#いわくのつけく2

みんなだいすき、そして私もお慕いしている岩倉曰さんの付け句のお題で短歌を作りました。
唯一無二のいわくさんの情景と言葉選びに楽しく作ることができました!
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※前掲のポストを元に作成しています
※「上」:上の句いわくさん、下の句君村
  「下」:上の句君村、下の句いわくさん

上1. 逆さまに認識すれば常識でないほうへ引く蛍光マーカー
下2. Squall 傘を失くしてそれだけじゃなくてここから星は見えない
上3. ご機嫌をうかがいながら進んでく蟻の役目に慣れてしまった
下4. カーナビもぼくも得意な誤作動だ遠回りしたほうが速い例
上5. 隠れればなんとか凌げるとは思うレインコートとしての本棚
下6. リストカットめく二十四時に半笑いで今はすべてが楽しい、と言う
上7. 経験を語り終えたらああこれは罰ゲームです、という顔をした
下8. 明日には明日のわたし文献と突合してと言い添えている
上9. アンパンマンポテトに執着しすぎてた子どものようにしがみつく生
※生=せい
下10. 銃刀法を守る長さで生き方のナイフをもった男は歩く

上11. 犬がいて近寄りがたいひとは多分自分にも似て近寄りがたい
下12. 泣くのには慣れた つもり  文庫本カバーのたぬき申し訳ない
上13. 絵を描いて考えようかへたくそな動物として生きるためにも
下14. 頻脈の字のかたくなさ恋の病なのに相手が思い出せない
上15. 数日後寝床の中で死んでいたおれを見下ろすおれを見ている
上16. 最後には迷惑がられるけれどそこで勿忘草を見たことが愛だよ
下17. 大体はエゴイストであってかまわない患者の犬は吠えているけど
上18. あの嫌な臭いの元がわかってもわたしは鼻のないふりができる
下19. ワンルームが世界のすべての日曜にネットで調べたことを試すよ
上20. そうなの? と思った時点で負けである紙のストローはとっくにべにょべにょ

上21. どの道もワンタンメン屋に通じてたこういうときの宝くじははずれ
上22. 遊園地ひとつ閉園するたびに羽化せず死んだ蝉を思った
上23. 8年前の同じ時間に何してた 水晶のような声の残酷
下24. ラブシーンを観たときの目でつぶれてる鮭おにぎりにも動じてなくて
下25. 感情を持ち運ぶには大体がエコバッグで代用されている
上26. 教室で習った通りの英会話として過ごした初恋だった
上27. いいお湯に毎日浸かるわたくしが青菜であれば今は食べ頃
上28. 違いなどほぼないけれどおれとおれ以外の家族は ほら そうだよな
上29. 飛行機の時間がくるよ飛行機の時間は来るよ なにか言ってよ
上30. 離れてもお寿司を推すしこれからも鰻は滅ぼさないと誓うよ

上31. タクシーに乗って来たのに両手でもあふれてしまう愛をもらった
上32. 似顔絵はあったけれどもわたしってこんなに笑う生き物だったの
下33. 虐殺からもっとも遠い部屋で分けるベリーソースが染みたベーグル
下34. わからないことをわからないままでいたいロボット犬はうなだれている
上35. 10年後観たら笑えるかも知れない今が眠っていくカメラロール
上36. 感情がどこにあるのか見せてみてスマホの指紋認証みたいに
上37. フエラムネー粒ほどの価値もない(はずの)命が集まる社会
下38. 獲りたての777が踊っている投げつけられたレシートの額
※777=スリーセブン
上39. 座ってるだけならなんとかなるという呪文をきみへ贈る月曜
下40. それからのひとりに慣れた助手席は保冷バッグを置ける空間

上41. 八畳の和室の南極寄りに寝るファーストペンギンにはもうなれない
下42. きみのつむじも唐草模様もひらがなの 「の」 もワンピースの模様のひとつ
下43. 映画館は出られる迷路 足元にポップコーンが散らかっている
下44. こんなにも孤独は青い日暮れまでひとの作ったかまくらにいる
下45. 目の前でオイルタイマーが落ちるように待ち始めると待ってしまって
下46. 自転車のドッペルゲンガーばかりいる自転車置き場は殺伐として
上47. しまむらに入ったひとが出て来ない報道を観るしまむらの店内
上48. 電話が鳴りみんな電話の方を向く見えないボールをぶつけあいながら
下49. GPSさえ無視をするおれじゃなく他の大人に教わるだろう
下50. 手持ち花火いっぺんにつくのをパーティと騙されていると言うならそれはそう

上51. プロペラはあるのにプロペラ以外ない肉体がただ布団へ沈む
上52. 地方都市の弱いWi-Fiさようなら親族のLINEのブロックを終える
下53. 東京は永遠の墓場 CMは無くてもいいと思いませんか
上54. 座るより立ってるほうが目立たない黙っている四葉のクローバー
上55. いつもより虹を素直に喜べる気持ちを明日に持ち越せたなら
下56. こんなにも腹痛がある昼食がカレーでなければよかったものを
下57. 飴細工のようにやさしくされたのち長く関わる傾向がある
上58. (ボブならば簡単に吐く)フィクションの脅し文句はかなり優しい
下59. リュックなら背負えてしまう責任はいつしか重いことが常になる
上60. 肩書は気にしながらもミスをミスと言うときわたしが踏む霜柱

下61. 足跡を残せてしまう冬は嫌い冬の自販機コーナーが好き
上62. 体質によってはお腹が緩くなるガムの粘度の悪口だった
上63. 友達になってみたいと思ってたねずみ花火が放たれていく
上64. いただいたドジョウがシンクで跳ねる音みたいなドロップキックで退勤
下65. ばらばらの下着のときはアニサキス見つけたみたいに黙っていたね
上66. 胡散臭いお茶が安くて箱で買うゲリラ豪雨もたまに必要
下67. きみの町にはじめましてを言いたくてまず窓を開けてあげようとした
下68. 自分から生み出したせいでそんなはずないのに口内炎がうるさい
上69. 代表戦だったら観たい「がんばれ」はただしく生きる人間のことば
上70. その間親がどうしていたのかは聞くつもりのないクリスマス・イブ

下71. きらびやかな嘔吐は過ぎて正常に体は動き掃除を終える
下72. 日本から出たことないし世界地図ちっとも頭に入ってこない
上73. 大きめの花瓶に花を入れるのも頭蓋骨が脳を飼うのも同じ
下74. 県境が国境である証明は街頭インタビューに詳しい
下75. きみといればぼくはみずうみ聞こえてくる土手の騒ぎは一度無視して
下76. 「申し訳ありませんでした」の裏腹にネームプレートまた裏表
上77. カップ麺が売り切れだったコンビニに流れるカップラーメンのCM
上78. 食べさせれば人も食べれる動物の牙の強さで遂げる生涯
下79. 放課後を享受していたそのころにやたら食べてたグミのすっぱさ
下80. 違います、違いますって首を振る文具屋さんの犬のことです

下81. 宴席の作り笑いが貼り付いて靴下を脱ぎたくて脱ぎたくてたまらない
下82. 風邪は風邪、失恋はただの出来事とラインしてくれないところいいと思った
上83. 一言でまとめられるということは鰯の群れの一匹と同じ
下84. いい「いいよ」とよくない「いいよ」の差を知れば焼けてないのに焼け跡のよう
上85. 給食費徴収用の封筒に「現金送れ」はそうだね、四月
上86. 見捨てないしかし助けるわけじゃない崖で砕ける波はうつくしい
下87. やさしさを浴びた理性と同様に溶けるチョコには痛覚がない
上88. どこまでを切り離してもいいのだろう紙が傷つける指先の痛み
下89. 生命と信じてしまう流れ星ひとに願いを言ってもいいよ
下90. 梅干しを狂気が谷で仕入れてる正気が丘のおにぎり屋さん

上91. 四月って寒いと毎年思ってるダッフルコートは濃い色を選ぶ
下92. アイディアが自分の手からすり抜けてレジを通していないサバ缶
下93. 澄んでいれば咲く花ばかりおれだってペットボトルの水でいいよな
上94. 成り立たない会話のなかで一つだけ落雷として好きな人が同じ
下95. できるだけかわいいスタンプで謝って遅延していた電車が動く
下96. 使いきるリップクリームこんな日がいつか来るとは思わなかった
下97. 心にもドアノブがある掴んでもいいか誰にも訊けないままの
上98. キッチンカー同士仲良くしてほしい海の向こうを飛ぶ爆撃機
下99. へそ曲がりが似合うおれにも親戚が立派な鮭を送ってくれる
下100. くしゃくしゃの紙を開いたばっかりにテーマの伝え方がへたくそ
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以上です。
主観で、自分が普段作る短歌に近いのは

上86. 見捨てないしかし助けるわけじゃない崖で砕ける波はうつくしい

ですが、すべてがやはりいわくさんの世界に引っ張っていただいているように思います。

上47のしまむらの景、下90の「狂気が谷」という架空の地名など、この付け句でなければ用いない景や単語をたくさん引き出していただきました。
本当に楽しかったです。いわくさんありがとうございました!

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