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MakerとしてCOVID-19と闘う方法

COVID-19が猛威を振るっている中、少しでも自分に出来ることがないか探していた。様々な企業や有志コミュニティが立ち上がり、速やかに対策を練り立ち向かっていく。それはとても素晴らしいことで、私自身も一部そこに身を置いたりしながら。

しかし、もっと身近で、もっと小さなところから始めたい想いもあった。あまりに大きな流れに身を任せてしまうと、その使命感で自分の思想が希薄化する。あるいはその大きさから、新たな仲間を得ることも難しくなるのではないかと危惧していた。

ちょっとした事でもCOVID-19に立ち向かいたい。それをきっかけに私自身が何かしらの”気づき”を得て成長したいし、それでもってして、周囲へも”気づき”を与え、この未曽有の危機への関心を増し、行動する人を増やしたい

幸運なことに、私には"ものづくり"という武器があり、Makerという立場でCOVID-19に立ち向かうことができるのではないか?という結論に至った。些細なものづくりを感染予防に役立たせるのだ。そう心に決めた私は、1週間、COVID-19対策のMaker活動に力を入れることにした。尚作品は必ず毎日SNSへ投稿した。周囲への関心を引きつつ、自身のやる気維持も兼ねながら。

マスクを作る

マスクが足りない

COVID-19で真っ先に問題化したのはマスクの供給不足。世の中でも自作する人が増えてきたが、もちろん私も着手した。作り方は色々あるが、まずは布マスクを作った。

①レーザー加工機で作る布マスク

Facebookで職場の方が作っているのに触発された。レーザー加工機で古着をカットして、立体的な布マスクを製作。3D CADでもって、以前全身スキャンして手に入れた自身の3Dモデルを基に、おおよそのサイズを算出し切り出し。

レーザー

古着を使うのは良い。リサイクルにもなるし、好きな個所を切り出すことで、オリジナルのオシャレなマスクを作り出すこともできるのだから。

マスク

②3Dプリンタで作るセンシングマスク

株式会社イグアスが3Dマスクデータを無償提供していた。

これをMakerとして捉えたとき、まず「造形しよう」という人と「設計しよう」という人に分かれる。私は後者だった為、自分にフィットする3Dマスクを自作することにした。

しかし、(あくまで個人的に)樹脂製品を口に常時装着するのが嫌だった。先の布マスクもあるわけだし、日用品として使うよりは、チャレンジングなことをしてみたくなったのだ。せっかくの機会だから、ジャイロや温湿度センサを搭載したセンシングマスクを試作してみた。

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マスクの中には、ROHMのセンサメダルを組込んだ。ウェアラブルデバイスに基板を組込むとき、電源を最も気にするのだが、このセンサメダルはボタン電池1つで数ヶ月持つ。最強の省エネセンサである。

データ

上記はセンサメダルで取得できる値である。これを基に呼気温度の取得や、ジャイロ等を応用し咳検出をやれないか検討している最中である。

ウィズコロナ・アフターコロナを考えた時、マスクは日常生活に欠かせないものになると思う。そうなると、ウェアラブルデバイスとして、スマートマスクという選択肢はとても有用に感じてくる。

③ホットシーラーで作る100均不織布マスク

そもそも、どの家庭にも3Dプリンタやレーザー加工機が置いてあるわけがなく、もっと気軽に作れる方法も試しておくべきかなと思った。

これも巷で流行っている方法の代名詞。100均で売ってる不織布を、ホットシーラーで接着してマスクを作るというもの。不織布は、結構色んな製品で使われていて、今回は水切りフィルターを活用することにした。

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1枚だと薄かった為、2枚重ねたのち、ホットシーラーで隅を接着。

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そしてゴムを通すと、あっという間にマスクが完成!

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3種類のマスクを作った感想として、布マスクが最も装着具合が良く、着けたい気持ちにもさせてくれた。このMakeを始める前は、実は布マスクや3Dマスクをつけるのに抵抗があった(マイノリティ感があって嫌だった)。しかし、世の中で様々なマスクを作り、着けている人たちにつられ、徐々に違和感もなくなった。

マスク作り。感染予防に役立つのはもちろんのことだが、今後の"マスク"というファッションの広がりにも役立っているのではないだろうか。

ドアオープナーを作る

ある日、こんな記事を目にした。

必要性は感じられたし、シンプルで良いなと思った反面、持ち歩くだろうか?もっと良い方法はないだろうか?という疑問も生まれた。

職場の仲間とこの話をしたとき、スマホケースにしてはどうか?というアイデアが出て、それはとても良い!と納得。ただし、その場合、せっかく手がハンドルに触れることなかったのに、後ほどスマホケースを介して二次接触してしまう恐れは拭えない。

その課題を解決するために、ハンドル接触部をカバーで覆い、ドアオープナーとして使う時に可動する仕組みとした。また、除菌しやすいよう取り外し可能である。

また、ハンドルを引っ掛ける個所の形状についてだが、見てわかる通り、「Fusion360」のFである。これは私がFusion360を愛用しているのに加えて、ふと見たときに「Fの部分って、何か引っ掛けられそうじゃないか?」という着想を得た為である。

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透明ケース部は光造形(SLA)。

Fusion360のFは熱溶解(FDM)。オレンジフィラメント。

正直、強度は不安だったが、何とか無事にドアをオープンさせることに成功した。電車に乗った際は、つり革を掴むのにも使えそうである。

また、せっかくなので宣伝しておくと、Autodeskはこの度のCOVID-19の影響を鑑み、主要クラウド製品の一部が期間限定で無償利用できるそうだ。この機会に使ってみてはどうだろうか。

UV除菌をアシストする

マスクやドアオープナーの除菌方法を考え、UVライトを試してみるべく購入した。

あまり知識がなかった為、この機会に色々調べてみたところ、UV除菌には下記2点が大事だということが分かった。もちろん製品の仕様による。

①近い距離で照射(5cm以内)
②照射時間は最低でも20秒〜3分くらい

せっかくライトを当てていても、遠かったり、時間が短いと効果が得られないのである。これは、使用時に少し意識するだけで良い事ではあるのだが、せっかくなので、ものづくりの力で改善することにした。

最初は、物体認識させてON、OFFさせようとか色々考えてみたのだが、今回は素直に「距離検出」と「カウントダウン」をやってくれるデバイスを作ることにした。使用したのはM5StickC。

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5cm以内に近づくとカウントダウンを開始する。とてもシンプル。

実際のところ、除菌効果はどうなのかが気になる。使用後、オゾン独特の臭いはしてくるので、機能は十分果たしているのではないだろうか。

今後、例えばロボットなんかはどうやって除菌するのだろうか?UV除菌も、取り扱いが難しそうではあるが、未来に役立ちそうなデバイスではある。

自動アルコールディスペンサー

正直言って、作ろうかとても悩んだ。理由は簡単で、世の中に普通に売ってあるから。わざわざ作るまでもないかもなと。

しかし、世の中のアルコールディスペンサーは比較的大きめな上、ユニークさも感じられない。こうなったら自分で作るしかない。と、勝手に火を付け、やる気を出して取り組んでみた。すると魔物が誕生した。

外装をワンちゃんにし、ワンちゃんが口からアルコールを吐き出すという、魔作品の完成である。当初は真面目にマスクを作ってたりしていたはずなのに、こういう方向にいっていいものか…。葛藤はあったが、これこそMakerだ!本質は作りたいものを作ってこそ!

きっと、子供たちはこれを見て、面白半分にアルコール消毒してみたいと思うことであろう。アルコール消毒促しとして、これ以上のデバイスはないのではないか!?

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持ち運びVerも製作中だったりする。ワンちゃんを腰に下げて歩こうか。

ロボットによる通知・注意喚起

COVID-19の情報はインターネット上に溢れている。ただ、過剰に心配しすぎるのも、正しく状況を理解しないのも良くない。Maker仲間が下記のようなデバイスを作っていた。

こういった通知型デバイスは魅力的だなと感じ、私も作ることにした。ベースとなるデバイスは選択肢が多いが、せっかくの機会なので、開発中のコミュニケーションロボット「CHIRO」に実装し、音声で通知させることにした。ちなみに、私は愛知住まいなので愛知の情報を通知する。

CHIROの中身はラズパイ4なので、Pythonで、BeautifulSoupを用いてWEBスクレイピングを実装。音声はOpenJtalk(もう少し可愛らしくしたいけど)。
CHIROが起動すると、愛知県のコロナウイルス感染症ページから、最新の感染者数及び入院者数を取得し知らせてくれる!

PC近くにCHIROを置いて、雑談程度に話しかけてくれるのは良い。もっと他にも実装できないか考えていると、下記Webアプリを発見。

「顔を手で触ろうとすると教えてくれるwebアプリ」である。Webhookが用意されていたので、そっくりそのまま活用し→IFFFT→Beebotte→CHIRO(ラズパイ4)といった流れで、顔に触れた情報を取得。その情報を基にCHIROが睨みつけるような目になり、ユーザーを叱ってくれるという仕組み。

問題はPoseNetはアクセラレータ無しのラズパイ 4(2GB)だとキツイ…。色々絞って3FPS?CHIROもTPU拡張を設けるか、あるいはどうせWebhookなのだし、別のコンピュータ(カメラ)からの情報を取得しても良いわけだけど。

ちなみに、声素材は下記サイトから借用。かわいい声。

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卓上ロボット型のラピッドプロトデバイスがあると、開発し易いし愛着も湧いてきてなかなか良い。本当はこの機会にオリヒメのようにテレワーク・テレプレゼンス的使い方もしたいのだけれど、まだ課題が多いのだよね。

感じたこと・考えたこと

作品は以上。

まずもって、1週間続けてみたこの創作活動は、なかなかに知恵を振り絞る機会を与えてくれたし、とても勉強になった。私は「何かを作る」という行為をするとき、「自己表現」と「課題解決」のどちらかを意識する。「自己表現」はいわばアートであり、”作りたいから作った”という欲求に忠実なもの。逆に「課題解決」は世の中をよく観察し、必要となりえるものを作る行為。今回は一部を除き、後者の方が強めである。

例えば、マスクの作り方やUVライトの知識なんて、今回の活動なくしては得られなかった知見である。困難で日常から失われるものが多い中、探りながらも、少しずつでも何かを得られるように行動するのはとても大切

また、少しでも周囲の関心を引くことができ、自身も含めた行動の見直しに繋がったのはとても良かった。周囲の人から作品の話をされたり、欲しい、作ってみたいという声が聞こえるのはとても良い事。なんといっても、COVID-19感染防止への関心と、ものづくりへの興味を同時に抱けるのだから。

ウィルスは感染する。感染という言葉は悪い意味で使われる事が多い。しかし、それと反比例するかのようにして、ものづくりの輪を広げていく。そうすることで、少しでも感染者数の削減に繋がればよいと思う。もちろん、今回作ったものが感染防止に大いに役立つわけではない。ただ、自身の予防意識は飛躍的に向上したし、少しでも効果があるデバイスなら使わないよりは使った方が良い。

今後もより一層考え、作る。Makerとして、身近なことからコツコツと。


最後に、1日も早い終息を願って

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