解散説という、前述のとおりリアリティがありすぎる題材に、どこまでが本当にあった話なのか、どこからが演出上の話なのか、まったくわからなくて、まるで本当の舞台裏を観ているかのような錯覚に陥りました。虚構と現実を織り交ぜた脚本というか、構成の上手さが本当にすごいです。

 展開上、一番虚構性が高いはずの「解散したくないけど、自分には何ができるのか、何をしたらいいのかわからないんだよ…!」と泣く皇輝をそっとやさしく抱きしめ「これは皇輝くんひとりで抱える問題じゃないよ」とつぶやく織山くんのシーンも、「解散て言われてこれまで以上の最高のパフォーマンスなんてできないだろ!」とやさぐれる湧にふがいなさを感じて「(最年長の)お前がそんなんだからこんなことになるんだよ!」と憤りをぶつけるうっちーのシーンも、どれもあまりにも生の声すぎて、虚構が虚構と現実の壁を越えて現実に感じられる熱量でした。
 演技が上手いとかではなく(上手いんですが)、演じる彼らの熱量がとにかく高くて、中盤に本題に入ってからの全てのシーンで、観劇中のこちらも全身に力が入ってしまって、おわった後に体力と精神力をめちゃくちゃ削られた心地よい?疲労が感じられる、最高の舞台(織山イズムですね笑)でした。

 そしてもうひとつ、虚構と現実を綯い交ぜにしてくれる構成上の上手い作りになっているのが、終盤最後のパフォーマンスが「少年忍者解散ライブ」として披露され、そのはじまりに「○月○日、僕らは今日、解散する」という皇輝くんのアナウンスが入るところです。
 うちわく喧嘩のあと、あれやこれやでみんなで一致団結して「絶対勝つぞー!」となって、「よかった解散なんてなくなったんだ!!」と安心しきったオタクに突き付けられる虚構内現実。ハッピーな気持ちが秒で不安にもどされて「解散するんだ…!」と情緒が揺さぶられつづけるジェットコースター展開。これは本当に最後まで、観る側にも緊張と緩和(BY市川しんぺーさん)を与えつづけるインターバル走のような、らせん状の構成で見事というしかないです。

”死者と生者”

 演劇好きなオタクとして、虚構と現実の他に演劇の大事な要素としてもうひとつ挙げているのが死者と生者という対比です。
 これはわかりやすく過去と今をあらわしていて、「俺バン」の中でも死者であるゲンさんとマチコは「過去」を語る存在で、少年忍者は「今」を生きる存在。過去を踏まえて、今ある問題を乗り越えて、輝かしい未来へ至るという成長物語に欠かせない存在です。実は幽霊なんですと笑いをとろうとか意表をつこうとかいうことではなく、演劇の定型のひとつなんです。
 公演後にフォロワーさんと語ったことですが、「昔あるグループを応援していて」とマチコやゲンさんが言い出した時点で、彼らは死者なんだな、と確信してました笑

 他にも劇場に住まう幽霊というところでは、オペラ座の怪人をはじめ、有名な劇場にはかならず幽霊の噂があります。
 それは劇場は現実空間でありながら虚構を取り扱う空間であり、そこでは現実に起こりえる全ての事象と共に現実には起こりえない全ての事象もまた取り扱える空間だからなのです。死者もよみがえるし未来人も登場しうる、そんな時間や物理法則といった次元を超越した体験ができる空間。そう思うと観劇が非日常であることが実感しやすくなるかとおもいます。閑話休題。

 対比といえば、東京・大阪公演に不参加の3人がテレビ通話という形でビデオ出演するシーン。演者も観客も全員が解散の話で落ち込んでいるところに「解散という最悪の未来を知らない3人」がとても楽しそうに「これからの少年忍者」を話すという流れも、対比として、そして緊張と緩和として、とても上手いとおもいました。

”少年忍者ならではの舞台”

 解散説というテーマもですが、大人数でのわちゃわちゃ(通り越してカオスな大さわぎ笑)だったり、「ごちゃ混ぜパフォーマンス」で各々が得意な出し物を披露する場面であったり、よくサーカスに例えられるにぎやかさは少年忍者じゃなければ出せないもので、舞台という形でも少年忍者らしさというものは出せるんだっていう気持ちにさせてくれました。
 にぎやかさ、とハッピーな単語で片づけましたが、これもまた彼らの生命力の煌めきそのもので、21種の多種多様な煌めきがひとつの舞台の上で同時に繰り広げられることで少年忍者という強い輝きになっているのはもうみなさんご存じのことだとおもいます。

 彼らがジャニーズに入るため身につけた、生き残るために磨き上げたそれぞれの特技であったり、もしくは今回初めて挑戦することであったり。前にみたあれやそれや、今回初めて見てびっくりしたあれやこれや。それを観てもらおう、楽しんでもらおう、そのために成功させようという気持ちが伝わるパフォーマンスで、少年忍者をより魅力的に感じさせてくれます。
 ジャニワジャニアイのような、各個人が主役になる瞬間がある。というところでジャニーズらしさを感じる構成でもありました。

 そして、あわただしくにぎにぎしく過ぎていく「俺バン」ではありますが、しっかりと序盤に出された伏線が回収されてる構成になっています。
 「ごちゃ混ぜパフォーマンス」が、最後の「TWENTY ONE」のパフォーマンスに組み込まれているんです。
 少年忍者が大劇場でやりたいことを全部詰め込んだという設定の「ごちゃ混ぜパフォーマンス」が、最後の最後に見せてくれる「TWENTY ONE」でまた観られる。つまりそれは「TWENTY ONE」という楽曲は少年忍者がやりたいことだけで出来ているということで、最高に彼ららしいオリジナル曲なんだっていうことを教えてくれているわけで。
 少年忍者最後のステージという設定の舞台で、少年忍者らしさを見せれば解散を回避できるんじゃないかという流れの中で、本当に彼ららしさだけで出来た最高の楽曲を見せてくれる。
 まさに最強の「TWENTY ONE」です。

”来年どうするの?”

 そんなわけで「俺バン」はテーマ・パフォーマンス・楽曲などなど舞台を構成している全てから、「今」この瞬間に出せる全力の輝きを大事にする、少年忍者らしさを感じられる演目なのですが、冒頭ふれたように来年以降も永続的に続けられる演目ではないのも事実。もちろん来年も同じことをやろうと思えばできるでしょうが、もはや「今」ではなくなるし、それを少年忍者が選ぶことはないでしょう。
 そんな内容から、今年かぎりで演舞場松竹座御園座での公演が終わってしまうかも、なんて不安がよぎるかもしれません。
 ですが、「僕らの未来に不安なんてないさ(中略)僕らは負けない、君といれば」と歌う彼らです。そんな不安なんて吹き飛ばしてくれる最高で最強の舞台を見せてくれるはずです。

 不安を語るよりは、まずは「俺バン」が無事に大千穐楽を迎えられて、わっしょいCAMPそしてサマステで更なる最高を更新してくれる少年忍者を応援したいところですね。

”最後に”

 今回あえて個人個人については触れていないので、まだまだ語りたいことがたくさんあります。名古屋公演が終わるころまでにまとめられたら…

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