ショート小説「試してみた」

青い空、白い雲、初夏の青々とした緑が生い茂る公園の、草原の上に丸まって横になっている私は携帯をポケットから出す。
LINEを開くと彼氏が1番上にいる。私と一緒に写ってピースしているアイコンを、ぼぅっと一瞬だけ見つめる。おっと、いけない。時間は有限。
彼氏とのトーク画面に行きメッセージを送る。

「死にそう」

すぐに返事は来た。

「どうした?!」

あぁ、愛おしいな。

「彼氏くんに会えなくて」
「なんだよ、構ってかよ」
「かまって」
「こういうのやめろよな、まじでビビった」
「ふふ。彼氏くんはわたしに会えなくても死にそうにならないでね」
「死にそうにも、死にもしねーよ!!」

手が震える。笑いを堪えようとして、失敗した。おかげで刺された背中が痛い。
見知らぬオバサンが悲鳴をあげて近寄ってきた。

「どうしたの!!!」

知らない人に刺された。その人は違うって言ってどっか行った。
トーク画面から目は離さずに答えた。だって、もしかしたら最後かもしれないじゃん。少しでも繋がっていたい。あぁ、でも、そう思ったって目が霞んできて画面が見えづらい。スタンプの色合いがいつも使ってるやつっぽいから、たぶん、バカって言ってくれてるのかな。

「救急車呼んでるから!大丈夫だからね!」

死なないでね。

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