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おかわり

 ひとつ前の記事の書きぶりがなかなか雑だったのを反省し、ちょっと付け足しというか、補足しておきたいとおもいます。反省点は、ネガティブな感じを与えたかもしれないというそこらへんです。

 食べることそのものを、心から愉しむ人がいますね。そういう人は往々にして味わいを尽くし、または調理に手をかける。食材や味付けへの関心が高く、家の内と外でひたすら好奇心を持って「食べる」ことに向かっているのだと思います。こういう場合のその関心の度合いは執着とは感じられず、やはり食べることと繋がりの深い「生きる」ことへの注力具合と重なるところがあります。
 私が前回の記事に書いた、常に口に何か入れている種類の人にとって「何かを食べる」行為は、意識を逸らすために用いている場合が多いため、上記の人に比して食材や調理方法、味付けみたいなものへの関心は少なく見受けられます。

 それからパートナーシップと書いたけれど、もちろんそこに限らず人間関係全般に言えますね。関係性リレーションシップにおいて一歩踏み込む、というのはどうしてもエネルギーがいることだから、できればみんな避けたいのだろうと思います。家庭内でも、社会生活でも、とにかくうわべのところで済めば、楽だから。人との間で波風立てると厄介で、面倒で、疲れます。でも避けてばかりいるとステキなことも起こりづらいし、自分のなかに澱が溜まって結局は別の問題として現れてくることが多いです。便秘みたいなことですね。

 でね、別にどちらがいいとか悪いとかの話ではないのです。人間というのは(私自身を含め)みんなもれなくどこかしらちょっとずつ破綻していて、どの種類の破綻を好むか、という違いがあるだけなんだろうと思っています。

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 くいいじについても補足しておこうとおもったことがあって、それはすごくどうでもいいことなんだけれどせっかくなので(?)書きます。
 本を読む、漫画を読む、ドラマや映画を観る、そういった中でとにかくそこに出てくるあらゆる食べ物が気になります。よその国だったら未知の文化と食物を感じられて楽しいし、日本のものだってよその土地の口にしたことのないものにはぐっと興味をそそられる。ファンタジー作品ではこの世に存在しない食物が出てきたりして、想像もつかないその食べ物について、いろんな想像力が働いてくる。まあ、ほんとうにいやしいのです。
 よく見聞きするのは絵本の『ちびくろサンボ』でトラがぐるぐる回ってバターになって、パンケーキが焼かれたシーンとか、『ぐりとぐら』のカステラとかね。ぐりとぐらのは、どこかで商品化(?)されているんでしたっけ。このあたりはみんな、一度くらい惹きつけられたとおもう。あと個人的には『スプーンおばさん』に出てくるコケモモのジャムとか、『おちゃめな双子』シリーズの真夜中のパーティで焼かれるソーセージや、お誕生日のクリームケーキというあちら独特のお菓子なども、ずっと記憶と想像の中にあります。映像より活字のほうが、ずっとイメージが豊かに、印象に残る気がします。

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 食べ物の好き嫌いと、人間の好き嫌いの関連もありますね。
 うちの母は食べ物の好き嫌いがとてもはげしく、そのため出来合いのものを買うというのがほとんどない人でした。つまり他人が作ったもの、特に惣菜関係などは「何が入っているかわからない」ことから、自分の嫌いな食材と味付けを嫌い買うくらいならと自分で作っていたということです。母は店じまいの後どれだけ遅くなろうとも、ほとんど全て手作りの夕飯を用意しました(おかげでたいてい出来上がりが21時とかになった)。今はいくらか減ったし(それでも多いけど)外食なんかもそれはそれで平気みたいです。
 そんな母はどちらかというと愛想も良くないし、一度「あまり好きじゃない」と感じた人に対してはとてもドライな態度をとります。ずっと前本人に「食べ物の好き嫌いがはげしい人は人の好き嫌いもはげしいんだって」と言ってみたところ、涼しい顔をして「そうよ」と返ってきたので自覚ありです。
 別の例として父をみてみると、こちらは未知の食材、味わいに極端にネガティブな反応をします。生き方を見ても似たところがあって、新しいものや習慣を取り入れることを、避けるか苦手とするか拒絶して生きている様子が見られるんですね。母とは方向が違うけれど好きじゃない食材や料理も多く、客商売をやっていたにも関わらず受け入れられない人にはすごく冷たい態度をとります。

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 そういうわけで、補足の「おかわり」でした。トップ画像は、食を愉しむ宮崎の友人Rさんの、おいしいおいしい料理のかずかず(2021年10月)。

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今日の「それはちょっと」:きのう、仕事で島原半島をぐるっとまわりました。南島原の方ではイルカウォッチングができるんですよ。それでですね、いくつかあるイルカウォッチング・スポット(クルーズとか)のひとつで「イルカのりば」と大きく書かれた看板を見かけました。それをみて私の頭に瞬時に浮かんだのは、イルカたちがよっこらせと船に乗り込むシーンです。「イルカのりば」は違うとおもう。

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