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鳴らない電話とひとりの夜

2週間くらいが過ぎてようやく新しい部屋にもだいぶ慣れてきた。今日は締め切りが近い原稿に集中することにした。本当は渚さんのカフェMaugham(モーム)でお昼食べながらやりたいけど、集中し過ぎると時間を忘れてしまうし長居は迷惑になってしまうから自分で適当に作ったサンドウィッチを摘みながらパソコンに向かう。

今連載しているのは「復縁」をテーマにした話だ。ちょうど書いてるシーンは、学生の頃からくっついたり離れたりを繰り返してるカップルが別れて別の恋人と付き合ってる時に、互いを思い出し復縁したい気持ちにフタをして今の恋人のことを好きだと思い込もうとするところだ。この気持ちのすれ違いが書いてても苦しくなる。気持ちを作品とシンクロさせるため失恋のプレイリストを流した。

やっと締め切り分の原稿を書き終えて、ふと気がつくと部屋が薄暗くなっていて既に日が落ちて夜になっていた。ぐっと伸びをしてベランダに繋がってる窓を開けると、ひんやりとしたした夜風が流れ込んできて心地いい。作品を書いてる時は自分のことじゃないけれど、どうしてもシンクロしてしまって心が辛くなってしまう時がある。それでも読者から届く共感の声が嬉しくて恋愛の辛いシーンも書き込めるのだ。私も辛い恋愛をしたばかりだから、よりリアルな心境が書ける、それが今は少しだけ嬉しかった。失恋は辛いし本当は復縁したいけど、こうやって読んでくれる人に還元できるのは幸せなことだと思った。

書いた原稿を一度チェックして担当さんにメールで送って、一息つく。これでやっと終わったという安心感で一気に眠気が来て、そのままベッドに倒れ込む。溜まった洗濯物を目の端にとらえて、あぁ今日は家事何にもできてないやと思ったけれど睡魔に勝てなくて目を閉じてしまった。

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