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親友へのラブレター

私には二十年来の親友がいる。

ダンスという趣味を通じて知り合った彼女とは、他にもいくつか共通点があった。ミュージカルや歌舞伎が好きだったり、美味しいものが好きだったり。

見た目は小柄な彼女とのっぽの私、という凸凹コンビだが、発想力の高い彼女とそれを現実に落とし込む私という何かを行うときの役割分担も自然とできるような二人だった。

海外で暮らすということを考えたこともなかった私に、行ってしまえ!と後押ししたのも彼女だった。

長い付き合いなので、お互いの長所も弱点も家族以上に知り尽くしている。

私がヨーロッパに住み始め、距離が出来てからも、一か月に一度くらいは無料通話アプリで長電話していた。当初はまだ国際電話だったけれど。

去年、世界中の情勢が変わり、ヨーロッパでも多くの都市でロックダウンとなった。私の住む国、都市もご多分に漏れず、他者との関わりを絶たれ、同居する家族以外の第三者との接触禁止が長らく続いた。

ちょうどその頃、日本でも自粛ムードが高まり、緊急事態宣言が発令されたりと、外出もままならないような日々が始まってしまう、ということで、それなら暫く毎週話そうか、と提案した。

ヨーロッパとの時差は8時間(夏時間だと7時間)。日本の夕方、ヨーロッパの午前中から開始して、長いときには9時間を超えて話し続けていた。今、世の中が、人々がどんな状況にあるのか、自分がどんな状態なのか。どんなささやかな喜びがあったのか。

長引けば長引くほど、通常の生活では見られなかったような自分の不安定さを感じることが多くなってきた。

抑圧され、圧迫感を感じる日々。そんなときに、そのときの行動形態や考えていることを話すと、彼女は客観的に、過去の私の言動も踏まえて分析し、今、私がどんな状態に陥っているか、いつものように元気を取り戻すにはどうしたらよいかをアドバイスしてくれた。逆に、私が彼女にアドバイスすることもあった。

そんなことを繰り返しつつ、一年半近く経った。

今の私たちは、最強だ。

自分自身の取扱説明書は持っていないけれど、お互いの取扱説明書を持っている。自分自身のことはわからなくても、お互いのことは自分以上にわかっている。

だから、大丈夫。
困ったら、戸惑ったら、苦しくなったら、楽しくなったら、嬉しくなったら、いつでも彼女に話せばいい。

きっと、私にとって最善の答えをくれるから。

いつも、ありがとう。

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