見出し画像

猫のいない庭①

この話は読んでいくうちに変化していきます。

第一話『引越し』

私は百猫市に引っ越した26歳作家だ。
元は都内に住んでいたが、パンデミックで仕事が減り家賃が払えず渋々田舎に引っ越してきた。
出身は神奈川だが、親元に帰るのはどうも私の性格上難しく、全く知らない街に引っ越してきたというわけだ。

この辺りは温泉などが有名らしい。ググって見つけた土地だが家賃も安く、近隣の人も色々教えてくれる親切な場所だ。

近くに大きい道路もないので、ゆっくりと新しい案を考えることができる。
正直な話、都内でなくてもよかったのだと今は思っている。

社交性もあまりなく、友達も少ないくせに出版社が近くて便利だから住んでいたが近いとそれはそれで不便な事情もあったし、離れていても資料は送れるので新しい生活を謳歌しようと思う。

私の家から1キロくらいのところに小学校と中学校がある。田舎なのでエスカレーター式の学校らしい。
小学生と中学生が一緒に帰ってるところを数回だが見かけたことがある。

街のほとんどは高齢者だ。
近くのカフェに行くと、シニアの井戸端会議だろうか?行われている。
壁には『人気!カステラ!』と書いてある。
頼んでみたが懐かしいような味がした。

私は折角なので一軒家を借りた。結婚する気もないのだが、有意義な生活をしようと思った。
庭に花を埋め、一人はなんだか寂しいと思い猫を飼うことにした。
猫は自由なのがいいところだと思う。犬は可愛いが散歩したりしないといけない点、私の不規則な生活には合わないだろう。

第二話『みぃちゃん』

保護猫募集のネットワークから一匹の猫をみつけた。
『みぃちゃん 5歳 メス』
みぃちゃんは白と黒の模様が特徴のハチワレという種類の猫ちゃん。
みぃちゃんは飼い主が高齢だったため亡くなってしまい、今娘さんに預けられてるのだそう。
娘さんと連絡が取れて電車で20分くらいの距離なので私は次の日にみぃちゃんに会いにF市S駅に行った。
『遠くからどうもありがとうございます。みぃちゃんです。』
『どうも、わざわざありがとうございます。』
みぃちゃんはシャイなのだろうか、猫だからなのかお尻を向けている。ゲージに入れられているのが不愉快なのかはわからない。
『もしよければ、三日間ほど預かってみてから飼うというのはいかがでしょうか?』
娘さんにそう提案され、私もきっとそのほうがいいと思いそうすることにした。

『失礼ですが、娘さんはみぃちゃんを飼えないのですか?』
『私はいいのですが、主人が猫アレルギーでして、、今も別の部屋にみぃちゃんを閉じ込めてる形になってしまってストレスになると思い』
『そうでしたか、、それは大変でしたね。わかりました、三日間預からせてください。』
そうしてみぃちゃんを私は預かることにした。

猫の嫌いなものを調べ、邪魔にならないように徹底的に部屋を掃除した。
そして少し遠いがホームセンターにいき、ペットショップのお兄さんに猫の飼い方を詳しく教わってきた。
私の中ではいつでも大歓迎スタイルだ。

さて、みぃちゃんは気に入ってくれるだろうか。


(続)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?