男子自由型∞m敗者復活戦

応援してくれているみんなの価値をみとめ、僕が自分に克つ ためのnoteです。 自分…

男子自由型∞m敗者復活戦

応援してくれているみんなの価値をみとめ、僕が自分に克つ ためのnoteです。 自分へのリベンジマッチ

最近の記事

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1 ロードレース大会の日、Tは5キロの折り返し地点を回ると脇腹が痛くなり歩きはじめた。はじめのうち全校生徒中十番にいたTを後ろにいた生徒たちが次々と追い越してく。Tは頭の中で【水戸黄門】の人生落ありゃ苦もあるさという詩を思い起こしていた。  Tは疲れるとすぐに歩く。母親に言わせると、あんたは飽き性ですぐサボるということだった。体育教師からは、おまえのようないい加減な人間はまともな大人にはならないぞと言われていた。  ゆっくり歩いていると、汗をかいて走っている奴らを憎く思った。

    • 22夜の話

      【ヤモリの燻製】へんてこ博士のジブリ考察 『意外だね』、と言われると嬉しい。恥ずかしいことを知られたときだって、その台詞を言われると嬉しいくらいなのだ。 サプライズをしてやった気分は、か・い・か・ん。  昔のアニメでみたシーン。着物を着た女が胸元からヤモリの燻製を取り出して、男の眼の前でぷらぷら振って。 「ほら、これが欲しいんだろ?」と言ったシーン。どことなくエロく印象に残っている。実はこれはジブリの映画のなかに出てくる。映画のタイトルは『千と千尋の神隠し』。懐にヤモリの燻製

      • 21夜の話

        タイトル      書く道具  このところスマホで文章を書いていた。一気呵成に書いたあと読み返すと入力ミスが多いことに気づく。フリック入力が不完全なのと、親指が画面の端まで届かないからだ。こうしてPCで文章を書いていると、頭が追いつかないほど速く入力できるし、入力ミスも少ない。でもだからといってスマホ入力がPCに劣っているといいたいわけではない。スマホにはスマホのいいところがあるのだ。  ノンストップで後ろを振り返らずに書くことができるという利点。スマホはPCと比較して画

        • 20夜の話

          タイトル     暴かれた世界  夜な夜なPCフォルダの墓を暴く僕は文学的ネクロフィリアだ。死体を貪ったり、きれいにして、愛でるのだ。過去に書いた短編を継ぎ接ぎして化け物を創ろうとしている僕はさながらフランケンシュタイン博士でもある。  

          19夜の話

          タイトル  伊達メガネをかけた友達   Sは女を知っていた。姉妹のいる家庭で育ったせいか女が喜ぶような振る舞いを自然と身につけてしまったんだとSは言っていた。ある時期Sを毎週末アパートに泊まらせていた。Sは失業中で帰る場所がなかったし、借金に追われていた。僕はSに同情して頻繁にアパートに泊まらせていたわけではない。僕自身、他に遊び相手がいなかったのだ。僕は友達に飢えていた。その日、僕らはビールを飲みながら過去の話をしていた。Sとは高校の同級だったから気心は知れていた。ふたり

          18夜の話

          タイトル     怒りの鉄拳  仕事をしていると誰かが怒られる光景に遭遇する。もっとも僕の努める会社では理由も無く怒られることはない。上司は怒られる社員に対して改善してほしい事があるという場合がほとんどだ。たとえば、思いやりのないシフトを組んだ社員に対して、やるべきことに手を抜く社員に対して。上司は伝えるための手段として怒るという態度を選んでいるわけだが、怒って伝えるのは案外難しい。冷静に話をしても伝わらないような事柄を怒鳴って伝えようとしたら絶対に伝わらないだろう。怒る側

          17夜の話

          タイトル     kocorono    僕はずっと彼女の鷲鼻が好きだったのだけれど、本人はその賢そうな鼻を好きではなかったみたいだ。彼女のことは出会ったときからずっと好きだったけれど、彼女は1度も僕のことを好きだとは思ってなかった。さみしいことだが、感傷的な話をしたいわけではない。あのとき僕はひどく若くほとんどなにも分かっていなかった。自分が心の底から求めているものすら……。   祖母は東京でホステスをやっていたのと話す彼女は、たしかに目を引く美人であの冬、【魔の山】と

          16夜の話

          タイトル     天使がふたり  どちらか1人にしか  好きって言っちゃいけない  そんなのおかしいよ   どっちも好きなんでしょう  目ざとい母は  からかうように言う  僕はLの方が好きかもしれない  そう言ったが  やっぱり僕はRも好きみたいだ  決められない  優しいねとよくいわれるが  どっちつかずな僕は   ずるいのかな  Lから一緒に帰ろうよと誘われた  その日は校庭で一人になるまで  遊んだ Lの視線がなくなるまで   Rのこ

          15夜の話

          タイトル     へんてこ博士  私は絶望している。かつて天才と謳われた外科医の私は、手術に失敗して実の孫を死なせてしまったのだ。以来、私は膨大な書物に囲まれた家に閉じ籠もり、知識の蒐集に取り憑かれている。希望があったときは書物を読むのは生活の一部に過ぎなかったが、絶望を味わいながらする読書は文字通り人生のすべてだ。  風を感じたのはいつのことだろう。ホールの玄関ドアの前に知らない子供が立っていた。ちょうど死んだ孫と同じくらいの背格好だ。私は目をこすり幻を見ているのではな

          13夜の話

          タイトル     夢を売る男  朝、ピアノの蓋に薄っすらと埃が積もっているのに気づいたのはピアニストになる訓練に耐えられなくなり放棄した2週間後のことだった。  背後で電話がなる。恋人からで三十才の誕生日のお祝いをねだられた。彼女とは婚約を考えていたが、売れない音楽家には金がなく金策にはいつも手を焼いている。 「ねえ、町外れの洋館に変な人がいるの」彼女は電話の向こうで楽しそうに言った。 「あの豪邸の主は見たことがないな」 「珍しいものなら、なんでも買い取ってくれるの

          14夜の話

          タイトル    戦わずして克つ  高校時代に読んだ漫画の中で印象に残っているのは、麻雀漫画とこちら葛飾区亀有公園前派出所である。麻雀漫画を高校生のうちに何百冊も繰り返し読んだ人はそれほど多くはないかもしれないが、麻雀漫画には人間ドラマや教訓が多分に含まれていたと思う。カイジなどの福本伸行の作品群やカケグルイやなどの所謂ギャンブル漫画の範疇(小さなジャンル?)に入る麻雀漫画であるが、麻雀という題材の複雑さのせいか、聡明なイメージの主人公が多く好感を持った。  『東大を出たけ

          12夜の話

          タイトル througf your reality   駅前通りにある飲食店ども。Mハンバーガー、Y牛丼、Jラーメン、T油そば、どいつもこいつもおぞましいほど安価で、満足度高め、割にうまい。飯テロリスト。テロ。テロ。テロリスト。あんなもの食って平気な顔で喜ぶ奴らは、知らず知らずのうちに誰かに踊らされているのではないか。貧困層はファストフードを好む。バカな奴ら。批判精神。そうやって彼らを見下して、自分も誰かに踊らされているとは知らずに、俺は喫煙者に割り当てられた非常に狭いスペ

          11夜の話

          タイトル     暗渠と悪童  幼いころSとTが玩具の取り合いで喧嘩をすると、父親はひどく怒った。ある時はひどく尻を打った。それ以来2人はものの取り合いをせず、団地でも評判のいい兄弟になった。  SとTはよく似ていた。顔つきはもちろん、体格や、考え方、物の見方までそっくりだった。双子のような特異な例を除いて、似た者同士は互いを敵視してしまいがちだがSとTの場合は違った。ふたりは兄弟であることに強い自覚を持って互いを尊重しあっていた。  仮初めの調和が崩れるのはあの夏。

          10夜の話

          タイトル   アドバイスと予言  2年間毎日、書けるだけの文章を垂れ流してごらん。君なら、『おれってすげえじゃん』って思えるようになるよ。  大学生のころ、はじめての小説をかきあげたばかりの僕にとって、プロの小説家は憧れの存在だった。これまでの人生で、商業出版の経験のある人には3人出会ったことがあるが、彼らは揃って僕にシンプルなアドバイスを授けてくれた。 『とにかくもっと沢山書くことだ』彼らはいった。  一人目の老作家は、僕の原稿を読んで才気を感じると言った。その小説

          9夜の話

          タイトル    ぶっ生き返すNOTE  思春期に少年から大人に変わる。   中学2年、俺は思春期真っ盛りで、ロック・バンドに感化されていた。はじめて買ったCDはeastern youthの「地球の裏から風が吹く」だった。流石にイースタンユースは大人のロックすぎ、泥臭い感じがいまいち刺さらなかったが、次に買ったマキシマム・ザ・ホルモンというバンドはぶっ飛んでいた。『ぶっ生き返す』という伝説級のアルバムの中に『絶望ビリー』という曲が収録されていて、当時少年ジャンプで連載中の大

          8夜の話

          タイトル     文学の敵  町で本を読んでいる人をほとんど見かけなくなりましたね。そりゃあいいことだ、小説などの夢うつつや戯言の類なんてさっさと卒業してさ、世の中に揉まれなくちゃね。売れないものは意味ないですからね。小説は虫の息さ、いまに現代詩のようなポジションに落ち着くんじゃないかな。出版不況なんだ、実用本だって売れないんだよ。なんで小説家なんてやろうと思うかな? ナンセンスだぜ。  うっせー、うっせー、うっせーわってんだよ。  俺たちの自由だろが……  でも俺は