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不妊治療から妊娠に至るまで

はじめに

こちらでは、初めての妊娠(32歳)・流産・不妊治療と退職を経て出産(36歳)を3ヶ月後に控えるまでの私の約4年間について、正確には初経から今までですけど、出来事と心情を時系列で綴っています。自分のための備忘録であると同時に、同じような状況の方に、少しでも参考になればいいなと思っています。

私は現在専業主婦の35歳、もうすぐ36歳。ここに至るまでは、紆余曲折もなく平和で平凡な道のりでしたが、それでも私なりにいろいろありました。「将来の夢はお嫁さん」というような女の子ではなかったけど、「将来の夢はお母さん」というような女の子でした。

思春期

私は初経を迎えたころから月経不順だった。まぁ初経を迎えるころは多くの少女が不順なのかもしれないけど、私の場合は「少量の出血が延々と続く」状態だった。
心配した母は、近くの婦人科Aに連れていってくれた。婦人科Aのおじいちゃん先生は、「年齢的にホルモンバランスが未熟であること」を主な原因に挙げながら、「何か悩みはない?」と聞いてきた。
チョンチョンに尖っていた思春期の私は、『なぜ今日初めて会ったおじいちゃんに悩みを打ち明けなければならないんだ』と反発したことを覚えている。『ハッキリした原因が分からないからストレスとか言ってごまかすんだ』とも思った。完全に不信感を抱いた。

まぁそんなわけで、私が人生で初めて受診した婦人科Aは、思春期の私に反発心を抱くだけ抱かして終わった。子ども心に、これは何だったんだと思った。しかし今となっては、思春期という多感な時期に「婦人科に行く」という経験ができたことが、そのあとの通院に抵抗がなくなる大きな要因になったと思う。大人になっても「婦人科に行く」のに抵抗がある女性は多いです。

大学生

私は「思春期」というものがいつ終わるかも分からず(今も知らない)、ホルモンバランスがいつ成熟するのかも分からないまま大学生になった。生理がダラダラと続くことはなくなっていたが、周期なんてものはなく、まぁ30~40日くらいには来るかな、という感じだった。
それに問題意識を持っていなかったことが何より問題だったと思うが、そのころようやく、「周囲の女子たちには安定した『生理周期』が存在する」ということを知った。当時付き合っていた彼氏に「一回診てもらったほうが俺も安心だよ」と言われたこともあって、久々に婦人科を受診することにした。

今度は大学近くの婦人科Bを訪れた。30~40歳くらいの女医さんだったが、「生理不順で心配だ」と相談すると、「そんなこと言われても」と言葉にはせずとも顔に書いてくれた。いわく「今すぐ子どもがほしいというわけでない限り問題ない」ということで、その道のプロがそう言うなら、未婚学生の私は「そうですか」とスゴスゴ帰るしかなかった。

婦人科Bを受診して得られたものはなにもなかったが、とにかく話しにくい生理の話題をしてくれた友人と、受診を勧めてくれた彼氏には本当に感謝している。

社会人~新婚

晴れて社会人となった私は、上記の彼氏とは別れてしまったが、それなりの時間を経て彼氏(ゆくゆく夫)ができた。相変わらず生理不順だった未婚の私は、「30過ぎてホルモンバランスが未熟だったら一生未熟じゃない?」と気が付き、自分の体は異常であると確信していた。
たまたま一人暮らしをしていた部屋の向かいに女医さんが婦人科を開業することを知り、自主的に測り続けていたガタガタの基礎体温表を握りしめて門扉を叩いた。その婦人科Cでは、初めて話を聞いてもらえた気がした。
「いますぐ子どもがほしいわけではないが、いつかは、と考えているし、とにかく今の状態が不安」という心情を共有してくれた先生は、「別に焦らなくてもいいけど」と前置きしたうえで、

・引き続き基礎体温を測って自分の体のリズムを知ること
・漢方を飲んで体調改善を試みること

を提案してくれた。初めて具体的な方針をくれた先生に感激した私は、月に1回の通院生活を開始した。
数ヶ月して、相変わらず生理周期は不順ではあったが、ガタガタだった基礎体温もそれなりに2層に分かれるようになってきた。「これなら妊娠できそうね」とシレッと言われて、やっぱり前のままだったらいけなかったんだと知った。それをハッキリ言わないのは優しさなのか何なのか、とにかく私は自主的に通院することで「『子どもを持つ未来』を守れたのだ」と安堵したと同時に、「今までの病院では守ってくれなかったな」としみじみと思った。
ちなみにこの婦人科Cは、どちらかというと更年期で悩む女性を主に対象にしたいようで、私は完全に場違い女だったが、とにかく好感を持っていたので通い続けた。

(↑測り続けた基礎体温表)

結婚して引越してからも、私は会社の近くだった婦人科Cに通い続けた。ある日、いつものように受診した際、先生は基礎体温表を見るや否や、「高温期が長い、妊娠してない?」と言い出した。めでたく2層に分かれたとは言え、低温期から高温期に移行する傾きはダラッとしたものだったので、「低温期〇日、高温期〇日」とか数えられるものではなく、私から見たらいつも通りのグラフだった。
そんなばかなと思いながら尿を提出すると、ものの数分で陽性反応が確認され、エコーでは胎嚢が見えた。結婚して1年数ヶ月、32歳。まさかの出来事だった。やはりプロは違うと思ったし、ネットに書かれている妊娠初期症状なんてまるでなかった。

↑妊娠発覚時の基礎体温。
右下の「通院シール」1枚目の日に指摘。

しかし夢はそう簡単に叶うものではないらしく、心拍を確認することができないまま、その奇跡は私の子宮から去っていった。

「2回生理が来たら、またがんばって」と言われた私は、3度目の生理を迎えることなく再び妊娠した。今度はそれなりにタイミングを計って営んだし、家で妊娠検査薬を使って確認した。計画して、狙って、一回で妊娠できた。

そしてデジャヴか?というように、その計画的な奇跡も、私の子宮から去っていった。私は33歳になった。

先生によると、この年齢で初期流産が2回連続するのは極低確率らしい。これは何か原因があるのでは、と、大学病院を紹介された。我々夫婦は言われるがまま、大学病院を訪ね、4~5時間待ちたくさんの血液を提出した。結果、我々夫婦の染色体に異常は見られなかった。

不妊治療前期

大した覚悟もできていないまま、あれよあれよという間にその大学病院の婦人科Dで不妊治療が始まった。私は「黄体ホルモン不全」ということで、授精してもその妊娠を継続するだけのホルモンが足りていないという診断だった。
それからはとにかく雑に、漢方とビタミン剤を継続すると並行してクロミッドという排卵誘発剤を処方され、「この日からクロミッド飲み始めて!この日から3日間くらい毎日エッチして!この日に生理が来なかったら受診して!生理が来たらこの日に受診して!」と言われた。処方箋は毎回間違っていて、薬剤師さんを困らせた。
ここは家からも会社からも絶妙な距離で、大きな大学病院だけに外来は午前中だけ、担当の先生の診察は週に1回。毎回半休を取得して通院した。

受診して2~3ヶ月、私は生理前に死ぬかと思うレベルの頭痛に苦しむようになった。初めは勤務中に急に痛くなり、そのまま脳神経外科に倒れこんでMRIを撮ってもらうほどだった(診察結果は「肩こり」だった。どいつもこいつも、と思った)。生理前1~2日は仕事を休まざるを得なくなり、生理の量もおりものの量も激減し、夫婦生活も痛くて愛情どころではなかった。

私は医学分野については素人なので、ネットで検索することを自粛していた。あふれかえる情報の真偽を確かめられないなら、目の前のプロ=先生を信じる方が建設的だと思っていた。しかし今回ばかりはそうは言ってられず、体調変化の唯一の心当たり「クロミッド」について検索すると、なるほど今の私の状態が副作用として書かれていた。
私はプロに説明を求め、薬を変えてもらおうとしたが、なぜかそれは認められなかった。私は納得できない説明をされ、毎月の瀕死レベルの頭痛と減り続ける有休、溜まる仕事に心底疲れ果てていた。我々夫婦は、一旦不妊治療を休憩することにした。治療の休憩を決心したのが6月頃で、キリもいいので半年休んで年明けから再開しよう、と話していた。休憩期間中に、私は34歳になった。

不妊治療中期

治療をやめて2ヶ月もすると、瀕死レベルの頭痛はなくなり、私は人並みの生活を送れるようになった。そうすると「治療してないのに子どもなんてできるわけない!」と毎月の生理のたびに異常に焦るようになった。狙って一回で妊娠した過去なんて幻みたいだった。
この焦りによるストレスに居てもたってもいられず、結局予定より早い12月に、家からほど近いレディースクリニックEで不妊治療を再開することにした。ここなら定時退社すれば有休を消費することなく通院できるし、通院ストレスが一つ減った。

今までの経緯を話し、「問題ないと思うけど」と言われながらも卵管造影とフーナーテストを行った。いずれも異常なし。自然妊娠した実績もあるのでタイミング法を勧められたが、タイミング法はそれはそれでストレスがある(残業地獄夫と残業地獄妻に計れるタイミングなどない)ので、我々は比較的費用は嵩むが人工授精を選択した。
結果的に、夫の精子の状態も診てもらえたので、これはいい選択だった。もちろん頭痛の元となったクロミッドではなく、セキソビットとルトラールを処方してもらった。

このクリニックEは、いわゆる担当医制ではなく、自分の体の周期に合わせての通院だったので、いよいよ卵胞のサイズによって「明日来てください」宣告を受けることになった。一般的な「不妊治療」ってこういうもんだと覚悟はしていたつもりだったが、いざとなると仕事との調節が困難だった。もちろん上司に状況を報告しないわけにもいかず、人事部とも相談して、会社のあらゆる制度を利用させてもらった。

しかし定時退社すれば診察時間には間に合うものの、定時退社するための調整が必要だし、出張にも行けない。通院の予定もしっかり立てられないので、結局「この1~2週間は出張行けません」と、月に1回は宣言せねばらならない。体調を崩しているわけでもないし、実際出張に行けないのはそのうちの1~2日だし、私の代わりに出張対応してくれる同僚に頭を下げ続けた。結果、深夜残業と定時退社を繰り返す日々となった。こんな状況で、「排卵しませんね」と言われても、「でしょうね」としか思えなかった。

退職

出張先で残業をしていたとき、親友から連絡があった。第二子の妊娠報告だった。彼女はその1ヶ月ちょっと前に「(第一子の出産後)初めて生理来た!」と慌てていた。私は出張先の工場の休憩室で、ぐったりしながらコーヒーを買ったところだった。
終電に揺られる帰り道、ばかでかい荷物に顔をうずめて散々泣いた。33歳の素面の女性が、終電で泣いている光景はホラーだと思う。思うけど、仕方なかった。帰宅して、夫に「しんどい」と告げた。ぼろぼろの妻を見た夫は何を感じただろう。怖くてまだ聞けていない。

さすがに「しんどい!もういやだ!やってられん!」と泣きわめいて退職するわけにもいかず、私なりに何がつらくて「やってられん」のか考えた。

1. 仕事しながらの不妊治療に意味が見いだせない
2. 妊娠できても、また流産してしまったらと思うと怖い
3. 自分がやるべき仕事ができない

大きくはこの3つだった。もう少し平たく言うと、「やりがいを感じる仕事と、不妊治療の両立が難しい」である。社内での仕事を選ばなければ続けられたと思う。しかし私たちはその選択をしなかった。
会社(直属の上司、所属組織の役員、人事、果ては社長)は私の話を聞き、様々な提案をしてくれた。でも結局、私の心情的に上記1~3を解決できないとして、私は円満退職することになった。上司も人事も、いつか戻ってきて、と言ってくれて、ありがたかった。

不妊治療後期

最終出勤日を無事に終えた私は、さっそく有名なクリニックFに向かった。市内のクリニックではあるが、県下のみならず隣県からも助けを求める人が多い有名なところで、人気すぎる+自宅・会社から遠いことから、仕事しながらの通院は難しいと諦めていたところだった。
私はこれまでの経緯、治療歴、検査結果、基礎体温表をどっさり持ってカウンセリングに挑んだ。相変わらず過去の「自然妊娠」の実績があるため、「人工授精」を希望した。ここまできても、体外受精にステップアップする覚悟ができなかった。
まだこんなにやってないことがあるのかと思うほど、血液検査で新しい項目を検査した。不妊の原因「かもしれない」数値がいくつか見つかり、それを是正するための薬を処方してもらった。

しかし卵胞はたくさんできるものの、排卵に至らない周期も多く、費やす時間に対して実際人工授精にトライできる回数は少なかった。排卵に至らず、「今回は見送りましょう」と人工的に生理を迎えるときの虚しさはなかなかのレベルだった。35歳だった。

排卵しない理由が不明確なまま治療を継続することに不安になるが、その理由が明確にならないことだけが明確だった。先生にポツンと「体外受精すれば何か変わりますか」と漏らすと、「サポートできる部分は大きいと思います」と返ってきた。「主人と相談しますが、前向きに検討します。」と告げた。我々夫婦は、その周期のチャレンジが上手くいかなかったら体外受精にしようと決めた。

結局、体外受精をすることになり、幸運なことに1回の採卵と1回の移植で妊娠陽性反応が出た。その奇跡は私の子宮に留まり、現在妊娠7ヶ月。あと3ヶ月ほどで、36歳になってから出産予定である。

おわりに

初めて妊娠したのが2016年2月で32歳。出産予定は2019年12月の36歳。ここまで、覚悟していたより時間と費用を費やしたが、一連の不妊治療に関してあまり悔いはない。もっと早く体外受精していればもっと早く妊娠できたかもしれないけど、それでも私はやるべきときにやることをやったな、と思っているし、それが一番良かったなとも思う。
各病院でいろんな診断を受けいろんな経験をし、それぞれいろいろ考えた。「どれだけの期間何をしていくら費やしたか」、「なかなか体外受精に踏み切れなかった理由」はまた別記事でまとめたいと考えている。具体的なことを知りたい人はたくさんいると思うし、私も知りたかった。


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