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ADHDと診断されなくて大泣きした話

ずっと、当たり前のことが当たり前にできないなと思っていた。

高校時代。

前夜にならないとテスト勉強ができない。
日付が変わる頃から勉強開始。
5:00頃に新聞が届いた音を合図に仮眠してテストに向かう。
テストを終えて家に帰って、まずガッツリ寝て、ダラダラして、また日付が変わる頃、、負のサイクル。

あまりにもギリギリになるまで着手できないので、治し方についてネットで調べてみたときに出てきたのが、ADHDだった。

特徴が当てはまりすぎていると思い、セルフチェックのようなものをやってみると、注意欠陥の数値が飛び抜けていた。

病気かもしれないのか、と思った。


大学時代。

心理学を専攻していたので、発達についての授業でADHDが出てきた。

小学校の頃を思い返しても、授業中は座って聞いていたので多動性は心当たりない。
だけど忘れ物は多かったし、過集中が心当たる出来事もいくつかあり、やっぱり注意欠陥の特徴を見ているようだと改めて思いながら聞いていた。

日常生活はというと相変わらずのギリギリ癖で、授業の遅刻やテスト勉強不足で単位を落としていた。


社会人。

新卒1年目、とにかくミスが多い。

電話の取次で、折り返し希望なのに折り返し番号を聞いていなかったり、そもそも相手の名前を聞いていなかったり。
出す書類も全部、どれだけ確認してもどこかしら間違っている(私の前職である銀行の手続きは、絶望的に細かいのも向かい風だった)。

学生時代との何よりも大きな違いは、給料が発生しているだった。
お金をもらってこの有様な自分への嫌悪感は日々積もり、疲弊していった。
何年も安定していた体重も、ストレスで見る見る減った。

ここで初めて、私はアクションを起こした。
昔から、のんびりしているのに思い立ったときのアクションは早いのでよく驚かれた。

社会人1年目の冬、ADHDの診断を受けるため、心療内科へ行った。


一通り全てが終わり、しばらく待ったあとに診察室に呼ばれる。もう3,4年前のことになるが、このときのことは鮮明に覚えている。

お医者さんから、「ADHDであってほしいですか?」と聞かれた私は、少し考え、「わからないです」と答えた。

一拍おいて告げられた結果は、『ADHDではない』だった。

その言葉を聞いた瞬間、決壊したように涙が溢れた。
涙で顔をベタベタにしながら私が発した第一声は「じゃあ、どうすれば…」だった。

自分から漏れ出た言葉で、私は初めに投げかけられたお医者さんの質問に対する自分の答えがわかった。
私は、ADHDと診断されたら、つまり今までの苦労に名前がつけば、楽になれると期待していたのだ。

それを見透かすように、お医者さんは私にこう話してくれた。

ADHDと診断するのは、現在だけでなく幼少期から特徴が見られる場合で、アヤノさんの場合は幼少期にあまり特徴が見られなかったのでADHDとは診断しなかった。
ただ、ADHDと診断されたとしても、薬を飲んだらハイ解決ではなく、行動改善も同時に行っていくことになる
ADHDでもそうでなくても、今アヤノさんが困っていることに対しては、例えばこういう対策ができる。

そう言って、いくつか具体的なアクションを教えてくれた。

学生時代からずっと疑念を抱いていたことにカタがついたことで、そのときは感情がいっぱいになって、待合室に戻ってもずっと泣いていた。


のちに冷静になって、これまで「ADHDか、そうでないか」の2択で考えていたが、病名の診断はあくまでも、グラデーションの中で便宜上線を引いているだけなのだなと私は理解した。

これはあらゆることに当てはまると思っていて、今の私の考え方や価値観にも大きく影響している。

病気もセクシャリティも職業も年齢も、世の中にはたくさんのラベルがあるが、ラベルではなく"その人個人"と向き合うのが、相手を尊重することなのだと思う。

そしてそれは、自分に対しても同じだ。

どんなラベルがついていようとも、何に心が動かされ、何が自分を苦しめるのか、繰り返し問いかけて本質に気づくことが、自分の思いを尊重することにつながるのだ。


余談)

なお、あのときお医者さんからもらったアドバイスは大変役立ち、フォーマット化、リスト化でミスを抑える仕組みを整えて、自己嫌悪の必要がない程度には仕事の品質水準を引き上げられた。

また、Apple Watchのアラームで開始・終了時間を管理することで、先延ばしや過集中対策もうまくいっている(アラームをかけ忘れるとやはり、気づいたらお昼も食べず15時になっていたりする)。

実生活面も、考え方や価値観も、病院で大泣きしたあの日が私にとって大きなターニングポイントとなった。

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