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安全と荒事のプロが解説する『 #男女平等パンチ 』

昨年末は忙しかったので久しぶりのnoteです。

いつも通り値段設定だけはしておきますが、無料で全文読める投げ銭方式にしておきます。

さて、ツイッターでも物議を醸し出し、ちょこちょこnoteのタイトルとして登場し始めている『男女平等パンチ』について、安心と安全、そして荒事のプロフェッショナルとしての見解を述べましょう…勿論、私は現実主義者なのでリップサービスは抜きです。

何に腹を立てたのか解らないが『女性が振りかぶって男性を殴打』し、それを僅か1秒で『男性が殴り返し』それにより『女性は人形の様に崩れ落ち、何度か男性がその身体を持ち上げるもピクリともしない』

話題となったこの動画はご覧の通り(多分運営の判断で)後からセンシティブフィルターがかけられた事からも解る通り、大変ショッキングな傷害事件の動画です。

ここで『暴行事件じゃないの?』と首を傾げる方も多いと思われますが、動画自体がフィクションで男女の名演技や人形やCGなどを駆使した物であると言うならともかく、【女性が『殴られ失神(脳震盪)を起こしているのが見て取れますので、これは明確に傷害を与えたと言う扱いになり、立件されれば傷害事件】、女性が亡くなった場合は傷害致死事件です。

暴行罪と言うのは一般に思われているよりも範囲が狭く『殴られたが(医師などが確認出来る様な)アザ一つ無かった』『至近距離から石を身体に向けて投げられたが外れた』場合等、今回の動画で言うなら(確認できないだけで目に入ったり、歯が折れたりしていれば傷害の可能性もありますが)【女性側の行為が該当】します。

しかし、失神(脳震盪)と言う症状はアザなどと同じく負傷として扱うので、その時点で傷害罪が相当と言う話です。

逆に動画で見る限り『明確な攻撃は素手での殴打1度』(髪を掴んで引きずり起こし、手を離したため路面に頭を打ち付けた行為は、相手が失神していた事を理解できなかった為とかんがえられ、追撃と見るのは流石に不当だと考えます)と見えますので、殺意の認定は難しく、殺人及び殺人罪未遂罪として扱われる可能性は低いとも思います。

この様に引き起こした結果の差から両者の行為は罪状として異なって来ますが、いわゆる『正当防衛』や『緊急避難』が適用されるかなど、こうした場合にどの様な判決が下るかはとても微妙な所です。

特に今回の様に暴行の前後が動画で記録されている上でどの様な判断がなされるかにはプロとしてとても興味があります。

今回のケースと類似した事案でも、動画や明確な複数人からの目撃証言などが無い場合、利害対立する当人同士の記憶と証言を元に評価するしかないわけで、割と『傷害を負わなかった側がされた暴行』についてはウヤムヤになりがちな実情があります。

『どちらが先に手を出したか?』について『動画の前に男も殴ったり小突いて居たかも知れないだろ』と言う論陣を張る方が居ましたのでそれについても解説しておきますと【確かにそうした事実があるのなら上で述べた侮辱などと同じく一定の評価はされるが、防衛や応戦の動機には使えない】となります。

10年前に殴られた…からが無意味なのと同じく【あの動画の直前に女性が男性に暴力を振るわれていたとしても、両者の立ち位置等を見ると自らからツカツカと前に歩み寄って暴行をしているのが女性側なので法的にみて『先に手を出したのは女性』と言う判断は出来てしまう訳です。

また両者に言える事なのですが、言動による挑発行為の有無は『正当防衛』に該当するを判断する上でも重要で特に「かかってこいよ、殴ってみろ腰抜け」の様な直接的に相手を暴力に仕向ける様な言動があった場合は(それでも暴行に及べば法的に不利には成りますが)挑発した側も『正』とまで言えなくなってきますので、『正当防衛』の要件である『急迫不正な侵害に対して』と言う条件が崩れて来る訳です。

そうした面は動画の前も含めて男女の揉めた経緯や、普段の素行(暴行事件等を度々起こしている方は不利に評価されます)などがはっきりするまでは難しい所ですが、それは無い物とし『互いに同等の言い争い』の後動画の通り先に『手を出したのが女性である』と仮定するなら【男性の行為は傷害罪、但し女性の暴行に応戦した行為であり、正当防衛は認められない物の、過剰防衛に該当するため、相当に減刑するべき】と言うのが妥当な落とし所だと考えます。

両者の性別や膂力に善悪を見出す感情論・規範論も見受けられますが、あくまで老人や子供、極端に身体の弱い方に対しての評価や、武道の有段者や、警備や治安維持に関連する職業人などであれば相手に怪我を負わせた際、多少不利になったりする程度で、こうした急場での応戦に関してそこまで冷静な判断をしろというのは土台無理な話です。

ツイッターでの極論の様に、『手を出した方が絶対悪い』『殴ったら殴り返されても正当防衛』『喧嘩両成敗』『男性が女性を殴り返したのは駄目』みたいな言及は概ね雑が過ぎるのです。

何にしても教訓としては『殴ったら反撃くらいはされる事があるので人を殴らない様にすべきだし、殴り返す人が法律を気にしていたり殴り慣れているとも限らない』と言う辺りですね。

まぁ140文字で詳細に纏めるなんて無理でしょうけど(笑)

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