「星の王子さま」を読んで

小さな王子さまが大好きなきみたちにとっても、僕にとっても、誰の知らないどこかで、僕らの知らないヒツジが、バラを一輪食べたか食べないかで、世界のなにもかもが、これまでとはすっかり変わってしまうのだから…
「星の王子さま」p.142 サン=テグジュペリ 河野万里子訳

なんて思いやりのある、優しい一文なんだろう。でも、きっとこれはものすごく当たり前のことだ。

いくら自分が幸せでも楽しくても、大事な誰かが傷ついていたり不幸であったら、自分が見てる世界はすっかり変わってしまう。でも、今なんかは特に大変な世の中で、他人のことなんて気にしている余裕がなくて、自分のことで精一杯だ。「自分だけなら…」。そんな言葉が脳裏にチラつく日常だ。

星の王子さまは、別れの日が近づくと「僕」にこう言った。

「きみが星空を見あげると、そのどれかひとつにぼくが住んでるから、そのどれかひとつでぼくが笑っているから、きみには星という星が、全部笑っているみたいになるってこと。きみには笑う星々をあげるんだ!」

ファンタジック。でも、そこには「王子さま」の優しさと思いやりが詰まっている。というのも、ここで王子さまが言いたかったのは、何も自分のことを忘れないで欲しいということではない。「僕」を悲しませないようにする、決して夜空から消えることのない星を使った一種の約束のようだった。

私は、最後の別れのシーンを読み、「星の王子さま」は誰かにとって大切な人。どんな人にも、一人はいる大切な人のメタファーではないかと都合の良い解釈をした。


ふと、夜空を見上げた時、目に焼き付く星々は笑っているだろうか?

もし、霞んで見えたりしたら、それはきっと、今、大切な誰かが泣いていることを知らせてくれているのかもしれない。

「たいせつなことは、目では見えない…」

でも、この作品は、物語を使って、また、みんなの心の中にいる「星の王子さま」に語らせることで、「たいせつなこと」に気づかせるのだ。

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