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【短編小説】「ドァーター」5作品まとめ。

_________説明_________

この記事では、連載小説「ドァーター」15章を昨日投稿し忘れていたため、ルールに従い1日で5作品をお届けします。
いっぱい小説が書けるので僕としてはとても嬉しいです。🥳
ですが、罰はしっかりと受けるつもりです。これからは絶対に忘れないようにします。🙇‍♂️
五つの作品は、どれも本作品に登場するキャラクターの日常を描いたものになっています。

_________登場人物紹介_________

茎崎二十二くきざきにそじ……連載小説「ドァーター」の主人公。
茎崎乙枝くきざきおとえ……二十二の実の娘。茎崎家の長女。
茎崎巴枝くきざきともえ……二十二の実の娘。茎崎家の末っ子。
茎崎鏡花くきざききょうか……二十二の妻。

一葉かずは……自称二十二の遠い親戚

_________目次_________

第一話 幸せの1日 茎崎鏡花編  一章読後を推奨。
第二話 大切な父 茎崎巴枝編  四章読後を推奨。
第三話 愛した人 茎崎乙枝編  八章読後を推奨。
第四話 ぼっち牢獄 茎崎二十二編  一章読後を推奨。
第五話 さみしい、さびしい ????編 十六章読後を推奨。

_________本編_________


*第一話 幸せの日 茎崎鏡花編*

 霧の濃い日。咲き誇る、植物に包まれ彼は私に想いを告げた。

「結婚しよう」二十二は決意に満ちた目をしていた。ライトアップされた花のトンネルの下で、私は笑みをこぼしながら「はい」を答えた。

 一度彼と会うと、二十二はたくさん殴られる。帰り道を忘れてしまうほど顔の形を変えられる。それを私は見ていることしかできない。でもこの結婚が彼を苦しめることはわかっていた。だけど、私は彼を振ることができなかった。他人になってしまうのが怖くて、前を向けなくなってしまう。彼が一緒じゃないと私は私じゃなくなってしまう。

「本当にお前は懲りないな」物陰からの太い声が聞こえた。そして革と絹が擦れる音と共に彼の悲鳴が聞こえる。「うぐっ……」
「もうあの方とは別れるんだ。お前とは到底釣り合わない」
「嫌だ。僕は鏡花を愛しているんだ!絶対に守ってみせる」私は頭を抱え、耳をふさいだ。

 家に帰ると、決まったことを決まった時間にやるだけの毎日が始まる。そこに私はいない。誰かが願った私だ。お父さんは国の偉い人で、さらに偉い人の息子と結婚させたいのだ。私はその顔も見たことがない子供の妻になるために存在している。
 
「ねえ二十二。一緒に逃げましょ」私はずっと考えてきたことを口にした。「もう、あなたを苦しめることはできない。お願い、私はあなたさえいれば、何もいらないから」
「……わかった。でも、どこへ?」
「……」考えていなかった。「え――もしかして考えてなかったの?」
「えーい!別にいいでしょ!調べる時間なんかないのよ!」
「ごめん、ごめん」すると彼は笑った。私は久しぶりに笑った彼を見て、私も笑った。「あ、そうだ。いいところがあるよ、一度行ったことがあって、とてもいい街なんだ」そんな会話をするだけで幸せだった。

 街は二十二の言った通り、とってもいいところで、私が一番驚いたのは街の人たちだった。みんな本当に優しい人ばかりで、こんな人間が地球上に、二十二以外にも存在していたことが何より衝撃的だった。しばらくした頃、奴らがやってきてしまった。

 逃げてきたのがバレるのは時間の問題だと考えた私たちは、いっそ自分たちの存在を明かして街の人たちに身を隠してもらおうと考えた。そのために、必死にこの町で借りを返そうとまで考えていた。
「助けてください」そう私は初めに言った。その時だった。他町から警官がやってきた。私はすぐに物陰へ隠れた。町長はそれを不思議そうに見送る。そして私は物陰から町長と警官の会話を聞いた。
「こいつを探している。見覚えはないか?」警官は二十二の写真を取り出し、町長の目の前に持ってきた。すると町長は眉毛をぴくりと動かし、言った。
「んー知りませんねぇ。少なくとも『こいつ』っていう名前の人は聞いたことないですね」
「は――?じゃなくて、本当にいないんだな?」警官は顔を飛ばして言った。「もし見つけたら直ちに報告してくれよ」
「はいはい」町長は適当に言った。すると警官は帰っていった。

「どうしてですか」私は物陰から出てきて、町長に言った。「どうして、私たちの存在を庇ったんですか。私たち、突然やってきて、まだ何も――」
「庇った?私はただ、腹の立つ口の悪い警官を適当に対応して追い返しただけですよ?」と、町長はわざとらしく知らんぷりをした。私は町長の優しさに驚かされた。町長はそういうと、呆気に取られている私を見て彼は言った。「事情を聞きましょうか?」

「そんなことがあったんですか……いやはや。いいでしょう、あなたたちを匿います。」私はそう聞くと、喜びが湧き上がってきて、目を見開いた。すると町長はとんでもないことを言い加えた。「ただし、何の見返りは求めません」
「え、どうして?」
「助けを求めている人を助けるのは当たり前だろう?ただ、君たちに『この街は幸せをくれる』そう思ってくれれば十分なんだよ」私はまたこの街から衝撃を受けた。「街のみんなも了承してくれるだろう」とても信頼が厚いんですね。「ああ、みんな大切な家族だ」

 それからの日々は、昔の自分であれば想像もしなかった幸せの毎日だった。二十二は仕事につき、私は子供に勉強を教える先生になり、土日は二十二と外出して、やりたいことを手当たり次第やった。私はこの街が大好きだ。この街の人たちが大好きだ。私がずっと守っていきたとも思った。しかし、それは唐突に日常に陰りが見え始めるのだった。

 街に住み始めて5年が経った頃、他町のあの警官がまたやって来ていたのだ。未だ私たちの捜索を諦めていなかったようだ。
「この街だけ、町人の反応といい、妙に怪しい。調べさせてもらうぞ」そして、警官が町中を捜索し始めた。しかし、それは順調に進まなかった。それは、町人の邪魔が幾度も入ったからだ。警官を小馬鹿にして、イラつかせるような言葉を言った。
「あなたたちって、何を探しているんですか?」そう言ったある少女がいる。「もしかして、これですか?」と、少女はある写真を警官に見せた。「ん?なになに」警官は写真を覗き込んだ。しかしその写真には、その警官のお尻と、そのお尻にぶら下がった尻尾が写っていた。警官は顔を真っ赤にして、お尻にぶら下がった尻尾のおもちゃを投げ捨て、二十二の捜索をそっちのけで少女を追いかけた。「あんたらは、ずっと自分の尻尾を追いかけてるんだよ!」そう少女はケタケタと笑いながら逃げ回った。すると、それを聞いて、見ていた人たちも大きな声で笑い出した。街の人たちは賢くて、本当に優しかった。

 ある日、日本中で新型のウイルスが流行った。専用の薬が完成し、売られるようになった。が、この街だけ売られることはなかった。しかも、隣町のそのまた隣町まで、薬が売られることはなかった。調査を邪魔した上に、質問をまともに聞かなかったこの街に、二十二がいると、奴らは決定づけたのだ。

 私はそのウイルスにかかってしまった。
「鏡花……そんな、僕がいたのに。気が抜けていた、本当にごめん」
「二十二ったら、重く受け止めすぎ」私は息を荒げ、言った。「こんなの風邪と同じよ、すぐに治るわ。心配しないで」
「……わかった」二十二は暗い表情を浮かべた後、家を出ていった。それから、数週間彼は帰ってこなかった。私の病は次第に激しくなっていった。この病は薬がなくても、安静にしていれば治るってニュースでやっていたのに……。

 私の病気が悪化していき、入院することになった。すると、ついに奴らが嗅ぎつけてやってきた。
「お嬢様、探しましたよ。お父様からお話があります」
「そのお父様はいないみたいだけど、どうやってお話しするのかしら?」
「お父様はお忙しいため、ビデオ通話でお話しいただきます」すると男はカバンからアイパッドを取り出して、電源を入れた。
「おはよう、久しいね。我が娘よ」そのヘラヘラした表情と言動に私はムッとした。「二十二君は元気かい?」
「あの人は、今お薬を買いに行ってくれていて今はいないわよ?」
「そうなのか、どれぐらいいないんだ?鏡花を一人にするなんて酷いやつだな」未だ私を子供扱いした口調で父はさらに続ける。
「きっと二十二はこの生活が嫌になって逃げたんだ」
「急に何を言い出すのよ!」私の怒りはついに頂点に達した。「そんなの嘘よ!」
「嘘じゃないさ、現にもう数週間も帰ってきていないのだろう?」どうしてそれを……。「この写真を見てくれ、私の部下がとった写真だ。ほら、二十二が他の女と一緒にいるだろう?だから、あんな男とは別れて、家に帰って来なさい」確かに、綺麗な女性のすぐ横に肩を組んでいる二十二の姿があった。
「……信じないわ。私はお父様ほどほど怠惰じゃないもの。いやよ、絶対に帰らないわ!」
「愚か者め、もう良い。そのまま地獄を味わい、死ぬといい」そう言って父は通話を切った。液晶に私の恐ろしい表情が映った。

「鏡花!」二十二がやっと病室にとび入ってきた。彼はひどく息を荒げていて、瞳に涙を浮かべていた。「ごめん。ごめんよ、薬は手に入らなかった。ずっとほったらかしにしていたくせに。守るって言っていたくせに。何一つ守れなかった……ごめん、本当にごめん」彼の声は次第に小さくなって聞こえなくなった。彼は私の枕元で泣いていた。ああ、やっぱり父の言ったことは嘘だった。よかった……。愛してるわ。ずっと。
「僕もだ。僕も愛してる……」

「ああ、僕のせいだ」

茎崎鏡花編 終わり。


*第二話 大切な父 茎崎巴枝編*

 雲ひとつない晴天が屋根の向こうまで広がっていた。

 私は玄関から飛び出して、パパに言った。「行ってきます!」パパは冷たい声で、「ああ」そう言っただけで、扉を閉めた。私はムッとした表情で自分の家のインターホンを押そうと手を伸ばした。「無駄よ」そう呼び止めたのは姉の乙枝お姉ちゃんだ。「どうしてよ!」

「パパはいつもああだから、何を言っても無駄。パパは私たちのことなんか愛してないのよ」

「乙枝お姉ちゃんは何もわかってないのね!」

「わかってないのはあんたのほうよ」そう言って、彼女は通学路を歩き出した。
 

 でも私は知っている。後ろを少しだけ振り向くと、彼が見えた。パパは物陰に隠れ、とても怪しい格好でこちらをじっと見ている。あ、今警察に目をつけられた。「ははは、パパったら」

ジャリついた靴箱に靴を入れて、ひんやりとした上履きに足を通す。まだブカブカがある上履きで、窓から水色の光が入り、照らされている階段を上がった。廊下の中が喧騒とした音で満ち溢れていた。教室に入るとこの話題で持ちきりだった。

「巴枝ちゃんのパパは何の仕事してるの?」

 今日は参観日で、授業でお父さんの職業や、思い出についてこの後発表するそうだ。しかし、「うっ……し、知らない」私は父の職業を知らなかった。いつも部屋にこもっていて何をしているのかわからないのだ。逆に言えば、入浴、食事を作る、トイレ、でしかパパを見かけることはない。

「えー知らないの?昨日先生がお父さんの仕事を知らない人は聞いてくる様にって言われてたじゃん」

「うぐっ、聞いたけど教えてくれなかったなんて口が裂けても言えない」「そうなんだー」「口に出てた?!」


 授業が始まった。「お父さんについて、作文を書きましょう!」そう先生が、言うとさっきの子が余計なことを言った。

「せんせーい!巴枝ちゃん、お父さんが職業教えてくれなかったんだって」

「あらそうなの?それじゃあ、お父さんとの思い出を書きましょう」

「いや、そ、それもないです」恥ずかしくて仕方がなかった。

「思い出もないとか本当に家族なの?それもはや他人じゃん!」

「かわいそう、きっと巴枝ちゃんのこと大切にしてないのよ」

 どいつもこいつも、好き勝手言いやがって。

「思い出があろうが、仕事を教えてくれなくても、私にとっては大切なパパよ!パパは私を愛してくれてるからそれでいいの!」

 パパはいつかきっと、この私に心を開けて、愛してくれる。

「私はパパが大好きです。話しかけても、イタズラしても、怖い顔してどこかへ行ってしまうけれど、私は知っています。本当は私たちのために頑張って働いてくれていて、密かに学校の前まで見張ってくれていることも。パパは私たちのことを愛してくれている。私はそれ以上何も求めません」

それを聞いた、同級生の保護者は人一倍大きな拍手をした。しかし、そこに私のパパはいない。大丈夫。きっと私を愛してくれている。

茎崎巴枝編 終わり。


第三話 愛した人 茎崎乙枝編

 階段を降り、廊下を進むと視界が広がった。

「パパー!今日はいい天気だから、一緒にお買い物行こうよ!」私は、今日こそパパと一緒にあのストラップを買いに行くのだ。

「すまない、今忙しくてな」二十二は両手にコーヒー、新聞を持って颯爽とリビングを出ようとしていた。

「えー今行きたいの!ほら!これがほしいの」私は雑誌を手にしてパパの目の前に持ってきた。私が指差した場所には、絶対誰も買わないだろうランキングダントツ一位の、パソコンマウスのキャラクターキーホルダーがあった。

「やめてくれ、俺だって本当は一緒に行ってやりたいんだ」

 そんなこと言ったって……。買い物に行きたいもの行きたいのに。そんな言い方ひどいよ。パパは私のことどうでもいいの?

「もういいよ!」私はそう吐き捨てると、ずかずかと音を鳴らしながら、階段をのぼり、自室に入った。

「パパに見てもらうためにはどうしたらいいんだろう」私はそう考える様になった。

「そうだ、学校を使おう。そうすれば、巴枝もスッキリするだろう。どうやって、学校にパパを呼び出そう?あ、理科室を爆破しちゃお。いや、いくら何でもやりすぎか……」私は寝る間もさいて、作戦を考えた。「そしてそこでわざと怪我しよう。ははは、絶対にすごいことになる!そしたら、絶対パパは見にきてくれる!」

 翌日、学校に行くといきなり怒鳴り声が聞こえた。生徒たちの視線は一点に集まっていた。その視線の先には、清掃員の貴村さんと、一年A組担当の吉名先生の姿があった。

「どうしてゴミを捨てる時間を間違えた!」

「だから仕方なかったんだ」

「生徒が授業中の時にゴミを捨てろと決まりがあるだろ」

「外せない急用があったんだよ!」

 そんな会話からは、二人の仲の悪さが伝わってきた。廊下の片隅から、ヒソヒソと声が聞こえた。「あの二人本当は仲がいいのに、いつも喧嘩ばかりよね」「ねー、きっと他の生徒から犬猿の仲だって勘違いされちゃってるわよ」

 犬猿の仲、か。何か使えるかもしれないわね。と、今は理科室ね。


 私は理科室から薬品を入手するために、職員室へ倉庫の鍵を取りに行った。

「失礼します、補修室の鍵を取りにきましたー」そう言うと、私は職員室に入って、鍵がかけられているボードにまで行った。事前に用意していた、4センチぐらいに切り取った、ビニールテープを補修室の鍵のタグにはり、補修室の鍵を理科室倉庫のフックにかけた。

「失礼しましたー」無事に理科室の鍵を盗めた。私はそのまま理科室に行き、倉庫から二つの薬品を盗んだ。一つは「過マンガン酸カリウム。もう一つが、硫酸。この二つを混ぜるだけで大爆発を起こせる。これで惨事を起こせば、パパは私を心配になって見にきてくれる」

 私の計画は完璧だ。このままでは、私が自分で爆発を起こしたと思われてしまう。でも、みんなが授業中の間に、ゴミ箱に爆弾を設置しておけば、ゴミ箱に爆弾を設置したのは清掃員の貴村さんになる。準備は整った。


「あああ!いたああい!」爆音と共に私の悲鳴が学校中に響き渡たる様だった。「すごい音がしたぞ!」「女の子が倒れている!」たくさんの人が音を聞きつけて、やってきた。

「な、何だこれ。ゴミ箱がぐちゃぐちゃだ」

 ここからは、こいつらが勝手に進めてくれるわ。私は心の中で微笑んだ。
「いったい誰がこんなことを」

「でも授業前、ゴミ箱使ったぞ」

「つまり授業中にゴミ箱の近くにいた人」

「清掃員のおっちゃんだ!」

「でもどうして?」

「吉名先生がここよく通るよな」

「まさか、喧嘩が行きすぎて」

「嘘だろ?じゃあつまり、貴村先生が、吉名先生に怪我させようとこんなことをしたってことか?!」

「でも、たまたまこの子が、ゴミ箱に近づいてしまったってわけか」

「はは、最低だな。先生が生徒に怪我負わせたぞ」

「貴村も大人のくせに生徒の前で喧嘩するとか大人気なすぎな」

「あの二人、学校辞めさせようぜ」

「サンセーイ」

 う、嘘でしょ?私の唇が小刻みに震えた。まさかこんなにうまく行くなんて!信じられないわ。私は笑みを必死に抑えた。

 気分が良かった。吉名先生には仮があったから、今日返せせて本当に良かった。少し前に巴枝がこんなことを言っていたから。

「私ね、ちょっと失敗しただけで私の人間性を疑うようなことを言われて」

「もし、その先生とあったら、酷い目に合わし返してやる」

「いいよそんなの」

「いやだめよ。絶対許さないんだから」

 しかし、私の作戦に予想外なことが起きた。担架を持った保健室の先生がやってきて、乗せられたその時だった。

「ちょっと待って!」メガネをかけた女子生徒が声を張って、その場に割り入るように言った。「清掃員さんは絶対にそんなことしないよ!」

 内心とても焦ってしまった。もし二人が本当は仲がいいなんてことがバレれば、授業中に教室を抜け出した私が疑われてしまう。

「は?お前、肩を持つのか?」

「さては、清掃員に言われて、お前が薬品盗み出したんじゃ」

「えー最低だな」

「ちが、私は何も……」メガネの女子は細々と言った。

「聞こえないなぁ、さっきみたいにもっと大きな声で言ってもらわないとなぁ」

 ひやっとさせられたけど、うまく行った。もう私の勝ちよ。さあ、パパ、私のために見にきて!


 しばらくすると、パパが学校にやってきた。

「パパ、きてくれたんだ」私は被害者を演じた。するとパパは私に優しくこう言った「怪我は無いか」

「うん!心配してくれてありがとう」やった、パパに心配された。私の心の中はずっとウキウキだった。でも、これだけでは終わらない。ゴミ箱の中にはあれがある。パパはそれに絶対に気づく。

「あの、先生。これ持ち帰ってもいいですか」

「どうでしょうか。多分、証拠になるのでだめだと思いますよ」

「そうですよね」と言いながら、パパはそれを手に取りこっそりポケットに入れた。すると、貴村と吉名がやってきて、私たちに頭を深々と下げた。
「まことに申し訳ございませんでした」

 その姿を見ると、笑いが込み上げてきそうで、堪えるのに私は必死になった。

 今後の教員の処置や、何やらと話を終え、私たちは家に帰ってきた。するとパパは私の願い通り、あの質問をしてくれた。

「今回の騒動、お前がやったようだな」

「ふふーん、そうよ!すごいでしょ」

「そうか……」パパは辛そうな表情で俯いた。「もう自分を傷つけることはやめなさい」とそっけなく言った。その発言に私の腹が煮え繰り返った。

「え?それだけ?どうして?どうしてもっと怒ってくれないの?どうしてよ!」私は声を荒げて、パパのお腹を殴った。

 もう、どうでもいいや。パパは私をどうしても愛してくれない。私は家を飛び出して、冷たい夜の中、暗い路地裏で小山座りしていた。

「ああ、もし私が巴枝を殺したら、パパは私を見てくれるのかな……」

「そうね、きっとあなたに釘付けよ」一葉はそう言ってくれた。

「あはは、あははははは」

 ズドン。ズドン、ズドンズドンズドンズドン!

茎崎乙枝編 終わり。


第四話 ぼっち牢獄 茎崎二十二編

 この街に警察が介入したのは1っか月もした頃だった。そのせいで、死亡率は格段に上がった。互いに殺し合いをした街の人々は、重傷を負っていたが、救急を呼んでも誰もこなかった。
「この僕が牢獄に入らない?」僕は声を荒げて言った。
「ああ、そうだ。お前は何の罪にも問われない」
「そんな、そんなの間違ってる!」
「何を言っているんだ」
「僕は犯罪者なんだ!!」
「お前、やめろ!!」
 そう言って、僕は警官の銃を奪い、撃ち放った。

 その銃弾は警官の腹部にあたってしまい、刑務所に入ることが決定した。

「僕を殴ってくれ」僕は同室の囚人に声をかけた。
「は?」
「僕をボコボコにしてくれって言ってるんだ」罰をとにかく欲していたからか、その囚人が持っていたパンをはたき落とした。
「ってめぇ何しやがる」
 喧嘩が始まって、僕は半殺しにされる。

 看守はため息をついて、僕に言った。
「被害性愛者、マゾビズムのお前はしばらく独房で一人にする。そこで頭を冷やせ」

「僕に罰を……」

茎崎二十二 終わり。


第五話 さみしい、さびしい 一葉編

 私の家は、本当の私を認めてくれなかった。周りの人間は誰一人、本当の私の存在を知らない。ずっと私は一人だった。

 だから、私は誰も一人にしたくない。させない。だって、みんな家族だから。一緒にご飯を食べて、一緒に眠って、一緒に笑う。そんな幸せを送りたかった。

 私の存在を理解してほしい。この気持ちを理解してほしい。

 血を見ると温もりを感じ、幸せがその場にあると壊したくなる。一緒に肉を削ぎ、一緒に人を土にかえし、一緒に笑う。
 私が大好きなお話に出てくる、大好きな主人公はこうだ。主人公が人々を殺しまわって、大切なものを奪い去り、人の幸せを壊すことに何の躊躇もしない人。

 私の足が冷たい廊下を渡る。

 ただ他人事のように物事を処理する人が好きだ。そこに罪はない。それが人間なのだ。習性だから仕方ないのだ。逆に本性を隠し、普通を装っているやつは大嫌いだ。

 私はそんな一緒に笑いあう主人公に憧れた。

一葉編 終わり。

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最後まで読んでくれてありがとう!!
無事今日中に5作品を執筆することができました。🙇

それでは、おやすみなさい。また明日👋

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