性と精
私は子供の頃に大人になりたいと思った。
気づいたらセクシーな女性がいる本をよく見ていた。
初めての興奮はそれなのかもしれない。
同性愛という訳でもないが、憧れを抱いた点では肉体美を持つ女性に対する気持ちは恋心だったんだろう。
思春期になると春画やアダルト雑誌にも理解を得た。
いつも私が思うのは興奮するという感情はその造形だということ。
行為ではないということだ。
いつしか私もその作品になりたいと思い、被写体をするようになる。
初めて男性に室内で撮られた時、今でいうセクハラをされた。
当時二十歳前後の私はどうしていいかわからず、ただひたすらに苦笑いで拒絶する他なかった。
二十一歳になると、ネオン街に入門し
煌びやかなドレスと共に男たちの相手をするようになった。
楽しかった。
ものすごく疲れるけど。
そして以前より良い収入を得られた。
普段会えないような人たちに会えるのは、ものすごく面白いことだった。
ここでも体のことを言われた。
気づけば私はグラマーというジャンルの体型をしていた。
その頃は被写体を辞めていた。稼げないからだ。
というより、飲みすぎて起きられないが正しいかもしれない。
二十三歳になると色目を使われることに疲れ果て露出の頻度を減らした。
夜の仕事は地味に続けていた。
私はそういう服が好きで着ている。
無論、たぶらかすためではない。
確かに十四歳の頃はモテたくて始めた服装だったが軽率だ。
そんなことでモテたってメリットがないからだ。
二十代というのはこんなにも早いのかと思うほどの速度で過ぎていく。
今の私も、露出は減ったものの造形を意識するタイトな服が好きなため、数々の異性から声をかけられたり時には失礼なことに、サイズを聞かれたりする。
恥ずかしくもなんともないが、気にしているという仕草をするのが負けた気持ちになるので私は堂々とサイズを自慢げに答えるのだ。
これで満足?ときつい目でな。
私と寝たがる男は日本にとどまらず海外の方も多々見えた。
異性の心理なんぞ。万国共通なんだと思った。
言っておくが私の仕事は寝ることではない。
今は夜を辞め、音楽とモデルをしている。
愛する旦那も恋人もいない。
自由なのでどこで誰と寝たって構わない。
だが、猛烈に異性と密室になりたくないのだ。
接吻をしたがらないで
触れたがらないで
そう思って生きている。
声をかけてくれるのは嬉しいことの筈なのに。
いつしかタダで話してることが阿呆らしいと思ったり、どうせ体目当てでしょ?と思ったり。
そうでない人からしたら失敬な話であり、私もこんな自分の気持ちが嫌いだ。
ならどうしたらいいのだ。
好みでもない服を着て、メイクも変えて、別人になればいいのか?
冗談じゃない。
男の機嫌を取るために生まれたわけじゃない。
私の性は、精神は。
私が好きに生きるために備え付けられたのだ。
先日大好きなライブにわざわざ休みを取って行った際に、見知らぬ男に露出のある服を着るなと
ありがた迷惑アドバイスを頂いた。
面倒なため、一応謝っておいたが内心は火山の如く怒りまくっていた。
なぜ好きな服を着て好きに生きたらならないのか。
あなたに迷惑をかけたのだろうか。
むしろそんな目で私を見てしまう心の汚さに、私は一層落ち込んだのであった。
理想の未来はまだ遠く、見えない。
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