【推し活免許証】②アイドルオタク、日空

しょう日空ひそらは、近所のファミレスでドリンクバーと軽食をつまんでいた。
翔はいつもドリンクバーと冷製コーンスープを注文しては後悔する。
スープの量が意外と多いからだ。
日空はあきれた目線を翔に向けながら話しだした。
「翔も成人したなら、これでようやく免許を取れるね!」
「そっか、でも何の免許取ればいいんだろう……」
「そんなのこれ一択でしょ」
日空が財布から免許証を取り出した。
そこに書いてあったのは『推し活免許証』。
「これで一緒に"対プラ板タイプライター"のライブ行こう!」
「なにそれ」
「最近推してるメン地下」
「め、メン……何?」
「メンズ地下アイドル! いわゆるライブアイドルね。テレビとかよりも距離が近くて認知でフィーバーなの! とりあえずイケメンが汗水流して頑張ってる姿見に行こうよ!」
「はぁ……日空ってそういうの好きだったんだね」
「好きだったというか、免許取ってからアイドルに興味持ってライブ行くようになってメン地下ハマった感じ?」
「だから……」
ここ一年で日空の服装が随分と奇抜になったと思った、という言葉とスープを飲み込んだ翔。
右斜め下の免許証に目を向けると、約1年前の素朴な日空の証明写真が絶妙な真顔で翔を見上げていた。
キラキラの笑顔で話す目の前の日空は、別人のようだった。

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