「海外転出届」に翻弄された話【台湾ワーホリ】

ワーキングホリデーや長期の語学留学の際、提出が求められるのが「海外転出届」である。

その名の通り、提出することで日本の居住地からいなくなったことになるため、1年以上の海外滞在の際には提出が求められる。1年未満の滞在でも提出できるため、私のように台湾へのワーキングホリデー(滞在可能期間最大360日)でも提出ができる。

さて、この海外転出届であるが、提出する最大のメリットは「住民税の負担がなくなる」ことである。

海外転出届を出すと住民票が「除票」扱いとなり、その地域に居住していないため住民税が課税されない(ただしその年の1月1日に日本に住民票がある場合は、負担が生じる)。

住民票が除票になると、住民票に紐付いている国民年金・国民健康保険の支払いを停止することができる(もちろん引き続き支払うことも可能)。

つまりワーキングホリデーや長期語学留学の際には、海外転出届を提出することで、数十万円単位の節約が可能となるのである。

上記は留学エージェントやワーホリ・語学留学経験者のブログなどにも記載があるし、実際私も台湾ワーホリについて調べたときに複数目にした。

ところがこの「海外転出届」、ワーキングホリデーでは提出できない可能性があることをご存じだろうか。

以下に私の実例を紹介したい。実例を読んでいただくことで、私がいかにギリギリなワーホリ準備をしたかおわかりいただけるだろう・・・。

まず私は所属していた会社を、2023年12月20日で退職した。渡航日は2023年12月27日。台湾ワーホリの期間は360日の予定。海外滞在は1年未満だが、節約のために海外転出届を提出することにしていた。2024年1月1日時点では日本にいないから、6月支払い分からの住民税は請求されない、と思っていた。
※2023年の住民税は課税されるので、2024年5月支払い分までは請求がある。

そこで渡航日前日2023年12月26日、市役所に海外転出届を出しに行こうと思い、市のHPを確認すると・・・。

「ワーキングホリデーは観光ビザの1種であるため、海外滞在期間に関わらず、住民票はそのまま据え置き、住民税も免責されません」

との記載があるではないか!

慌てて市役所に出向き、税務課を訪問。事の次第を説明すると、市の担当者も必死で調べてくれた。

「市の見解としては、(HPにあるように)ワーキングホリデーでは住民税は課税されます。また海外転出届を提出しても、元々(ワーホリでなくても)1年以上海外に滞在した場合に住民税は免除されます」

とのことであった。
ワーホリでの住民税の扱いは市町村によって異なるのかを聞いたところ、

「ほかの地域でも同様の扱いです」

とのことであった。

驚いてTwitterでも調べてみると、どうやらほかにも同じようなことを言われた人もいるようだ。

海外転出届を提出できない(住民票を抜くことができない)=住民税が免除されない=年金・保険も払わないといけない。

つまり何十万ものお金がかかることになる。

血の気が引くとはこのことだ。ただでさえお金がないのに、計画外のお金が何十万もかかるとは!

今度は慌ててワーホリエージェントに連絡。上記について話してみると、

「今までワーホリで海外転出届を提出できないと言われたことはありません。何故その市町村でそのようなことを言われたのかわかりかねます。今は税務課にいらっしゃるのですよね?海外転出届の課に行って聞いてみてはどうでしょうか。こちらでも調べてみます」

そこで今度は戸籍担当の課へ電話で聞いてみると

「台湾?ワーキングホリデー?はい、海外転出届を提出できますよ」

拍子抜けである。

しかし海外転出届を出すにはパスポートが必要なようだし、パスポートにはワーホリビザがついているからそれを見たら却下されるのでは・・・。

そう思いながら市役所を再訪し海外転出届を提出。

結果、手続きの過程でパスポートを確認されることはなかった(市町村によります)。

結局どういうことなのか?

これは私の推測であり、責任は負えないのだが、

①税の観点では、ワーキングホリデーでの海外滞在は観光扱いとなり、住民票は抜かないように規定されている。

②しかし、海外転出届を扱う戸籍担当の課は海外渡航の際は転出届を出すことになっているから、提出されたら受理するし、むしろ海外に行くなら出してほしい。

③住民票が抜かれる。

④1/1に日本に住民票がなければ、税を担当する課は海外転出の理由までは把握していないから(届を出す際にワーホリであることを申告する欄もない)、住民税は課税されない。

こういうことではないかと思う。
結局、市町村よりも都道府県、もしくは国として、方針が定まっていないから、このような抜け穴のようなルールになっているのではないだろうか。

もちろんルールが厳格化されてワーホリでは住民税の支払いが生じるようになるとワーホリに行く人は少なくなるから、それもそれで大きな問題ではあるが。

【結論】ワーホリでも海外転出届は提出できる(自治体による)。ただし提出は自己責任で・・・。

【補足】
今回のワーホリにあたり、私は留学エージェントを利用した。留学エージェントからは事前に海外転出届を提出するようにという案内はなかった。
この騒動の際に確認したところ、「海外転出届は日本国内の手続きとなるため、(私が利用したエージェントは)会社として手続きをお願いすることはありません。当社はワーキングホリデーの際に海外転出届を提出することはできるという認識でしたし、多くの留学エージェントがそのような認識だと思います。しかし今回の件で行政の担当部署によって海外転出届の認識が異なることがわかりましたので、今後はそのことを周知徹底して参ります」とのことであった。

この記事の内容は筆者の経験に基づくものです。行政の認識や手続きは自治体によって異なります。事前にご確認いただくことを推奨します。記事によりいかなる被害などがあったとしても筆者は一切の責任を負いません。

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