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旅立ちの春が来た

3月下旬、コートをしまうにはまだ早い。この冬ですっかり出不精へと逆戻りしてしまった僕は、同い年であり先輩でもある仲間の門出を祝うために大学へと向かった。

見慣れぬ装いをしている同級生を眺めながら久しぶりのキャンパスを歩く。四方八方でカメラが構えられ、その邪魔をしないようにするだけでも精一杯だった。どこか成人式を思い起こさせる光景であったが、あれはまだ2年前の出来事だというから驚きだ。

心理的な時間の長さは年齢に反比例するという『ジャネーの法則』は本当にあるのだろうか。大学の3年間は高校のそれ以上に長く感じる。学生生活を喜怒哀楽の様々な感情で満ちたものに出来ているのなら本望だし、あと1年この生活を続けられるというのなら幸せなことこの上ない。


大学4年生ともなると、どこへ行っても2言目には来年からの進路を問われるのが性である。結論から言えば、とりあえずは今のインターン先で働き続けることが決定した。裏を返せばそれが決定しているだけであって、自分の将来像は3年以上先まで描けない。

少しずつでも自分のやりたいことが形になっていけばそれでいいのだと思うけれど、1つだけ未来の自分に期待したいのは某組織委員会会長のようにならないということ。

例の応援ソングの一説に『昔はよかったねと いつも口にしながら 生きて行くのは 本当に嫌だから』という一説があるが、自分の経験と偏見で縁取られた色眼鏡をかけて、関係範囲と視野が狭くなって行くこと程怖いものはない。

夏になったら避暑地で、冬になったら南の方で、美味しいものと秘湯でも探しながらしばらくはゆっくりと働いて行こうと思います。


僕の中で卒業式というイベントはくすんだ色で覆われていた。離れたはずの地元中学で出席した『2部卒業式』は人生で最も逃げ出したい瞬間だったし、受験浪人が決定していた高校の卒業式に関しては思い出がほとんどない。

そんな卒業式を晴れの舞台として迎え、仲間送り出せた事がなによりも嬉しい。斜に構えて過ごしてきた僕にこんな気持ちが芽生えたのも、多くの出会いが学生生活を彩ったからに違いない。


一歩先に大人の世界に踏み出すみんなへ、卒業おめでとう。今日は綺麗事を吐かせてくれ。

〜2ヶ月前の下書きより〜

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