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笹本恒子著『お待ちになって、元帥閣下』毎日新聞社

 お昼のトーク番組で柔和な笑顔でお話をなさっていたのを拝見した。キャプションにはフォトジャーナリストと書かれている。その優しく温和そうなお顔と美しく丁寧な言葉は私の勝手に想像するフォトジャーナリスト像のそれとは全く違い、どういうことだろうと思い、番組の途中からそのまま最後まで視聴したことを覚えている。トーク中、フラワーアレンジメントを教えられていたこともあるなど途中から番組を見始めた私には全くその内容が掴めず、ますますフォトジャーナリストと書いてあるキャプションに謎が深まるばかりであった。そんな中で、細部の言い回しは忘れてしまったが、今の若い方々は頭でお考えになって先ずやってみるというとこがあまりないように思います。好きなことがわからないとおっしゃるから、お習字なんてどう?と言っても「私なんて」などどおっしゃって…というお話が、何かにつけ「私なんて」と言ってしまう自分にドーンっと響いていた。けれど、その時はそれっきり、何だろうなぁと思いつつも、何を調べるでもなくお米よりもパンが好きで健康法は毎日1杯のワインと仰るチャーミングな写真家の方という印象だけで、私は再び、時折「私なんて」という思いが過ぎる生活に戻っていった。
 そして、ついに昨日の図書館でのこと。何気なく書棚を見ていると目に入った今回の著書。寝る前に読もうと横になって本を開いたが最後、蚊に噛まれるのもそのまま、夢中になって読み続け、気づけば夜明けが近くなっていた。画家を志したが報道カメラマンへ転向その後ドレスメーカー、フラワーアレンジメントの先生、創作アクセサリーとお洋服のブティック開かれたりとさまざまな職業で結果を残されている。こんなにもめくるめく世界があるのだろうか。あの時におっしゃられた言葉の重みが改めて感じられた。詳しく記されるカメラマンとしての数々のエピソードにも、あの時チラと拝見しただけでフォトジャーナリストとキャプションされていることを謎だと思った自分の見当違いもいいところであったことを反省した。


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