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退院の日。



眠れない

 朝4時頃に目が覚めました。いつもは途中で起きてもすぐ眠れるのに、この日は1時間経っても寝付けませんでした。退院に向けての不安が大きかったのかもしれません。病棟が朝モードになるまであと1時間。個室とはいえ、かなり早い時間に部屋の電気を点けるのは抵抗がありました。どうするか悩んでいたとき、前の晩に「早く起きてしまったらナースステーションに来ていいよ。」と看護師さんが言ってくれたのを思い出して、病室を出ました。
 部屋を出たものの「起きてしまって眠れない。」と看護師さんに声をかける勇気がなくて、ナースステーション近くのソファーに座っていました。忙しいのにそんなことで声をかけていいのかと思って、ナースステーションに行くか悩んだのです。ところが5分もしないうちに担当の看護師さんが偶然出てきて、話し相手になってくれました。しばらくしたら担当さんがナースコールで呼ばれたので、選手交代。途中から別の看護師さんがおしゃべりに付き合ってくれました。看護師さんふたりのおかげで、部屋で寂しい思いをしたりぐるぐる考えたりせずに朝を迎えることができました。

私の部屋じゃなくなった

 母が迎えに来てくれるまでに着替えて、荷物をまとめて。片付いた病室を見ると、少し寂しくなりました。何日も暮らしていた部屋なのに、今朝までと違う部屋に見えました。
 看護師さんによる忘れ物チェックが終わって落ち着いたころ、師長さんが来てくれました。退院が決まってから私が不安定になっていることは看護師さんの中で度々話に上がっていたようで、師長さんも心配していたそうです。少しお話した後、改めて感謝の言葉を伝えてお手紙を渡しました。師長さんに渡せば、確実に看護師さんたちに読んでもらえるでしょう。これで、今日はいない受け持ちさんにも感謝の気持ちを届けられるはずです。

「お世話になりました。」

 予定より少し早い時間に母が到着。精神腫瘍科の先生と認定看護師さんが、4月からのことや退院してから気をつけることについて母に説明してくれました。これで安心して退院できます。休職するかは退院後の体調を見て最終決定することに決まり、私は荷物を取りに病室へ戻りました。
 ナースステーションを覗くと、たいさんがいました。たいさんの前で泣いた日から会っていなかったし、お世話になったのでお礼を言いたくて。声をかけると、出てきてくれました。最後に会ったとき私の元気がなかったので、心配していたそうです。数日前よりはほんの少し元気な姿で、退院する前にお礼を伝えられてよかったです。
 荷物を持って、ナースステーションの前で再び母と合流。何人か看護師さんが出てきて、見送ってくれました。その中に、れごさんとたいさんもいました。見送ってくれるみなさんをひとりずつ見て「ありがとうございました。」とお礼を言うと、また少し涙が出そうになりました。振り返りたかったけれど振り返らずに、病棟を出ました。


▽ 続き

▽ まとめ


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