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「11月の珈琲 Costa Rica:色が押しよせる」

秋の色が押しよせるなか、カメラを構えるキミのことを思い出した。

CostaRica:色が押しよせる
ふりかえったその先に
カメラを構えるキミを見つけた
アカキダイダイチャミドリ
四方八方から押し寄せる色のなか
シャッターを切る音が
たしかに聞こえた
押しよせ、そして、溢れだしていく酸味

その街には、駅の近くに大きな公園があった。

確か、中学生のころ、遠足できたことはあったけれど、友達と話すことに一生懸命になっていたせいか、なにがどこにあるかをすっかり忘れていた。

ただ、駅を出て、まっすぐ歩けば、大きな公園がある。

そのことだけは、おぼろげに覚えていた。

一年を通して、観光客が多いこの街だけれど、今日は特に多いのかもしれない。

駅からあふれ出るたくさんの観光客に飲み込まれそうになりながら、いまひとつ思い出せない街のなかに飛び出した。

記憶のなかにある公園へと向かうと、木々はすでに紅葉していた。

ときおり、吹く風が枝を揺らし、葉を落とす。

上を向いても。
下を向いても。
右を向いても。
左を向いても。

アカキダイダイチャミドリ。
360度が色で埋め尽くされている。

四方八方から秋の色が押しよせてくることを感じた。

こころが奪われ、時が止まる。

我に返ったのは、シャッターを切る音が聞こえたときだった。

その音を頼りにふりかえる。

そこには、カメラを構えるキミがいた。

駅からあふれ出た観光客はこの公園にもたくさんいたはずなのに、わたしの前にはキミしかいなかった。

11月の珈琲「CostaRica:色が押しよせる」のコクの奥からじわじわしみ出してくる酸味は、紅葉を見に行った街でのワンシーンを思い出させた。

キミが撮った写真は思い出せないけれど、秋の色が押しよせるなか、カメラを構えるキミのことはしっかりと記憶のなかにある。

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