情けない山野の現実❸

前回の廃棄物最終処分の話しは、まだ埋め立てるだけマシなのですが、ゴミの不法投棄の実態は唖然とします。

景勝地・観光地以外での里山の茂みを覗くと、缶・ペットボトル・プラスチックゴミの一つは必ず見つかるものです。
…一つくらいなら粗探しをしなくてもよいだろう…
と思われるかもしれませんが、清掃しなければ永久にその場所に残るのです。

私の過去の知人には、登山の下山時にゴミ拾いをする人が居ましたが、登山口が里山に違いほど、
「大量だね…と当然のように苦笑いしてました」

管理されていた昔の里山は、森(山)との境界線の趣きで整然とし、子供時代の私の目線では知恵を働かせて遊べる公園で、今で言うテーマパークの雰囲気でした。
対して奥山は冥界・異界に見え、足を踏み入れてはならない恐怖を感じる対象でした。

しかし放置された里山は草木の進出に飲み込まれ、人間の世界に侵攻する勢いがあります。
特に雪国ですから、雪に押し潰されたであろう苔むした住居跡や、損壊してゆく学校校舎跡を目にすると、撤退した人間を追撃して行く自然の逞(たくま)しさを感じます。
そのような状態だけならば自然の摂理なのですが、ほぼ不法投棄のゴミが散乱し、それもプラスチック・缶類や何故か芋類・玉葱などの農産物も捨てて有るのですよね。

実はこれが大問題なのです!

子供の頃の私が奥山を恐れたように、視点を変えて野生動物の目に置き換えると、里山には自分達(野生動物)を狩る(狩猟)怖い人間が生息支配している恐怖の地域なのですが、人間が里山を放棄した後に食料類が残っていたり、不定期に飲料品・食料品のゴミを捨てると、土地が草木に覆われると同時に進出して来る野生動物が、人間世界の食べ物の味を覚えてしまいます。
ジュース・菓子類・缶詰や農産物の味を覚えてしまった野生動物の行動がどうなるかご存知ですか?
美味なる味と香りに麻薬のように刺激され、我が身の命の危険を顧みずに人里に現れて食べ物を求めるのです。
そして一度人間の飲食物の味を覚えた野生動物は、余程の恐怖体験を受けない限り奥山に帰る事が出来ません。
現在、熊だけでなく多くの野生動物が人里に現れるのは、食糧難だけでなく飲食物類の不法投棄にも原因がある事でしょう。
過去に山間部を走行中、車窓から缶や袋込みを投げ棄てる場面を幾度か目撃しましたが、単なるゴミではなく、野生動物にすれば刺激物ともなります。

【山間部と言えば、観光地・景勝地以外で夜間の交通量が極端に少なく、容易に大型車が通行出来る山道で、ガードレールなどの障害物が無く、特に景色が良い訳でもないが谷が広がり、駐車帯では無いけれど未舗装の広場が在る場所に停車して谷を覗き込むと[確実に不法投棄の山]を見つけられます】

登り返せると判断した不法投棄場所に一度だけ降りた事がありまして、谷底に着くと凄い量が広がっていました。
一件の家を丸ごと捨てたような、柱・板・畳・本・缶・瓶・漆喰の壁などが散乱し、芋類・玉葱などの農産物が入った袋も散乱してました。
量から推測すると、幾度も投機されているのですね。
そのゴミの谷底の側を、綺麗な沢が流れている光景は悍(おぞ)ましい姿です。
この5km程下流には集落が存在し、釣り人の姿も見かけるのです。

当時、ゴミを踏み締め蹴り上げながら登り返し虚しく帰宅したのですが、車に積んであったフイルムカメラで撮影し、自治体に通報すべきでしたね…。
強烈な衝撃を受け、頭が回らなかったのです。
そこが異常な場所ではなく、探す気になれば先の条件の場所に立てば目にする嫌な光景です。


次回は、今でも悔やんでいる不法投棄と野生動物の実害をお話しします。

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