第12回、毎日続ける!短編小説「ゆうウォンとキルみー」

 夏の始まり、蒸し暑くなる頃だった。そして後もう少しでやってくる夏休みに浮かれる私たちは、少しばかり思考を怠っていた。

 ノートを忘れて教室に戻った私はあるものを目撃してしまう。滅多に人が入ることのない倉庫になっている部屋。そこにメガネをかけた、ビクビクしているやつと、ヘラヘラしながら周りを見渡しているのが二人、そこに入った。
 
 怪しい、昨日先生が朝のHRで言っていた。最近イジメが急増しているらしい。全く持って許せない。見てしまったからには助けてあげないと。あのビクビクしてるやつ、嫌がってたし。
 
 私は、倉庫の扉を勢いよく開けて、目をカッと開いた。
「あんたら、何やってん!」
 有ろうことか、メガネのこが手を拘束されていて、まさに一発、なんの抵抗もできない少年に直撃していた。

 私は信じられなかった。正直、いじめの現場を見るのは初めてだったからだ。本当にあったんだ。だったら、助けてあげないと。

「キャー!せんせーい!今すぐきてくださーい!」

 私は出せる限りの声と高い叫びを出した。それを見た、いじめっ子たちは目を丸くして、さらに青白くなっていた。

 無事になんとか一階の職員室にまで声が届いたみたいで、すぐに先生が来てくれた。眼鏡のこは解放され、いじめっ子の親が来た。私はいじめっ子のために少々大袈裟に状況を説明した。

「君、僕が君の声を聞きつけて、助けに来なかったら一体どうするつもりだったんだ」先生は私を叱った。

「危ないことを」

「へへへ、気づいたら足が動いてて」

 そんなことはなかったが、これも大袈裟に言った。

 次の日
 朝のHRで私は昨日のことがまだ頭にあった。いじめっ子はメガネのこをどれだけ怖がらせたんだろう。どんなに酷いことをしたのだろう。きっと最悪な想像もしたくないものに違いない。先生が叱っただけじゃ、きっとダメだ。私がなんとかしないと。

「生徒から何か報告などはないか?」

 先生が聞いた。いつも必ずある件だ。

「先生!」そして私は席をたった。「お話があります。クラスのみんなも聴いてください」

「おい、それは……」

 先生は止めようとしていた。クラスメイトの視線が私に集まる。

「実は昨日、悲しい出来事がありました」

「隣のクラスの△△◻︎◻︎、〇〇××。というこがいじめをしているところを見ました」

 私は、主な怪我や、その悪どさを丁寧に誇張して言った。

 そしてまた次の日。

 変化はあった。その二人がいじめられるようになったのだ。

 それを私は見かけても知らないふりをする。いじめはいけないものね。自業自得だよ。

 とてもいい気分だった。私は手を汚すことがないし、みんなのヒーローにもなった。私はクラスの人気者になるはずだ。

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