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【第49回】「コンテクストデザイン入門」

第一線で活躍しているクリエイターをゲストに迎え、クリエイティブのヒントを探るトークセミナーシリーズ「CREATORS FILE」。

第49回 クリエイティブナイト
ゲスト:渡邉康太郎氏(Takram コンテクストデザイナー、慶應義塾大学SFC特別招聘教授)

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今回は、「ISSEY MIYAKE」の花と手紙のギフト「FLORIOGRAPHY」や、「とらや」との未来の和菓子「ひとひ」などを手掛けた、Takram コンテクストデザイナーの渡邉康太郎氏を迎え、コンテクストデザインの考え方や視点などをお話いただきました。

Takramの仕事

渡邉:Takramは、デザインとイノベーションをテーマにした会社です。メンバーは50人くらいで、東京・ロンドン・ニューヨークと上海を拠点に活動しています。文化背景や興味もさまざまで、情報技術系やアート系、ビジネス系など専門もいろいろ。ややクレイジーで、アンコントローラブルなメンバーが集まっています(笑)。

西澤:ははは!

渡邉:人工衛星から和菓子まで、幅広いジャンルの仕事に携わっています。和菓子の老舗「とらや」と一緒に作った”未来の和菓子”「ひとひ」から、羽田空港のラウンジのデザイン、ビッグデータ可視化の仕事や、一冊だけの本屋「森岡書店」の立ち上げ・ブランディングまで、多岐にわたります。

西澤:おお~。

渡邉:僕自身がブランディング系のお仕事をする時にキーワードにしているのは「To help people ”verbalise” implicit thoughts(暗黙的な知の『言語化を助ける』こと)」。つまり、その人にとっては当たり前すぎて敢えて言葉にできていなかったことを、いかに言葉にして、世に出していくか。

渡邉:スライドの左半分が暗黙的、右半分が明示的だとすると、左に位置するモヤっとした思想やDNAを整理しながら、可視化したり言語化したりするお手伝いをしています。

西澤:うん、うん。

渡邉:例えば、日本経済新聞社との仕事の場合。最終的なアウトプットとしては、ブランドのフィロソフィやロゴのアップデートなどです。プロセスとしては、グループ傘下のイギリスの経済誌FT編集長から日経の紙面を印刷している工場の職人の方まで、世界各地の日経に携わる人たちに話を聞きながら、彼らが抱いている気持ちを引き出したり、社内外に対してのメッセージを聞いたりするところからはじめました。当然、僕たちよりも彼らのほうが会社について詳しいわけですが、彼らにとって当たり前のことが、他者にとっては意外だということは多々あります。そうした文化面の可視化や言語化をいかにサポートできるかは、大事なテーマです。

西澤:なるほど。

渡邉:「デザインの力の一つは『人々の言語化プロセスを支える』こと」という意識を持っています。「何か伝えたいことがある」という人がいた場合、その言語化の「触媒」として働くのがデザイナーのひとつの在り方だと思っています。


コンテクストデザインの定義

渡邉:「コンテクストデザインって、組織やサービスのコンテクストを言語化する仕事なんでしょう?」と言われることがよくあります。つまり僕の仕事は、世の中では物事の意味づけを担う仕事だと見られやすい。そうした側面もありますが、「コンテクスト」のラテン語の語源をたどると「con(ともに)-texere(編む)」という言葉にたどり着きます。

西澤:ほう。興味深い!

渡邉:「con(com)」といいうのは「一緒に」という意味です。「Company」は「com(ともに)」「pan(パン)」を分かち合う仲間という意味なんです。

西澤:いい意味ですね。

渡邉:「texere(編む)」というのは「textile(織物、布地)」と語源は一緒です。だから、「ともに編む」という意味を込めています。僕の掲げる「コンテクストデザイン」においては、作り手側が込めた意味は確かに大事ですが、使い手側が自分なりの解釈をしたり、誤読をしたりもするのも等しく重要だと考えています。

西澤:誤読!

渡邉:間違った解釈やほころびから、新しいものが生まれるかもしれない。その間違いさえも許容するデザインがあったらいいなと。『コンテクストデザイン』という本で書いた定義としては「一人ひとりからそれぞれの『ものがたり』が生まれるような『ものづくり』の取り組みや現象を指す。読み手を書き手に、消費者を創作者に変えることを企図する」とか小難しく言っております(笑)。

西澤:いいですね。「読み手を書き手に、消費者を創作者に」で、みんなが作り手だということがわかる。

渡邉:仕事をしていると「アーティストじゃないから」「デザイナーじゃないから」と謙遜する方がよくいらっしゃいますが、あらゆる方が創造的なエンジンを携えているけど、それを駆動できていない。もともと誰しもに備わっている力を、遠慮せず出すことができればいいと、僕は思います。だから、デザイナーの仕事というのは、片方では自らの力を発揮すること。もう方腕は、自分の周りにいる全員のクリエイティビティの発露を手助けすることだと考えています。自分が決めた唯一の答えを追うのではなく、他者と「ともに編む」ことで生まれる複数の答えがあるほうが、世の中が楽しくなる。


先人が残したコンテクストデザイン

渡邉:先日、京都の竜安寺に行ってきました。今は観光客が少なく、無人の石庭を見ることができました。この石庭がおもしろいのは、作者と鑑賞者がいて初めて作品が成立する点です。波紋や水は石で表現されているけど、水そのものはない。見ている人がプロジェクションマッピングをするように、自分の想像力を投影しながら、目の前に波や水面を見出していることになります。これは、庭を作った人と見る人のクリエイティビティが、両方高い状態にあって初めて完成する形式です。つまり、究極のコンテクストデザインだと言えます。あらゆるデザインが、この石庭のような形式だと楽しいなと思います。



\ 引き続き、渡邉さんのコンテクストデザインの考え方に迫ります /
>> この続きは、エイトブランディングデザインWEBサイトで全文無料公開中。『【コンテクストデザイン入門】クリエイティブナイト第49回[ 前編 ]』へ

「CREATORS FILE」をまとめて見るには、こちら(外部サイト)

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