書いた人

そのへんの会社員。法学部ではない文系学部卒

傍聴した裁判

2024年2月16日（金）10時～
名古屋地方裁判所一号法廷にて

りりちゃんは何をした人か

大きく分けて以下の3つの罪を犯している。

1. 詐欺

2. 詐欺幇助

3. 脱税

順番に解説する。

「おぢ」からお金を頂く（詐欺）

お金を頂く対象を「おぢ」と呼び（20代でも30代でも「おぢ」と呼ぶ）、おぢに自身の不幸な生い立ちを語って同情を誘った上で嘘をついてお金を頂いていた。
噓の内容は「知人に借りているお金が返せなくて、このままだと闇金で借りないといけない」「家賃が払えなくて退去させられてしまうかもしれない。もう体を売るしかない」等、様々なパターンがある。
一般的にこのような行為は「お金を引く」と言われているが、りりちゃんは「引く」という表現が好きではないらしく「お金を頂く」と表現している。
また、自らのことは「頂き女子」と称している。

なお、おぢから頂いたお金はほぼ全てをホストクラブにつぎ込んでいた。

頂き女子マニュアルを販売（詐欺幇助）

頂き女子になるための「1ヵ月で1000万円稼ぐ頂き女子りりちゃんの『みんなを稼がせるマニュアル』」を販売。
マニュアルは全10章で25,000字程度あり、（詐欺という点を除けば）情報商材としてはかなり良心的な部類である（大学のレポートでも20,000字以上書くものはなかなかない）。
内容はお金を頂くためのノウハウが細かく書かれており、

1. りりコミットをする（信頼関係構築）

2. 魔法をかける（お金を頂くための会話）

3. アフターケア

の3段階からなる。

「おぢ」にも種類があり、あまりお金を頂けないおぢのことを「くそおぢ」、頂けるおぢのことを「ギバーおぢ」と呼ぶ。
「ギバーおぢ」の特徴としては

• 仕事と家の往復で、人生に楽しみがない

• 趣味がない

• 寂しがりや

• 恋人ができたことがない

• 他責思考ではなく自責思考

等が挙げられている。

実際にりりちゃんはマニュアルを購入した多くの女の子から「成功した」というリプライやDMを多数もらっており、「頂き女子を作った人」として一部の人達から崇められている。

参考：逮捕された頂き女子「りりちゃん」のマニュアルには何が書かれていたのか

脱税

ここまで凄い額のお金を稼いでも、りりちゃんは確定申告の存在を知らず、一切納税を行っていなかった。
約4,000万円を脱税したとして名古屋国税局に所得税法違反容疑で名古屋地検に告発されている（2024年1月31日発表）。
本人は「（確定申告なんて）習っていない」「知らない」と発言している。

りりちゃんの生い立ち

神奈川県平塚市に生まれる。
DVの父、世間体を気にする母、姉、りりちゃん、犬の4人家族。
小さい頃から父親からDVを受けていたが、父親は何故か姉と母には手を出さず、犬とりりちゃんだけを執拗にDVの対象としていた。
一度本当に父親に殺されると思ったことがあり死を覚悟のうえで警察に通報したことがあったが、りりちゃんが大げさに嘘を吐いていると判断されてしまい「大人は助けてくれない」と強い無力感を覚えた。

このように家庭内で受けるストレスが凄まじく、重度のアトピーで入退院を繰り返す。
小6の頃から家出を繰り返し、ネットで知り合った男性の家に泊めてもらっていた。
中学生頃、その泊めてくれている人にお小遣いをもらうことがあり「こういう稼ぎ方もあるんだ」と学ぶ。
高校を卒業したのちトリマーの専門学校に入学、中退。
Twitterの言動からも、犬が好きと思われる。
昼職をしていた時期もあったが、高校の先輩に誘われてホストに貢ぐためにソープランドで働き出す。
ソープランドで働くために昼職は飛んだと発言（※通常、昼職に対して「飛ぶ」という言葉はあまり使わない）。
VTuberの懲役太郎さんはりりちゃんのことを「知能は高いが常識が無い、特殊な子」だと述べている。

参考：《“頂き女子りりちゃん”接見記》“記憶から抹消したい”本当の生い立ちと「おじさん嫌悪」

Twitterでの発言

↑自身のTwitterでもアトピーについて触れている。肌が荒れてしまうことをコンプレックスに思っていた様子がうかがえる。

↑保険証も持っていないようである。

↑頂き女子としての実力（？）は確かなもののようである。

↑最初はソープランドのお客さん相手に頂きを行っていたが次第にバレはじめ、マッチングアプリで頂きを行うようになる。

りりちゃん以外の頂き女子

家田美空（いえだみく）被告

「怒号ちゃん」という名前でTwitterで活動し、りりちゃんに対し「今月1000万円プレーヤーになれそう！」と連絡していた。
南山大学の学生という噂があるが真相は定かではない。
公認会計士と弁護士を目指している。
公判の際に裁判官から「被害者の男性への償いはどう考えるか」と尋ねられ、「詐欺をした男性に対し、なぜモテないかを教えて異性に嫌悪感を抱かれないようコンサルをする。彼女ができれば傷が癒えると思う」と発言して話題を呼んだ。
最終的に懲役3年、執行猶予5年の判決となった。

参考：家田美空の現在！高校と大学・生い立ちと親や家族・パパ活詐欺事件と判決まとめ

裁判の様子

抽選待機列

およそ80人の定員のところにおよそ120人が並んでいた。
並んだ順番に整理券を交付されるが抽選はコンピューターで行われるため、特に並んだ順番は当落に関係しないと思われる。
整理券の交付は指定時間に並んだ者に対して行われるため、傍聴したい裁判がある場合は必ず指定時間に間に合うように集合場所へ行く必要がある。
事前申し込みや登録などは一切不要。

法廷内

傍聴に来ている人はシニアの方が多かったが若い女性もそれなりにいた。
所謂地雷系ファッションの人はおらず、普通の会社員みたいな恰好の人ばかりいた。

法廷に刑務官2人と共に現れたりりちゃんはYouTube上で見せていた金髪とは異なり、黒髪で白いマスクを着けてオレンジ色のヘアゴムで髪を後ろで一つに結んでいた。
白っぽい服を着ており痩せていて、「どこにでもいる普通の25歳の女」といういで立ちであるように感じた。

開廷直後、検察側の冒頭陳述がとにかく長く、「知り合った男性2人に対して彼氏と呼んだり大好きと言ったりして好意を抱かせ、知人への借金返済に充てたり家賃を支払うための現金を1億1730万円を騙し取った」と述べられた。
これに対し「間違いはありませんか」と尋ねられて「ありません」と蚊の鳴くような小さい声で答えていた。
自身のYouTubeの見た目とはかなり異なるが、声は完全にYouTubeのものと同じで「りりちゃんだ」と感じた。
長い冒頭陳述の間は退屈だったのか、自身の髪の毛を触る仕草も見られた。

その後も何度か「間違いはありませんか」と尋ねられて「はい」「ありません」と答える場面があったが、終始一貫して声が小さいことが非常に印象的であった（勿論、裁判ではしゃいでいる方が良くないが…）。

退廷

裁判が終了し、退席する人もちらほら出る中、りりちゃんの近くには多くの傍聴人が集まっていたように思う（私もりりちゃんの顔見たさに近くまで移動した）。
付き添いの女性刑務官に手錠をかけられて腰縄を括りつけられる間、多くの傍聴人がりりちゃんのことを興味深そうに見ていたと思う。
りりちゃんはYouTubeの動画に出ていた時は金髪でハキハキと喋っていたが法廷では黒髪すっぴんでかなり印象が違って驚いた。
しかし、法廷では少ししか話さなかったがそれでも声はYouTube上で喋っているあの声のままで「りりちゃんだ」と強く思った。
同性（で異性愛者）の私から見てもりりちゃんの声は大変可愛らしく、以前結婚詐欺で死刑判決を受けた木嶋佳苗を想起させられた（木嶋佳苗も声がとても可愛く魅力的であると多くの男性が感じたそうである）。

考察

りりちゃんはぶーちゃんねるの動画にて「昼職はつまらなかった」「新しいことに手を出したすぎて（ホストに行った）」という発言をしている。
また、「一番良かったのはローソンのアルバイトで、人からありがとうと言われることが嬉しかった」との発言もある。
個人的に、こういうタイプは吹奏楽強豪校に入って伸びる子が多いように感じる。
（逆に、何に対しても面白さを感じられない人や他人からお礼を言われても喜べない人間は吹奏楽強豪校に入っても伸びない傾向が強い）

りりちゃんは頂き女子として確かな実績をあげ、マニュアルも多くの人に販売するなど知能が非常に高いと思う。
もしDVをせずに娘を抱きしめるような父親だったら、父親と母親が喧嘩せずにいつも楽しく会話をするような家庭だったら。
りりちゃんがその高知能と人当たりの良さを武器にして、吹奏楽強豪校で目を輝かせながら朗々と楽器を演奏する姿やその後社会で高い年収を稼ぎだすさまは、私には容易に想像ができる。

「親ガチャ」という言葉が流行して久しい。
いかに「自分の生まれ」に人生が左右されなくするのか。国、自治体は頑張ってほしい。

まとめ

教育は人間の要（かなめ）
マジでこれに尽きる。

関連

• りりちゃんのTwitterアカウント（@nekokusainjakas）

• りりちゃんのYouTubeアカウント（りりちやんはホームレスです）

次回の裁判

2024年3月15日（金）14時～
名古屋地方裁判所一号法廷にて
結審予定
※傍聴は抽選になる可能性が非常に高いため、必ず傍聴できるわけではないことに注意