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「させていただきます」のワナ

「させていただく」症候群。

これも文化のひとつとプライべートではスルーしますが
仕事となると、安易に見過ごすことはできないのが現実です😢。
(試験の合否や、本人の評価に関わってしまうため)

なぜ、こんなにも言いにくい、まどろっこしい表現が、
つい私たちの口から出てしまうのでしょうか。

1.「させていただきます」のリスク


❶ 発音上のリスク

言いにくい。
させて←サ行の連続〕+〔いただく←タ行の連続〕
=滑舌の点では難度高めの語彙です。

一方、「~いたします」
スマートで言いやすく美しい響きを持っています。

にも関わらず、こんなにも使われている背景には、
言葉が短い=尊敬度も低いと感じてしまう心理があるようです。

❷ 相手との心の距離に関するリスク

丁寧、謙遜、尊重など心情を入れすぎた結果、
かえって心の距離ができてしまう語彙のひとつです。

事務的で冷たい言い方に聞こえたり、一方で、
慇懃無礼な印象を与えてしまうリスクも持ち合わせています。
ex.「確認させていただきます」
 「お作りさせていただきます」など

逆に、適切な使い方と表現ができれば好印象ですね。

❸ 二重敬語になるリスク

× 「お伺いさせていただきます」 
  伺う(謙譲)+させていただく(謙譲)=二重敬語
  正しくは「お伺いします」。

× 「拝見させていただきます」
  拝見(謙譲)+させていただく(謙譲)=二重敬語
  正しくは「拝見します」。

❹「さ入れ」言葉になるリスク

×  「読ませていただきます」
×  「行かせていただきます」
×  「待たせていただきます」

これは、使役動詞の「させる」「せる」の付け方を混同した誤りです。
※さ入れ言葉 のワナ(後日公開)

2.なぜ「させていただく」を使いたくなるのか

▶言語学者 椎名美智 さん解説 “敬意のインフレーション”

椎名さんのインタビューで、わかりやすく述べられています。

ーー人はなぜ「させていただく」を使ってしまうのでしょうか。

椎名:「させてくださる」と「させていただく」を比べると、「させてくださる」は主語があなたなので、言葉であなたに触れてしまうんですが、「させていただく」は自分が主語なので、あなたに触れずに丁寧になって距離感が出せるので、無難なんじゃないでしょうか。特に、「あなた認知」の動詞は、距離感のある「させていただく」と一緒に使うと、遠近両用っていうか、押しつけがましさが薄れて、ほどよい距離感が演出できるからだと思います。

 アーヴィング・ゴフマンというアメリカの社会学者がいるんですけども、丁寧さを示すには、相手に敬意を伝える「表敬」と、私は品性がある人間ですという「品行」を示す方法がある、といったことを言っています。「くださる」はあなたが主語なので表敬の敬語ですが、「いただく」は自分が主語なので自分の話として、「自分はちゃんとへりくだることのできる謙虚な人間ですよ」ということを示す「品行」の敬語です。もしかしたら、敬語は時代と共に「表敬」の敬語から「品行」の敬語へとシフトしていて、その現れとして「させていただく」が使われるようになったのかもしれません。

出典:人はなぜ「させていただく」に違和感をおぼえる? 

文・取材=土井大輔

このインタビュー、椎名さんの口調が和やかに伝わってくる気がして、大好きな記事です。

椎名さんの著書は、授受動詞、人間関係、社会変化に伴う敬語の変遷を、調査研究、考察した興味深い一冊です。

3.「させていただきます」がOKなシーン

①相手から許しを得るシーン

「変更させていただきたいのですが……」
「この場所は禁煙させていただきます

②相手から恩恵を受けるシーン

「資料を見せていただけませんか」
「視聴させていただきたいのですが」

4.「させていただきます」が違和感のあるシーン

▶誰からも許しや恩恵を受けないシーン

「このたび、結婚させていただきました」
「○○大学を卒業させていただきました」
「司会を務めさせていただきます○○と申します」

特に3つめ「本日の司会を‥‥‥」は、台本でよく見るフレーズです。個人的には、「させていただく」を敢えて付ける場合と、「務めます、担当いたします、仰せつかった」などと言い換える場合と、状況により使い分けをしています。

あとがき

きょうも、脳トレのつもりで、言葉を絞り出しました💦
相手との関係性によっては、正解も誤りもないし、
自分も「させていただく」を多用することもあります💦

最後まで、目を通してくださりありがとうございました




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