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今しかできないことをする。



 病気が見つかってから、物事の捉え方が少し変わったような気がします。うまく表現できないけれど。今思いつく言葉で言い表すなら、「今を大切にする」という感じです。手術するということは、命を落とす確率がほんの少しだけでも存在する。だから入院までにできることは全部して、思い残すことがないようにしよう。こんな風に考えて、つらい中でも後悔のないように行動していました。

 この記事には、告知から入院までの間にしたことを書いていきたいと思います。

髪を染める

 一度も髪を染めたことがないまま、大学卒業を迎えようとしていました。実はずっと金髪に憧れていて。染めてみたい気持ちを抱いているものの、実習のことや染め直す手間について考えているうちにここまで来てしまいました。卒業したら明るい髪色にできないし、せっかくだからと思い切って、金髪にすることを決意。告知の3日後には美容院の予約を入れて、髪を染める日を決めました。
 大学の同級生に紹介してもらった美容室で、初ブリーチと初カラーをしてもらいました。色落ちまで計算して染めてもらい、喜びで胸いっぱいになって家に帰りました。家族からも友人や先生からも好評でした。何より鏡を見る度に自分が幸せになれるので、染めてよかったです。

会いたい人に会う

 これは、入院前に滑り込みで行動に移しました。1年以上前から、大学卒業後に会おうと思っていた人がいました。「会いたいです。」と連絡するか、悩んで悩んで。予定より少し早いけれど、今しかないから。そう思って、連絡しました。翌日、彼女から嬉しいお返事が届きました。突然だったにもかかわらず、会ってもらえることになったのです。会える日が本当に楽しみで。期待に胸を膨らませて、数日間過ごすことができました。
 久しぶりに会った彼女は、髪色が明るくなった私を見てとても驚いていました。一緒に夕ご飯を食べながら、たくさん話して、笑って。ずっと伝えたかった言葉を、顔を見ながら伝えることができました。会えなかった時間以上に、幸せな時間を過ごしました。彼女と別れて、電車に乗って、家に帰って、お風呂に入って、眠りにつくまで。ずっと心がぽかぽかしていました。

何気ない時間を過ごす

 友人との時間をもつことも大切にしていました。卒業まであと少しということもあって、一緒に居られる時間が貴重だったのです。友人を訪ねることもあれば、大学の帰りにふらっとどこかへ寄っておしゃべりすることもありました。ひとりでいることがつらい私にとって、ほっと一息つける大切な時間でした。そんな時間を作ってくれたことに、「ありがとう」の気持ちでいっぱいです。
 あとは、しゃぼん玉をしました。久しぶりにしたいなと思ったまま、ずっと延び延びになっていて。せっかくだから写真もたくさん撮りたくて、入院前に付き合ってもらいました。平日に昼間の公園で、子どもの頃に戻ったようでした。その日は雲ひとつない青空が広がる、暖かい日でした。手がべたべたになっても、うまくしゃぼん玉が作れなくても。全部全部楽しかったです。現像してみるとうまく撮れていないものもありましたが、それも含めて思い出になりました。

 こんな風に楽しみを作りながら過ごすことで、入院まで気力を保つようにしていました。

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