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【読書記録】2024年3月10日〜3月16日

 みなさんこんにちは、こんばんは、そしておはようございます。
 人生のB面に入ってから読書に目覚めたオヤジ、タルシル📖ヨムノスキーです。

 3月も中旬。
 春らしい陽気だなぁ。
 なーんて思っていたら急に寒くなったり、風の強い日が続いたり…。
 「そーいえば、規則的に天気が変わるこんな時期を『三寒四温』っていうんだっけ?」なーんて考えながら何気なく辞書を引いてみたら
なんと!
「晩秋から初春にかけての…」
って書いてある!!
 ええぇっ!?
 けっこう幅がある。
 てっきりこの時期だけの天候の変化を指す言葉だと、いまの今まで思ってました。
 知らんかった。

 また一つ賢くなったところで、早速今週出会った本たちをご紹介します。

【2024年3月10日〜3月16日に出会った本たち】

⚪️夢みる葦笛
 著者 上田早夕里

【内容紹介】
 ある日、街に現れたイソギンチャクのような頭を持つ奇妙な生物。不思議な曲を奏でるそれは、みるみる増殖していく。その美しい歌声は人々を魅了するが、一方で人間から大切な何かを奪い去ろうとしていた。(表題作)人と人あらざるもの、呪術と科学、過去と未来。様々な境界上を自在に飛翔し、「人間とは何か」を問う。収録作すべてが並々ならぬ傑作!奇跡の短篇集。

裏表紙より

【収録作品】
夢みる葦笛
眼神
完全なる脳髄
石繭
氷波
滑車の地
プテロス
楽園(パラディスス)
上海フランス租界祁斉路三二〇号
アステロイド・ツリーの彼方へ

【感想】
 ゴリゴリのSFから史実に少しSF要素を加えた話、そしてファンタジー色の強いものなどバラエティに富んだ11編の短編集。
 全体として「人間とは何か」「生きるとはどういうことか」といった哲学的なテーマが盛り込まれていたように感じます。もし人工知能を超える「人工知性」が誕生したら、それこそ理屈では説明がつかない矛盾だらけの「人間」という存在は真っ先に排除されてしまうのではないかと。
 粒揃いの11編の中であえてピックアップするならアンソロジー「SF JACK」にも収録されていた〝楽園〟。亡くなった人の人格を電脳上で再現するなんて辛すぎる。やっぱり「お別れの儀式」というのは、気持ちに整理をつける上でも大切なセレモニーなんだと思った次第です。

⚪️華竜の宮(上・下)
 著者 上田早夕里

【内容紹介】
 滅亡を前に、人類はどう生きるべきか? ベストSF2010第1位、日本SF大賞受賞 新世代日本SFの金字塔、ついに文庫化 地殻変動で陸地がほぼ水没しても人類は武器 を捨てなかった。さらなる絶望的な環境激変 は、この星のすべての命に対して決断を迫る

Amazon書誌情報より

【感想】
 舞台は海面上昇によりほとんどの陸地を失った未来。
人類は、わずかな陸地と人工の海上都市で暮らし最先端技術を操る陸上民と、漁をしながら生物船「魚舟」の上で暮らし自然と共に生きる海上民に分かれ…。
 そんな世界で翻弄される外交官の青澄、国籍を持たない海上民の長・ツキソメ、海上民でありながら陸上国・汎アジア連合政府の政治家のツェン・リーとその弟ツェン・タイホンを中心に、たくさんの国や組織の思惑が交錯します。
 そんな中上巻のラストに明かされるタイトルの謎。
 全体を通してみると確かにSFではあるのですが、各国の思惑が交錯する展開は、現代、特にコロナ禍の政治情勢をトレースしたようでむしろ政治小説といった印象でした。
 後半のツキソメ争奪戦は状況が目まぐるしく変化し、青澄外交官の苦しい決断や、汎アジア連合の海軍の所属となってからのあの人の苦悩と結末など、胸が詰まるようでした。
 SFというとどうしても「宇宙」を想像してしまう私にとって、この物語は貴重な読書体験となりました。

⚪️深紅の碑文(上・下)
 著者 上田早夕里

【内容紹介】(上巻)
 陸地の大部分が水没した25世紀。
人類は僅かな土地で暮らす陸上民と、生物船〈魚舟〉とともに海で生きる海上民に分かれ共存していた。
だが地球規模の環境変動〈大異変〉が迫り、資源をめぐる両者の対立は深刻化。
頻発する武力衝突を憂慮した救援団体理事長の青澄誠司は、
海の反社会勢力〈ラブカ〉の指導者ザフィールに和解を持ちかけるが、頑なに拒まれていた――
日本SF大賞受賞作『華竜の宮』に続く長篇、待望の文庫化

Amazon書誌情報より

【感想】
 前作〝華竜の宮〟の本編とエピローグの間の40年を描く物語。
 上巻は外交官を辞めて民間の救援組織を立ち上げた青澄と、反社会勢力「ラブカ」の指導者ザフィールを中心に物語が展開します。
 地球滅亡が迫っていても争いをやめられない地上民と海上民。そしてその両方に武器を供給し混乱を煽る謎の存在「見えない十人」。
 とにかくザフィールの境遇が辛すぎて…。
 下巻は慈善事業ではなくあえて「雇用」という形で海上民を救うことにこだわった青澄。無人ロケット打ち上げに情熱を燃やすユイ。そして時代の流れに翻弄される反社会勢力ラブカのザフィール。この3人を軸に終末へのカウントダウンは加速します。
 この3人以外にもたくさんの魅力的な人物が登場しますが、〝リリエンタールの末裔〟のチャムさんの登場には胸が震えました。
 散々混乱した挙句やっと設立した世界救援ネットワーク。それでも止まない紛争。
 物語の読みどころはたくさんありますが、この時期なので、ロケット墜落事故の現場を訪れたユイに青澄が語ったことは、被災地支援で最も大切なことだと感じました。

【まとまらないまとめ】

 いかがでしたか。
 今週も先週に引き続き上田早夕里さん。
 そしていわゆる「オーシャン・クロニクル」シリーズの作品をじっくり読みました。
 正直〝華竜の宮〟のプロローグの舞台が2017年の幕張メッセ、ほんの数ページで地震学や地球科学の難しい話になり「これはちょっと無理かも」なんて思いながら読み進めるも、本編に入ったらその独特の世界観にあっという間に取り込まれた感じでした。いやぁ、最初に短編を読んでいてよかった。
 このシリーズ、実写でもアニメでもいいから、ぜひ映像化してほしいです。

 もし「あと50年で地球存亡の危機が訪れる!」と言われたら…。
って、いやいやいやそんな心配は無用。
 とっくにあっちの世界に行ってるから。
 でも、もし「明日世界が終わる」って言われたら…。
 なんの本を読もう。
 あっ、そんなこと言ってる場合じゃないか。

最後に
 読書っていいよね。


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