見出し画像

ほしいものを手に入れられなかった人へ

ほしいものを手に入れた人と、手に入らなかった人がいて、いちばんほしいものが手に入らなかった人は、もう他に欲しくなくなってしまう
坂元裕二脚本「初恋の悪魔」日本テレビ

摘木星砂(松岡茉優)が言った台詞が、心の奥深いところに刺さる。グサリ、と音が聞こえるぐらい。痛かった。「ああ、また坂元さんにやられた」


この言葉を聞いて、最初に思い浮かんだのは「いちばんほしいけど手に入らなかったもの」。「諦める」「我慢する」、当たり前にやっていた行動の理由が見つかった。

ほしいものが手に入らなかったら、手の中にあるもので満足するように、自分を説得する。次第に、欲しがることをやめていった。そうやって私は大人になった。

手帳が好きな私は「Wish List」のページを埋めることができない。「やりたいことリスト」を作ってみたけど、見返してみると他人事のようで何もワクワクしない。本当にやりたいこと、ほしいものは何もないのかもしれないと考えていた。

でも、そうではなかった。私のほしいものは昔から変わらなくて、手に入れられなかったものだった。それがわかった今は、その他にほしいものを考えるようになった。

2番目にほしいものから書き出せば良い。1番以外のもは全部手に入れるつもりで生きればいい。そう気付けただけで、心が軽くなった。有難い。

「いちばんほしいものを手に入れられなかった」ことに気がつけたら、何かが変わる。一歩踏み出せる。お兄さんと電話した悠日のように。


『大豆田とわ子と三人の元夫』では中村慎森、『カルテット』では家森諭高、『最高の離婚』は濱崎光生のように次々と出てくる捻くれた理屈が好き。捻くれた理屈のオンパレードを聞いてると、坂元裕二さんの脚本だ!と感じる。

それと同じくらい好きなのが、本質に刺さる言葉。間違ったことは言ってない、でも正論とも言えない。人間だからやってしまう行動や曖昧な感情をそのまま形にしたような言葉。

頑張れば言葉にできたかもしれないけど、頑張らなかった部分。見て見ぬふりをした醜い部分。人には知られたくない恥ずかしい部分。そのまま言葉にされたら驚くでしょ。「私のこと言ってるの?」「なんで分かるの?」そんことないのに。

また今日も、言葉に助けられている。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?