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[スウェーデン] 性教育/ユースクリニック

留学中に行なった、スウェーデンの性教育実態の調査結果をまとめる。

・ ユースクリニック

ユースクリニック
・スウェーデン国内に約250存在する、公的な医療機関
・市によって異なるが、基本的に18歳〜25歳の若者が無料で利用することができる。
・友人や家族関係の悩み、セックスに関する疑問、性感染症に関する相談、避妊、緊急避妊、たばこ、アルコールの問題、デートDVなどを、常に交代制で勤務している助産師、看護師、臨床心理士、産婦人科医に相談することができる。
・低用量ピル、避妊具、緊急避妊薬など18歳以下は無料で手に入れることができる。それ以上であってもこれらを安価に手に入れることができ、妊娠検査や相談を無料で受けることができる。
・保護者の同意を得る必要も保護者を同伴する必要もない。ユースクリニック側も保護者に個人のプライバシーを知らせることはない。
・スウェーデンの若者のうち9割はユースクリニックを利用したことがあり、そのうちの2割は10回以上利用したことがある。
・留学生や移民であっても、国や移民曲が発行する個人ナンバーを持っていれば利用することができる。

<2019 12/20 ユースクリニック訪問>

訪問の前に、youmo(若者のセクシュアリティヘルスのためのサイト: https://www.youmo.se/en/ )で事前予約を行う。サイト自体は英語やアラビア語なども含む6言語に翻訳されているが、スウェーデン語表示のみのページも多い。

ユースクリニック自体はアパートの一室に構えられていて、インターホンで名前など簡単な情報を伝えなければ入室できない仕組みになっていた。
もちろん英語が通じるので、スウェーデン語がうまく喋ることのできない移民や留学生でも大丈夫。

入ると待合室のようになっていて、番号の書かれたカードを受け取って名前が呼ばれるまで待つ。ユースクリニックの内部は、手前に待合室、その横に性教育が行われる小さな会議室、看護師や助産師などのスタッフひとりずつのデスク兼診察室、バスルーム、バスルーム横の検査室、一番奥にスタッフルームという作り。

インタビューした助産師さんの言葉

・カールスタード(私が留学していた都市)は21歳までユースクリニックで受ける全てのことを無料で受けることができる。
→市営施設のため、その地方自治体の財力にサービスが大きく異なる
・処方箋の提供から実際の処置まで幅広く行う
・年間で800人ほど訪れる
・ユースクリニックは「free-space for every young people 」

2020-04-24 13.29のイメージ


もし日本に住む私たちが性について疑問や不安を持ったとき、誰に相談すれば良いのでしょうか。産婦人科や婦人科、学生であれば保健室で相談することができるでしょう。しかし実際に、自分の足で訪れる人はどのくらいいるのでしょうか。

つい最近友人に、新型コロナウイルスのための外出自粛の影響で10代の妊娠相談が増えている状況についての記事を教えてもらいました。

これが日本の現状で、残念ながら今の日本にはユースクリニックのような「性」のためのメインプラットフォームが完成されていません。
そのため婦人科に相談しづらい、親にバレたくない、そもそも誰に助けを求めれば良いのかわからないなどの理由から、性被害を受けた・性交渉に失敗したけれど誰にも助けを求められない若者が大勢います。

一方スウェーデンでは、性教育において「性的同意」を教えることを何よりも大事にします。小学生の段階から、ロールプレイングを通して「他人に同意なしに体を触られたらどう思うか、触ったらどう思われるのか」「好きな人を大事にするということはどういうことか」を学びます。もし大人になっていく途中で不安や悩みを抱えても、受け止め助けてくれるユースクリニックというプラットフォームがあります。たった13歳の子供でも友達を連れてユースクリニックを訪れます。
つまり、若者に対して “好きな人を大切に、その段階で困ったことがあったらいつでもどこでも必ず助ける” というのがスウェーデンの変わらないスタンスであり、若者も自発的に助けを求めることができます。

いますぐに日本にこのような若者のための公的医療施設を作ることは難しいですが、現在各自治体の病院は低用量ピルや緊急避妊薬のためのオンライン診療を開始しています。


いつでも手を差し伸べる性のプラットフォームづくりを進めると同時に、
若者が助けて欲しいときに「助けて」と素直に言うことのできる性教育がこれから大切になってくるのかもしれません。


<参考>
・youmo
https://www.youmo.se/en/
・RFSL
https://www.rfsl.se/en/


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